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プロローグ

初投稿です。稚拙な文章、貧相な語彙、幼稚なストーリーなど、至らぬ点が多々あると思いますが、お楽しみいただけたら幸いです。

九月一日、俺はスマホから流れるけたたましい着信音に起こされた。

「はいもしもーし、白峰(しらみね)ですけど。朝っぱらからどちらさんですか」

『朝っぱらって…もう七時だよ!学校遅刻するよ!それに画面に名前表示されてるでしょ!』

電話の相手は幼馴染みの新津 仁美(にいづ ひとみ)からだった。

「俺は準備には十五分あれば十分なんだよ。そんなことより何の用だ」

『そうそう、新学期だし一緒に学校行こうと思ってね。』

「お前が朝練ない日は毎回一緒に行ってた気がするが?」

『細かいことは気にしない!』

「全くもって細かくねぇんだよなぁ…」

『それじゃあ今から十分後に迎えにいくから、早く準備してね!それじゃ!』

「おいおまっ!早す…」ブツっ

こっちの話聞かずに速攻切りやがった…

眠い目をこすり、まだ完全に覚醒しきってない脳を無理矢理働かせ、学校の支度をする。

つーか朝飯食う時間すら与えないとか、せっかちすぎかよ。

まあ、途中コンビニ寄ればいいか。


ピンポーン


ちょうど一通り準備が終わったところで玄関のチャイムが鳴った。

俺は玄関に行きドアを開けるとそこには、

「おっはよっ!(あきら)!」

ポニーテールが特徴の活発そうな美女がいた。…といっても仁美だが。

「それはさっきの電話での第一声で言うべき言葉だろ」

「細かいことは気にしなーい!それよりいつもよりもツッコミのテンションが低いね。どしたの?」

「眠いんだよ察しろ」

「もっと早起きしなきゃダメだよ。そんなんじゃ元気でないよ!」

「俺が元気が出るのは午後からだから」

「ただのダメ人間じゃん!」

「いっそニートになって一日中寝てたい」

「そんなこと言わないで!早く学校行くよ!」

「うわっ!ちょっと!引っ張るなって!」

そういって俺のワイシャツの袖を引っ張る仁美。

ちなみにどうでもいいが、俺は夏だろうと年中長袖を着ている。



仁美に引っ張られること約五分、最寄り駅に着いた。ここから俺らが通う光成(こうせい)高校まで二駅だ。

「仁美、ちょっとコンビニよっていいか?朝飯まだなんだ」

「えー、朝ご飯まだなのー?ちゃんと食べなきゃダメだよ!」

誰のせいだと思ってるんだ…

「いやまあサンドイッチでも買ってこようかと」

「そんなものより、もっといいものがあるよ!」

「そんなものとはなんだ!セブン様の卵サンドをバカにするな!」

「うわっ!びっくりした。急に怒り出すから驚いたじゃん!」

「お前が卵サンドをバカにしたのが悪い」

「うわーめんどくさー…そんなものっていったのは、いいものがあるよってこと!」

ほう、卵サンドよりいいものがあるとは、楽しみだ。

「いいものってのは…じゃーん!これのこと!」

差し出されたのは二つの海苔の巻かれたおにぎりだった。

「へー、ところで卵サンドよりいいものってどこだ?」

「これだよ!このおにぎりだよ!あと卵サンドよりいいものなんて言ってないよ!」

なんだ、卵サンドよりいいものがあるわけじゃないのか。

「何そのあからさまながっかり顔…私泣くよ!泣いちゃうよ!」

「自分で泣くと言う奴は大抵泣かない」

「もういいもん!私いじけちゃうし!晃なんて知らない!」

「あっそ、じゃあ卵サンド買ってきていいか?」

「食べてすらくれないの!?」

朝から元気な奴だ。

「すまんすまん。あんまり反応が面白いんでからかっちまっただけだ。ありがたく頂戴するよ」

「は、初めからそういえばいいのよ!はいっ!あげる!」

そう言って、仁美は俺におにぎりを手渡してくる。早速俺はそれを食べ始める。

「どう?美味しい?」

「…しょっぺぇ…」

「正直すぎか!」

と言うより、塩のかかり具合にむらがあって、なんとも絶妙に美味しくない。

「お前、作る前にちゃんと『おにぎり 美味しく作る』で、調べたか?」

「し、調べてない…で、でも、そこは嘘でも美味しいとか言ってくれてもいいんじゃない?」

「嘘がつけない性格なんだよ」

「すでに嘘じゃん!」

そんな感じで雑談してると電車が来た。

俺たちはそれに乗るとふと、仁美が変なことを言い出した。

「こんな感じて二人で話せるのも、あとどれくらいかな」

「らしくないな。お前がそんなネガティブ発言なんて」

「うん、なんかね。こんな感じで話せるのも、もしかしたらもう何回もないのかな、なんて思っちゃってね」

「お前がそんなことを考えるなんて、午後から槍が降るんじゃねーか?」

「ひどい!私だって考える時は考えるよ!」

「まあ考えても仕方ないだろ。人生長いんだから。出会いあれば別れもある。結婚あれば不倫もある」

「最後で全部台無しだよ!」

そのタイミングで電車は次の駅に着いた。

「うぉーっす、元気か〜、晃、新津」

乗ってきたのは俺の親友の黒井 勝樹(くろい かつき)だ。

「ああ、まあ、元気だ」

「ねえねえ、聞いてよ黒井くん。晃が酷いんだよ!私が少し真面目な話をしただけで槍が降るなんて言ってくるんだよ!」

「そりゃ大変だ。頑丈なヘルメット用意しなきゃな」

「降らないよ!やり降らないよ!それにヘルメットだけじゃ守りきれないよ!」

二人は男バスと女バスで仲がいい。俺も一応中学時代はバスケをやってて勝樹とはその頃からの仲だ。だからよくこの三人でつるんだりすることがある。二人とも大事な俺の友達だ。

「なあ晃、今日の放課後、時間あるか?」

ふと、勝樹が真剣な顔で言ってきた。

「時間あるも何も、初めから一緒に飯食う約束だったろ」

今日は新学期初日ということで、授業は午前中で終わり。なので俺たちは昼を一緒にするという約束だったはずだ。

「ちょっと相談したいことがあってだな」

「相談?お前がか?珍しいな」

「ああ、まあ、なんというか、親友のお前にというか、お前だからこそというか」

「なんだよその変な言い回しは」

「しょうがねえだろ!は、恥ずかしいし…」

「…気持ち悪…」

「お前今ガチトーンでいったな!?表出ろ!ぶっとばす」

鳥肌がヤバい。いろんな意味で。

「なになに〜?相談?私も交ぜて!」

こいつ交ぜるとめんどくさそうだな。

「これは男と男の話じゃ。女子供は交じるべきじゃないぞよ」

「え?誰?こんな晃知らない」

諭そうと思って変な口調で話したが、よくわからない方向に行ってしまった。

「まあ、新津が聞いてもつまんないと思うからさ。いろいろ終わったら話すよ」

「むー。つまんなーい」

可愛くほっぺを膨らますな。ここは電車内だぞ。

そうこうしているうちに学校の最寄り駅に着いた。

駅の周りではうちの生徒が多く、ちらほらと知り合いも見かけることがある。

『あ、見てよ明!バスケ部の黒井くんと新津さんじゃない?』

『ほんとだ!お似合いだよね〜』

『なんで二人の間にあんな地味なのがいるのかしら。』

『きっと友達がいないから無理言って二人に付き合ってもらってるのよ。ほんと、うざいわよね〜』

余計なお世話だこんちくしょう。

こう言う感じで俺は学校ではあまり好感を持たれていない。かろうじて二人のおかげでうまくやってはいるが。

おっかしいな〜。中学時代は告白されたことすらあるくらいには人気者だったのにな〜。

今?今は帰宅部で、漫画やラノベ、アニメやゲームを愛するヲタクですけど何か?

おかげで高校に入ってからというもの、五ヶ月経ったのにろくに友達は出来ず、まともに話すのは三人だけという、まあなんとも悲しい構図が出来上がってしまった。



「じゃあ俺、教室こっちだから。晃、放課後よろしくな!」

下駄箱で靴を履き替えて勝樹が言った。

「おう、お前の恥ずかしい相談、楽しみにしてるぜ」

「じゃあね黒井くん」

二人で勝樹を見送り、俺たちも教室へ向かう。

「そういえば今日席替えだったよね!新しい席楽しみ!」

新学期初日は席替えの日、つまり俺にとっての地獄である。

「俺としてはあまり席替えなんてやって欲しくないんだよなぁ」

「新しい席覚えられないからでしょ」

「んなことねーよ。二ヶ月あればバッチリ覚えられる」

「それもう次の席替え始まっちゃうよ!」

まあそれはほんの冗談で、二日あれば覚えられるんだが。

「それよりもっと憂鬱なことがあってだな…」

「あ、分かった!私と席離れちゃうからでしょ!」

地味に正解に近いところを言ってくるから困る。現在、俺と仁美の席は隣同士だ。

「新しい席で周りと馴染める自信がねーんだよ…」

「だいじょーぶ!みんな優しくていい人だよ!」

そりゃおめーにだけだ。みんなお前と仲良くなりたいと必死なんだよ。だから俺が目の敵にされてんだよ。

「なんか腹痛くなってきた。もう休もうかな」

「席替えでそこまで!?もう拒絶反応でちゃってるじゃん!」

「つーわけで、俺帰るから代わりにクジ引いといてくれ」

「新学期一日目からサボっちゃダメ!」

そういって俺の袖を引っ張る仁美。ああ…周りからの視線が痛い…



「おっはよー!」

そう言って、仁美は勢いよく教室の扉を開けた。否応無しに視線が此方に集中する。

続けて俺も入ると、男子から『なんでお前がそこにいるんだよ…』と言わんばかりの視線が向けられる。いやほんと、俺悪くないのに土下座したくなる。

仁美は男女問わず人気があり、クラスでも常に中心にいるような立ち位置だ。

え?俺?俺はというと

「よお晃。朝から人気者だなw」

「笑ってんじゃねーよ。俺だって好きでやってるんじゃない」

そう言って声をかけてきたのは前の席にいる灰田 健。このクラスで唯一の俺の友人だ。俺より十センチほど身長が高く、めちゃくちゃイケメンである。趣味嗜好がかなり似ていて、気兼ねなく話せる数少ない相手だ。

というより教室ではこいつと仁美としか話さないんだが…

「いやいや、二人のお熱い様子を見たらねぇ」

「俺は巻き込まれてるだけだ。なんだったら、明日から俺と代わるか?俺は大歓迎だぜ」

「遠慮しとく。俺は悪目立ちはしたくないからな」

「俺だってそうだよ」

静かに地味に生きて行きたいだけなのに、なぜ俺はこうも目立ってしまうのだろう。中学時代も楽しんでバスケやってただけなのに…思い出すのはやめよう。気分が悪くなってきた。


「お前ら〜、席につけ〜」

気の抜けた声と共に担任の福田が入ってきた。

「今日は休みはいないな。欠席者なしで新学期初日を迎えられたことを〜、先生は〜、大変嬉しく思う」

『そんなキャラじゃないだろ〜w』

『いつも通りの方がいい〜w』

などと、生徒から野次が飛ぶ

「新学期初日だからそれなりにちゃんとやらないと怒られるんだよ…」

『ちゃんとやってたか〜?』

と、誰かが言うと、教室にどっと笑いが起こった。

「まあ、つーわけで、特に言うことはないし朝のHRは終わりだ。始業式まで各自適当に過ごすように」

相変わらず適当すぎないか?まあ楽だからいいんだが。

「始業式終わったら席替えだな。」

前から健が話しかけてくる。

「とりま授業寝やすそうな席だったらどこでもいい」

「相変わらずだなおまえは」

「お前も似たようなもんだろ」

「それ」

ダメ人間だな〜、俺たち

「それよりお前の場合、新津さんの席の方が気になるだろ?」

「仁美の席?別に。そんなに興味ない」

「またまた〜、照れちゃって〜」

興味が全くないかと聞かれれば嘘になるが、あまりこだわりがないの事実だ。

「むしろ隣の席が女子の時、どういう反応されるかが一番気になる」

「そんなに卑屈になるなって。俺からすればお前それなりにかっこいいと思うぞ」

「サッカー部でレギュラー勝ち取って、モッテモテのお前に言われてもねぇ…」

うちの高校のサッカー部は強豪で、今年の夏は県ベスト4まで行ったらしい。

「いやお前だってバスケでけ…」

「だからそのことは内緒してくれって言っただろ!」

「おいおい怒るなって。別に本当に言うつもりはなかったさ」

健はなぜか話したこともないのに中学時代の俺を知っている。そのことで度々からかわれるので正直うんざりしている。

「まあお互いいい席を引けるといいな。始業式行こうぜ」

「ああ、そうだな」

俺はそう返事をし、二人で体育館に向かった。


退屈な始業式が終わり、二時限目のLHR。席替え、つまり地獄の時間である。

「席替え楽しみだな〜!仲良い子が近くだといいな〜!」

お前の場合仲良い子しかいないだろ。

「まあお前ならどの席でも大丈夫じゃないか?俺はどの席でも死ぬと思うがな」

「もう、マイナス思考禁止!きっと晃にも仲良い子できるよ!」

「そもそもお前の場合寝るだけだからどの席でも大丈夫だと思うけどな」

「確かにそうかもな。そう考えると気が楽になったわ。少し寝る。」

「寝ちゃダメだよ!席替え始まっちゃうよ!」

「ははは!ほんと晃おもしれ〜」

そうこうしているうちに、福田が前に出て話し始めた。

「お前ら、えー、クジと席の番号は用意しておいた。あとは適当にやっといてくれ。」

適当すぎる…せめて進行くらいはやるもんだと思ってた…

「じゃあ引いてくるわ」

「おう、頑張れ」

早速健がクジを引きに行った。こういうところで男らしさを見せるところがモテるコツなんだろうなぁ。まあ俺がやれば絶対に空気を悪くするからやらないけど。イケメン運動部の特権なんだろうな。

「晃はいつも最後の方に引いてるよね」

「残り物には福がある理論というものがあってだな」

「それでいい席ってあったっけ?」

「むしろ悪い席しかない」

一番後ろとか引いた事ない。

ほんと、あのことわざ誰が言い出したんだよ。厄しかねーじゃねーか。

「じゃあ私引いてくるね」

「おう、いてらー」

仁美がクジを引きにいく。それと同時に健が帰ってきた。

「どうだった?」

「やったぜ。窓際一番後ろだ」

どうやらイケメンはクジにも好かれるらしい。

「いいな〜、授業寝放題だし」

「羨むとこそこかよw少しは真面目に授業うけたらどうだ」

「お前が真面目という言葉を知ってる事にびっくりだよ…」

「どういう意味だコラ!?」

「健ほど真面目と言う言葉に縁遠い存在はいないと思ってた」

「よーし、次の体育の時間、お前を徹底的にボコしてやる!」

「休むから無理だろうな」

すると、仁美がクジを引いて帰ってきた。

「仁美、どうだった?」

「廊下側の後ろから二番目、もうちょっと真ん中の方が良かったな〜」

自分から真ん中の方行こうとするとは…ドMか?

「まあそんなに悪くない席だからいいだろ。俺だったら普通に大喜びだ」

「うーん、でも友達と一緒に話したいし」

友達がほとんどいない俺の目の前でその発言はNG。

「晃、そろそろ皆引き終わる頃じゃないか?」

確かに、どんどん前にいる人が減っていってるように見える。

「よし、じゃあ行ってくる」

「頑張れー!」「面白い展開を期待してるぜ!」

二人から声援(?)を受け、クジを引きに向かう。

箱を覗くとクジはあと二枚残っていた。俺と同じ考えの人がいるのかしら、と、周りを見渡すと、一人の女子が此方を見ているのが目に入った。

「ねえ、早く引いてくれないかしら?」

そう言って俺を急かしてくるのは、委員長こと鈴井 玲華(すずい れいか)だ。腰近くまで伸びた黒髪が特徴の大和撫子を体現したような見た目をしている。そしてなぜか俺だけにかなりの暴言を吐く。そのため俺が一番苦手とする女子でもある。そもそも苦手じゃない女子の方が少ないのだが…

「急かすなら、お前から先に引いたらいいんじゃないか?」

「あなたがそこにいるのだから、あなたが先に引けばいいじゃない。相変わらず低脳ね」

「俺は最後がいいんだよ。残り物には福があるってね」

「くだらないわね。クジなんて、いつ引いても確率は同じよ。そんなこともわからない阿呆なのかしら?」

「じゃあお前が先に引いてもいいだろ…」

明らかに先に引かせようとしてくる。というよりさっきから目で先に引けと訴えてきている。

これ以上はめんどうだし先に引くか。

…………

12番か、さて、どこの席かな〜、と。お、窓から二列目、後ろからも二列目だ。最後に引かなかったおかげかなかなかの席だ。残り物には福があると言う言葉は嘘と思った方がいいかもな。

「どうだ?一番前か?」

自分の席に戻ると、健がからかうように話しかけてきた。

「いや、お前の右斜め前の席だ」

「マジかよ。明日氷柱(つらら)でも降るんじゃね?」

「なら今日中に見てないアニメ消化しとかんとな」

「はい、皆それぞれ席を確認しただろうから、素早く席を移動するように」

そう福田が声をかけると、席の移動が始まった。

席が近いので、俺と健は一緒に席を移動する。

「隣の席、誰がだろうな」

健がそう声をかけてくる。

「俺としては、女子じゃない方がいいな」

「なんでだ?可愛い子が隣だと、最高だろ?毎日がエブリディだろ?」

「俺の場合引かれるか、泣かれるか、キレられるかのどれかなんだよ…あと初めから毎日はエブリディだ」

「ははは!言えてるw」

言えてるってなんだよ。ちょっと哀しくなっちゃったゾ☆

席の移動を終え、少し待っていると、

「え?隣あんた?え?マジ最悪なんだけど」

と言って成瀬 恵(なるせ めぐみ)が隣に座ってきた。

肩を少し越すくらいのウェーブのかかった金髪セミロングが特徴で、見た目だけならクラスでもトップクラス。しかし、男子には当たりが強く、だいぶ刺々しい口調が目立つ。

こいつ怖いから嫌いなんだよ…とりあえず謝っとこ。

「いやなんというか、俺なんかが隣で不快な思いをさせてしまい、すいませんでした」

「は?別に謝って欲しいなんて言ってないんだけど。キモ」

そのさりげにキモって言われんの、なかなかに傷つくんだよね。

ちなみに後ろでは、

『あ!灰田くんが隣なんだ!』

『ああ!暫くよろしくな!』

『うん!!よろしく!!!』

という感じでラブコメが始まりそうだった。

マジで世界中のイケメンは爆発すればいいと思う。

そして隣では、

『恵って席ここだったんだ。いいな〜。』

「でも隣が最悪。せめて灰田くんとかだったら良かったのに」

『確かに、こんな根暗と一緒じゃ、鬱になりそう』

『恵!元気だして!私たちがついてるよ!』

なぜ席が隣になっただけでここまで言われなきゃならんのだろう。

というか成瀬さんあんた…女子とではそんなに明るく話せるんですね。

ふと、教室を見回してみる。仁美の周りは女子みたいだな。

というか委員長…席一番前かよ…なんかめっちゃ俺のこと睨んでくるし。あ、目が合っ…逸らされた。大変ご立腹のご様子だ。俺、悪くないよね?まあ心の中では謝っておこう。


「…えー、じゃあ二学期も頑張って行きましょう。解散」

席替えからは特に何もなく、放課となった。

「晃。飯食い行こうぜ。うまいラーメン屋見つけたんだ」

健のやつ、ほんとにラーメンが好きだな。まあ俺も好きなんだが。ありがたいお誘いだが、今日は他に先約がいる。

「すまん。今日は勝樹と先に約束しててな」

「あー…そうか、じゃあまた今度な!」

「ほんとすまん」

「いいっていいって!俺とお前の仲だろ!」

そう言って健は他のやつを誘いに行った。

さりげないセリフがいちいちかっこいいからムカつく。

『灰田くんからのお誘いを断るとか何様?』

『ひっつき虫の分際でなに調子乗っちゃってんの?』

『死ねばいいのに』

最後の言葉はさすがに心を抉るものがあるな…

「ね、ねえ、晃。ちょっといい?」

不意に仁美が話しかけてきた。

「大丈夫だか、何の用だ?」

「えーっと、その…ここじゃちょっと…」

ほう、内緒の話とな。

しょうがない場所を移すか。

「じゃあ五階の多目的室へ行かないか?あそこなら誰も来ないだろ」

「う、うん!分かった!先に行ってるね!」

そう言って仁美は素早く教室を出て行った。さて、もう少し時間おいたら俺も行くか。


五分後、俺は仁美の待つ多目的室に向かった。

「良かった、来てくれた」

まあ、あんな風に言われたら断るなんて無理だわな。

「それで、話ってなんだ?」

「そ、それなんだけどね…」

ん?なんか下向いて、どうしたんだ?

「えっと、実は私ね…」

うつむいているので表情は伺えないが、若干頬が紅潮しているように見える。

「わ、私には、好きな人がいるの!」

うん、まあここまでは予想通りだ。それを何故俺に言ったかだが、まさか…!?

「私がその人のことを好きって気付いたのは最近でね。初めはこの気持ちがよくわからなかったの」

遅いな〜。もう、十年近くも一緒にいるのにな〜。

「その人のことを考えるだけで胸がモヤモヤするし、気が付いたらその人のことを目で追いかけてたの」

そっか、最近度々感じてた視線はお前のものだったのか。てっきり、殺意とか殺気とかが込められた視線だと思ってたわ。

「それでね、最近友達の話を聞いて、それでやっとこの気持ちに気付けたの!」

なんだあいつら、俺に悪口言うだけだと思ってたわ。いいとこあるじゃん。

「それでね晃。お話ってのはここからなんだけど」

やっと本題か。まあ、もう大体わかってるけどね。仁美は可愛いし、性格もいいし、最高の女の子だと思う。そんな子に思いを寄せられてるなんて幸せだな〜、そいつ。万が一、告白なんてされたら大抵の男はコロッといっちゃうね。

「実は私…」

ようやく俺にも春が訪れるのか。良かった…生きてて良かった…生きててもいいことなんてろくにないと思ってたけどこれで


「実は私!黒井くんのことが好きなの!!」


…うん、俺なんかに春がくるなんてありえないってわかってたよ…好きな人の前で赤裸々に自分のエピソード語るとかありえないってわかってたよ…でもやっぱり現実を突きつけられるとこう、くるものがあるよね…

「そ、それで、晃には、黒井くんと付き合えるように手伝って欲しいんだけど…」

やっぱりね。そんな事だろうとと思ったよ。

「でも俺じゃなくても、他にもっとそういう事に詳しいやついるんじゃないか?お前の友達とかにも」

「いるにはいるんだけど…その…恥ずかしいし…」

なるほど、友達間でも色々あるのだろう。下手に突っ込まない方がいいな。

「こんな事相談できるのは晃しかいないの!…手伝ってくれる…?」

上目遣いでそんな風に言われたら大抵の男は断れないだろう。だが…

「すまん。少し考えさせてくれ」

俺にはすぐには答えられない事情がある。

「…そっか…そうだよね。ごめんね突然変な事言っちゃって。迷惑だったよね。」

「いや、迷惑じゃない。ちょっと驚いただけだ」

「良かった!嫌われちゃったかと思った」

俺はそんな簡単に人を嫌うほどの短気と思われているのだろうか。

「じゃあ俺、勝樹に用があるから」

「あ、そういえばそうだったね。ごめんね、引き止めちゃって」

「いいって、そんな謝らんでも。俺とお前の仲だろ」

さりげなく健をパクってみたけど、俺がやると気持ち悪いな。

成瀬とか委員長とかにやったら首をへし折られる事間違いないな。

というか、さっきから仁美から反応が帰ってこないんだが。

「…仁美?大丈夫か?」

「ふぇっ!?」

声をかけるとビクッとして慌て始めた。

「ち、違うの!こ、これは、教室が暑くてぼーっとしてただけで、べ、別にさっきのセリフがかっこいいとか思ってないから!」

んな勘違いしねーよ。そんなんで惚れるならとっくに俺に惚れてんだろ。何年一緒にいると思ってんだよ。

「じゃあ俺、勝樹のとこ行くから。じゃあな」

「う、うん!じゃあね!また明日!」

俺は仁美を残し多目的室を出る。

さて、もう一つの相談とやらを聞きに行くとしますか。


校門前には鞄を持って退屈そうにスマホをいじっている勝樹がいた。

「遅え」

「すまん、ちょっと星を見てた」

軽いジョークを交えて謝罪する

そういや今日謝ってばかりな気がする。

「今昼だろ!星なんか見えねーよ!」

「ちょっと地球の裏側行ってた」

「ルパンか!」

今日の勝樹はツッコミがキレキレだな。

「で?どこ行く?喫茶店か?カフェか?カフェテリアか?」

「全部同じじゃねーか…普通にファミレス行こうぜ」

「男二人でファミレスかぁ…」

「じゃあ俺が女になるか?」

「TSものマジで嫌い」

マジでTSものの良さが分からん。見た目が女なら中身は男でもいいのか?ちなみに女がTSして女とヤる系のやつは、俺の中でキマシタワーが建つのでよし。

「まあ、ファミレス行くのはいいが少し遠めのとこにしようか。近くだと知り合いがいるかもしれんしな」

「晃…お前…気が使えたんだな…」

「よく言われる」

俺の評価はどこまで低いのだろう。


俺たちは、学校から二駅ほど離れた場所にあるファミレスにいる。ここなら知り合いに会う事はないだろうとのことだ。

今はお互い料理を食べ終わったところだ。

「それで、相談とやらを聞こうか」

大体落ち着いたところで俺は本題に入った。

「ああ、そうだったな」

勝樹が話し始める。

「えっと、実は俺な…」

いや早く言えって。めんどくさいな。

「実は俺、好きな人がいるんだ!」

大体そうだろうなとは思ったよ。それを何故俺に言ったかだが、まさか…!?

「俺がそいつのことを好きって気付いたのは最近でな。初めはこの気持ちがよくわからなかったんだ」

なるほど、だからさっき女になるとか言ったのか。確かに最近だ。

「そいつのことを考えるだけで胸がモヤモヤするし、気が付いたらその人のことを目で追いかけてたんだ」

そっか、最近度々感じてた視線はお前のものもあったのか。てっきり、殺意とか殺気とかが込められた視線だけだと思ってたわ。

「でな、最近他の部員の話を聞いて、それでやっとこの気持ちに気付けたんだ!」

なんだあいつら、俺に悪口言うだけだと思ってたわ。もっとやばい爆弾落としてんじゃん。

「でな晃。相談ってのはここからなんだが」

ようやく本題か。もう大体わかってるけどね。勝樹はカッコいいし、スポーツ万能でそれで頼りがいのある最高の漢だ。そんなやつに思いを寄せられてるなんて幸せだな〜、その子。万が一、告白なんてされたら大抵の女はコロッといっちゃうね。

「実は俺…」

ようやく俺にもさらなる地獄が訪れるのか。死にたい…マジで死にたい…なんでこうなった…そもそも俺はノンケで男なんて興味な


「実は俺!新津の事が好きなんだ!!」


うん、まあさすがに親友にそっちのケがあるとは思わなかったよ。でも万が一があるじゃん?

で、なんで俺にそれを話したかなんだが。まあ予想はつくが。

「そ、それで、晃には新津と付き合えるように手伝って欲しいんだが…」

だろうな。つーかお前ら、まったく同じタイミングとか仲いいな。ドッキリじゃねーかと疑っちまうぜ。

「でもなんで俺なんだ?部活とかクラスとかにもっと頼れるやついるだろ」

「新津と一番距離が近い男子といえばお前しかいないだろ?だからこそ頼みたいんだが」

なるほど、それなら納得だ。

もちろん俺の返事は決まっている。

「よし。分かった。俺でよければ全力で手伝う」

「本当か?手伝ってくれるのか!?」

「親友の心からの頼みを断るわけないだろ。泥舟に乗ったつもりで俺に任せろ!」

「ありがとう!!ただ泥舟だと沈んじまうが」

「気にするな」

「気にするわ!」

それから暫く、二人で仁美攻略の作戦を話し合った。


夜八時、俺はベッドの上で考えていた。

まさか二人が両思いだとは。しかもまったくの同時。これはいわゆる運命と言うやつかもしれないな。

面倒事に首を突っ込むのはあまり好きじゃないが、今回は立場が立場だし、仕方ない。

俺は携帯をとり、ある人物に電話をする。


「もしもし、仁美か?昼間の相談の件なんだが…」


二人の為に、一肌脱ぐとしますか!

最後までお読みいただきありがとうございます。誤字脱字などがありましたら、お手数ですが、ご報告いただけたら幸いです。

今回、あまり深く考えずダラダラと書いていたら、いつの間にか一万文字超えてしまうというバカをやらかし、大変反省しております。次回からはそうならないようになるべく気をつけます。(ならないとは言っていない)

しばらくは、今回名前が出た子達がメインとなると思います。まあ単純に他キャラ考えてないだけなんですけどねw

感想などがございましたら、是非お願いします!

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