セルヴィ、ステータス開くってよ
無事着陸したセルヴィは、森の中を進んでいた。
天霊光臨のタイムリミットである10分間が過ぎ人間の姿に戻っていた。
とりあえず何処かの町を目指す事に決めたが、上空にいた時に近くに町が見えたのでそこに向かう事にした。
しかしその手を阻む存在が森である。なんだただの森かと思うかもしれないが、このオーチャードの世界では意味合いが違う。
人類の敵である魔獣が存在することによって、この世界に安全な場所はない。
そこらかしこに魔獣が存在するため常に移動は命がけである。
特に森といのは魔獣が多く住む場所として認知されており、迂闊に近ずく者はいない。
しかし運が悪いことに行く手には森しかない。遠回りしたり、別の町を目指すという手段が無いわけでもなかったが、時間がどれだけかかるかわからなかったので結局森の中を進むことに決めたのであった。
そして最初の場面に戻るのである。
森に入って進んでいるが一向に魔獣と見つかる気配がない。そこら中に蔓延っているのにも関わらず、見つからないのである。
(ほんと隠蔽さまさまだよな)
隠蔽は自身の姿を変える事が出来るスキルである。
その効果を使い自身の姿を森と同化させているため、平たく言えば体を透明にしているため見つからないのである。
(姿を変えれるとは思ったがまさか透明になれるとは。さすが特殊スキル)
そんな事を考えていてもしっかりと前へと進んでいく。
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かれこれ一時間は歩いただろうか、順調に森をセルヴィであったが、ふとこんな事を思う。
ーー今の自分はどれくらい強いのだろうか?
善は急げである、セルヴィは自身の力を試せる魔獣を探す。
(見つけた)
二〇メートル先であるだろうか、ゴブリンの姿を目視する。
(究明眼発動)
心の中でそう呟くと、色々な情報が頭の中に入ってくる。
草木の名前、この場所の気温・湿度、土の性質ーーーーーー
様々な情報が頭の中に入り込んでくることによって、頭が痛くなってくるが、目的の情報を探し出す。
(見つけた)
種族:ゴブリン(F)
名前:無名
称号:イジメられゴブリン
状態:絶望
Lv:3
体力:23/23
魔力:6/6
筋力:8
魔攻:2
俊敏:7
防御:4
スキル:棍棒術(F)…素人に毛が一本生えた程度の扱いができる
備考:初心者に殺されるべくして生まれてきたとでも言うべき底辺魔獣。集団で行動する事が多い。そして女性の敵である。この個体は生まれて五年経つが、集団虐めに耐えられず、集団から抜け出してしまった。一人悲しく過ごし、いつ死ぬかと怯えながらも生きている。そもそもイジメのキッカケはーーーーー
無心で見る事をやめる。
魔獣の中でも虐めはあるのかよ!と、突っ込みたいところだがこの際心の中に納めておく。
このゴブリンを倒すと人間として、いや天使としてどうなんだろうか、そんな事を心の中で考えるセルビィ。
答えはもう決めたーーーー
(達者で生きろよ!)
結局、魔獣に同情して逃がしてしまうセルビィであった。
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気弱ゴブリン(セルビィが勝手に名付けた)を見逃してから数十分歩いたところでもう一度ゴブリンを見つける。だが今回は一匹ではなく六匹の集団であった。
(究明眼発動、今回はゴブリンだけに対象を当てるように)
前回の失敗を活かし、対象を絞るように発動させる。
今回はゴブリンだけの情報が頭の中に入り込んできた。
種族:ゴブリン(F)
名前:無名
称号:イジメゴブリン
状態:絶望
Lv:6
体力:35/35
魔力:9
筋力:11
魔攻:4
俊敏:9
防御:6
スキル:棍棒術(F)
備考:初心者に殺されるべくして生まれてきたとでも言うべき底辺魔獣。集団で行動する事が多い。そして女性の敵である。この個体は集団のボスであり、一番強い。性格に問題があり少しでも気に食わないと仲間であろうとも暴力を振るう。そのせいで数匹の仲間は逃げてしまった。
(こいつらは殺ってもいいよな)
備考の欄を見て殺す事に躊躇いが無くなる。そもそも魔獣は倒すべき悪であり、さっきのは普通あり得ないものだ。
あれぐらいのレベルだと、魔法で十分だと思い、魔法の構築に入る。
地球では魔法というのは架空の存在であったかもしれないが、それは違う。
大昔には魔法を使う文化があったが、科学の発展により魔法技術は廃れていった。だがオーチャードの世界ではその逆、魔法技術が発展してきたのである。
そもそも天使は魔法の勉強を普通はするので、地球でも使えるのだが。
ほんの数秒で魔法の構築が終わる。
今回は集団相手なので範囲を広くした火の魔法にする。
「火炎(範囲大)」
その瞬間、ゴブリン達の体は死をも気付かず灰になっていた。
ゴブリン達を倒した束の間、酷い頭痛と吐き気に襲われる。
「が!アアアァァァァ!」
何が起こっているのか激しい頭痛でよくわからない。
ーー痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!
意識が、飛んだ。
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どれくらい経っただろうか、時間がわからなくなるほど気を失っていた。
セルヴィは目を覚ました瞬間激しい吐き気に襲われ嘔吐してしまう。
(一体なにが起こったんだ?この症状は魔力欠乏症としか思えない……まさか!)
最悪の事態を想像し、セルヴィは否定したかった。いや、否定したかったのかもしれない。
「ステータス、オープン!!」
種族:人間
名前:セルヴィ
称号:一般ピーポー
状態:魔力欠乏
Lv:1
体力:13
魔力:-8/15
筋力:4
魔攻:9
俊敏:4
防御:33
スキル:・天霊光臨・隠蔽・究明眼・頑丈
スキル:頑丈…身体が丈夫になる。とっても丈夫になる。物凄く丈夫になると信じたい!!!
「嘘だろ……」
天使の頃はレベルは1000を超えていたが、今の状態はどうだろうか?
「凄く弱くなってるーーーー!!」
こうして最悪な現状をステータスに見つけられたセルヴィであった。
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