成瀬は俺を嫌っている…はずだ…
キャラの名前はなるべく、ルビなしでも読めるようにしたい派の私です。天使は読めねえって?申し訳ねぇ…
木曜、学校が創立記念日の日、現在時刻は七時十五分、俺は駅に向かっていた。成瀬との待ち合わせのためだ。
昨日、仁美と勝樹の初デートを成功させるために、俺は二人のデートを見守る事になったのだが、なぜか成瀬も手伝うことになった。
俺と成瀬の集合時間は七時半、他の二人と鉢合わせしないように、二人より三十分ほど早く設定した。
なんで十五分も前に向かってるかって?あいつ、自分より遅いと怒りそうだし…
集合場所に着く。流石にまだ来てな
「遅い」
なぜか後ろから不機嫌そうな声が聞こえる。
「あたしを十五分も待たせるとかどうゆうつもり?」
「…一応聞くが、集合時刻は七時半だったよな?」
「そうだけど?」
「今の時刻は?」
「七時十七分だけど?」
「……」
落ち着け、今の会話におかしなところはなかったと言い聞かせろ。
「えっと…お前は集合時刻の三十分前に来てたって事でいいのか?」
「は?なに馬鹿なこと言ってんの?それじゃああたしが今日を楽しみにしてたみたいじゃん」
「……」
うん。おかしなところはなかったな。そうだ。そうに違いない。
しかし不思議な物だ。新学期開始前まで一切接点がなかったのに、新学期早々、二人でこうやって待ち合わせて出かけることになるとは。
俺が成瀬を見つつ考え事をしていると、
「なにジロジロ見てんの、キモ」
言われてしまった。最近言われてなかったから油断してた。
「いやまあ、女子の私服を見る機会があまりないから、ちょっと見入っちまった」
誤魔化す様に言うと成瀬は
「そ」
と、一文字で返された。興味なさ過ぎかよ…
「それで、どう?」
あれ、話終わってなかったのか。
「どうって…」
こういう時どういう返事をしたらいいか分からんな。
改めて成瀬の私服を観察する。言い回しが変態だな。
白を基調としたワンピースに、灰色の長袖のカーディガンか。彼女の金色の髪にとても合っている。
「まあ、似合ってんじゃないか」
「そ」
成瀬はそう言って顔を背けた。
「それに比べて、あんたの服は地味ね」
「ほっとけ、尾行するんだから地味な方がいいんだよ」
ちなみに俺の服装は、黒のジーンズに白いTシャツ、灰色の七分袖カーディガンと、微妙に成瀬と被った服装だ。
「まあ別に、ダサくはないけどね」
聞こえないように小声で言ってるんだと思いますけど、微妙に聞こえてますよ。まあ聞こえなかったふりしとくか。
俺達は、ホームに向かい、ちょうどやってきた電車に乗る。成瀬は角に座り、俺は成瀬から一つ開けて座る。
「ねぇ、なんで一つ開けてんの?ムカつくんだけど」
「いや隣に座ると怒ると思いましてね」
あたしに近寄らないでくれない?地味が移るんだけど。とか言われると思った。地味が移るってなんだよ。新種の菌かよ。
「あんたとあたしの間に誰か座ったら嫌でしょ。あんたの方がマシってだけ」
他の奴らなら平気で立ってろとか、別の号車に移ってくれとか、言ってくるところだが、やはり成瀬は優しい。
「分かった」
俺は席を移動する。やべぇ!隣に美少女がいる!俺の心音聞こえてないよね?
幸い、成瀬は横の冊子に寄っかかっているため、微妙に距離がある。マジで良かった。目的地まで四十分間、ずっと密着状態だと多分俺死んでたわ。
ちらっと成瀬の方を見ると、退屈そうに景色を眺めていた。スマホを弄らないとは、最近の若者としては珍しい(若者並感)
「ねぇ、ちょっと聞いてもいい?」
突然成瀬が口を開く。
「ん?なんだ?」
「あんたってさ、なんで嫌われてるか、わかる?」
「なにそれ新手のいじめですか?」
自分の状況を自白させるプレイとか、マジで精神にくる。
「あ、ごめん、普通に気になっただけ」
びびった〜、危うく自殺するところだったわ。
「あんたは地味だけど、そこまで悪い見た目はしてないし、他にもあんたよりいじめの対象になりそうなのいるからさ」
なるほどね。特にいじめに興味がない上流階級の方は、下々のいじめに興味があるみたいだ。
「一言で言うと、嫉妬だろうな」
「嫉妬?」
「俺みたいに地味な奴が、学年一二を争うイケメン二人とつるんでるからだろ。それに仁美もいる。男女両方から十分過ぎるくらい恨みを買われる要因が揃ってる。最初の原因こそ違うが、そういうことなんだろうな」
人間は、少しでも気に入らない奴がいると、徹底的に潰すことだってある。その対象がたまたま俺だったのだろう。
「あんたは、その状況を変えたいとは思わないの?」
「思わない事はない。でも別に俺自身あまり気にしてないからな。他人からどう思われてようが、正直どうでもいい」
「ふーん、そうなんだ」
どうやら納得してくれたみたいだ。
ん?待てよ?俺席替えの時成瀬に拒絶されてなかったか?
「お前、席替えの時、俺に最悪とか言ってたよな。それ割と傷ついたんだが」
つーかお前もいじめに参加してる側なんじゃないか?
「あーあれ?あんた、あんまり喋らなそうだから、つまんない席って思っただけ」
それだけで最悪なのか…女子の基準が分からん。
「それとさ、中学の時はどうしてたの?さっきの理由が本当なら、中学の時も皆に嫌われてたんじゃないの?」
中学の時か…思い出したくもねーな。まあ少しくらいなら話してもいいか。
「中学の時は普通に友達いたぞ。いじめとか全然なかった」
「…え?」
「普通に部活やってたしな。女子とも話すことあったし」
「…嘘でしょ…!?」
今の俺からは想像もつかないよな。今の俺なんて休日は家に引き篭もったり、出たとしてもゲーセン行くくらいだもんな。
「なんで辞めたの?それに昔の友達は?」
捲し立てる様に質問をする成瀬。
「まあ…色々あったんだよ…」
俺はそう答えるしか出来なかった。
「そ…」
成瀬はそれ以上聞いてこなかった。気を遣ってくれたのかもしれない。
本当に思い出したくもない、クソみたいな、忌まわしい過去だ…
今回から少しずつ、晃の過去について登場します。いつか過去編もやりますので、真相についてはその時に。
このあとすぐに、もう一話投稿します。謝辞などはそちらで書きます。




