【第1話】映画製作部っ!
内容については、最後の部分以外はノクターンノベルズに載せているのと変わっていません。
僕、“映 画太郎”は高鳴る鼓動を抑えつつ、足早にある場所へと向かっていた。
そこは、僕が今年この“私立どんぶらこ学園”に入学した最大の理由、【映画製作部】が活動をする場所である!
幼少期から、映画好きな両親の影響をモロに受け、国内外の様々な映画を見てきた。
当然僕も映画にハマり、今や年間200本以上もの映画を見ている。
ただ、中学時代の途中までは見るだけで満足していた僕だったが、次第に自分でも映画を製作してみたいと考えるようになった。
その為、部活動で映画製作を行っている高校を探していた所、この学園が見つかったというわけだ!
僕は入部届けを握り締め、集合場所である視聴覚室の扉を勢いよく開ける。
部屋の中は2クラス分の人数は収容できるだろうか……広めの部屋は照明が点き、全体を明るく照らしている。
ステージ上には“映画製作部 入部説明会”と大きく看板が掲げられていた。
さすがは映画製作部……わざわざこんな巨大な看板まで作製するとは……大道具係の技量の程が伺える。
しかし……一方で部屋には誰もいない。
ステージ上に折り畳みの会議テーブルと折り畳みの椅子がセッティングされているが、そこにも誰も座っていない。
まだ……集合時間じゃないからかな?
時計を見ると15分前……ちょっと到着が早過ぎたのかもしれない。
とりあえず僕はステージ前の席に腰を下ろして待つことにした。
しかし……残り10分……残り5分となっても、誰も部屋に入ってくる気配がない。
まさか……僕1人だけ……?
そんな不安を感じ始めた時、ゆっくりと視聴覚室の扉が開かれた。
「し、失礼します……」
そこに入ってきた人を見て驚愕した!
なんと、同じクラスの“宇野 莉乃”さんが入ってきたからだ。
彼女はクラスでも抜群の存在感……ひと言で表すと、“透明感”がズバ抜けていた。
清楚な黒髪は肩口まで伸び、綺麗に整えられている。
余計なものは一切つけていないであろう容姿は目鼻立ちがぱっちりくっきりとしているものの、変なクセがあるわけではない。
ぷくっと可愛い薄桃色の唇……口を開けば透き通るような美声を奏でる。
そして、大きすぎず、小さすぎずな程よい胸……絶妙なスタイル!
要は超絶美少女という事だ!
きた……僕の時代がきたっ!
まだクラスでは一言も会話を交わしたことがないが、部活が一緒ともなると、確実にお近づきになれるチャンスではないか!!!
「う、宇野さん! ここ、ここに座りなよ!」
「あ……はい。あの……映画製作部の方ですか……?」
「……ははは。嫌だなぁ……同じクラスの映だよ!」
「あ……ご、ごめんなさい……」
部屋に入ってきた時からえらく人見知りな態度だなぁとは思ったけど、まだ僕の事を覚えてすらいなかったのか……。
…………。
……だがしかしっ、許すっ! 可愛いから許すっ!
それに今は僕の事を知ってなくても問題ない! これから仲良くなれば良いんだから!
と……ここで、コツコツとヒールの音を鳴らし、白衣を纏ったセクシーな女性が入ってきた。
「はぁ~い、お待たせぇ~~♪ あら、今年の希望者は2人かしらぁ、男女1人ずつ……うーん、バランスはいいわねぇ」
人数にちょっと不満があったのだろう、少し表情が曇っている。
この広い部屋に対して、入部希望の生徒は2人だもんな……。
その女性はそのまま設置された折り畳み椅子に腰掛けた。
白衣の下には胸元がザックリと開けられたワイシャツ……その隙間から豊満な谷間がチラ見えしている。
また、黒く長い髪をかき乱し、その度に香水の香りが部屋中にフワリと漂う。
さらには机に片肘をつき、手に持ったペンの先を、自らの口元へと寄せ当てる。
僕たちを凝視する目……その視線の向け方も何だか色気を放っていて、仕草の一つ一つが妖しくエロい。
赤い口紅を引いた分厚い唇を揺らし、女性はゆっくりと口を動かす。
「私は保健室のマドンナ及びこの映画製作部の“総監督”でもある“ヨーコ”よぉ♪ 呼ぶ時は、保健室では“ヨーコ先生”、部活では“総監督”って呼んで頂戴♪」
わお、顧問じゃなくて総監督!
何かそういうこだわり、凄くいい!!
(しかも普段は保険の先生! どーりで白衣姿!)
「早速だけど、ここは映画の製作及び作品の発表を主とする映画製作部よぉ♪ あなた達は入部希望者って事でいいのかしらぁ?」
「はいっ!!! 勿論です!」
「……はい、そうです」
僕の横に座る宇野さんも肯定の返事をした!
これで間違いなく同じ部活に入部を希望しているという事だ!
万が一、「あ、間違ってました……」と部屋を出て行ってしまったらと思って内心ドキドキしていたのだ……。
「うふふ……入部の意思があるって事はわかったわぁ♪ でも、念の為確認よ……ええと君、この学園の部活に関する規則を答えて頂戴♪」
「ーーはいっ!」
指名されたのは僕だ。
その場に起立をし、総監督に向かって声を上げる。
「この学園では、必ず部活に入部する事が義務付けられています! そして、途中で辞める、もしくは転部する事も認められていません! また、事前に周りの生徒と相談して部活を決めるのも禁じられています!」
さらには部活の活動内容がどういうものかも完全に伏せられた状態で選択するのである。
人や情報に左右されずに自分の意思で決定し、3年間やり通す事で自立心の成長を促す……という方針らしい。
これはこの学園独自の、ちょっと面白い制度だと思う。
「いいわ……その通りよぉ♪ それをわかった上で、あなた達はこの部活を選ぶというのねぇ?」
「「はい!」」
「じゃあ貴方……男性だと、体力を使うキツい仕事も多くなるけど、大丈夫?」
「全くっ! 問題ありませんっ!」
そんな事で音を上げてるようじゃ、良い映画を作れる訳がない!
「じゃあ、貴女……映画を作製していく上で、他の人の作品で女優として出演する事もあると思うけど、それは問題ないかしらぁ?」
「……はい、大丈夫です」
宇野さんは少し恥ずかしそうに俯きながらも、しっかりとした声で返事をした。
「……よろしい。ではあなた達の入部を許可するわぁ♪ これからは我が“映画製作部”の一員よ、よろしくねぇ♪」
「はいっ! よろしくお願いします! 宇野さんも……よろしくね!」
「うん……よろしく、映くん」
うおお、やった! やった! やったぞ!
念願だった映画製作部に入部っ!
しかもクラス一の美女も一緒!
これからの部活動生活はパラダイスですなっ!
僕はその場で小躍りをしたい気分だったが、なんとか平常心を保った。
それでも少し膝が震えていたけど……。
「じゃあ、早速これから先輩の撮影現場に連れて行こうと思うんだけどぉ、その前にあなた達の目標を聞かせてもらわないとねぇ?」
「目標……ですか?」
「そうよぉ♪ 我が映画製作部では、卒業までに、“最低1作品以上、入部時に目標として掲げた映画を撮りきった上、コンクールに出品する事”を義務付けているの。あなた達には、その目標を聞かせて貰おうと思ってねぇ♪」
なるほど、それはいい考えだ。
予め目標を設定しておく事で、モチベーション高く活動し続けられるからね!
「じゃあまず貴女……どんな映画を作りたいの?」
「……はい。私は、恋愛映画を撮ってみたいです。内容は……」
宇野さんの言う恋愛映画。
邦画でよくある甘々な内容だったが、彼女が作るものなら是非とも見てみたいと思う。
てか、あわよくば僕も出演したい……できればヒロインは宇野さん、僕はその相手役で。
そしたらもしかして……き、キスシーンなんかも……あったりしてっ!!! むふふっ!
「ありがとう♪ じゃ貴方は……どんな映画を作りたいの?」
今度は僕の番……待ってました!
僕はここで、ありったけの想いをぶつけた。
壮大なストーリー、何重にも仕掛けられたトリック、どんでん返し……。
CGなんかも駆使した、ハリウッド顔負けの超大作だ!
「……はい、ありがとう。まぁ、2人の話を聞く限りだと、貴女は製作費用が500万円くらい。……貴方は、ざっと1億円くらいかかるわねぇ♪」
「げげっ!?」
ぐはっ、い、1億……!
しまった……宇野さんがいる前だからって内容を誇張しすぎてしまった……。
「何暗い顔してるのかしらぁ? 1億くらい全然問題ないわよぉ」
「……え?」
「だから、製作費1億円くらい余裕よぉ♪」
「ええっ!? マジですか!?」
すげー! 映画製作部すげーっ!
部費で1億ぽんと出せちゃうのか!? 一体年間予算いくら貰っているんだ……。
でも、この部活に入ってよかった!
ここなら、僕の夢への第一歩が踏み出せる!
世界一の映画監督となって、世界中に名を轟かせるんだ!
「さ、じゃあ目標も纏った事だし、早速先輩の撮影現場に行きましょう♪」
「は、はいっ!」
僕たちは、視聴覚室に併設されていると言うスタジオへ向かった。
なんでも、今日はこの部活の部長である“沖田おきためぐみ”さんが撮影を行っているとの事。
部長ともなれば、きっと素晴らしい作品を製作しているに違いない!
いきなりその現場に立ち会えるなんて、なんで幸福なんだろう!
「さ、ここよぉ♪」
ヨーコ総監督が扉の前まで僕たちを誘導する。
……中から、女性の声が微かに聞こえる……。
……ん、なんだ?叫び声……?いや、何か違う……?
戦闘シーンでも撮影してるのかな……?
「じゃあ開けるわよぉ♪」
総監督がゆっくりと扉を開ける……
「いっ!?」
「え……!?」
そこに現れた光景に、僕たちは驚愕する!
なんと女生徒が台座に座り……以下割愛っ!!