もうひとつの世界
道の端には見たことのない綺麗な花がずらりと咲き、建物の屋根は大きく青や赤、カラフルな色をして、走る車も建物も見たことがないような、まるでテーマパークにいるみたいだ。
黒や灰色のものがほとんど無い。私たちは道の真ん中に降りた。
「ついてきて!」
ルルが手を引っ張り、慣れない景色の中、私は目を回しながら言われるがままに歩いた。
着いたのは路地裏だった。ルルは誰もいないのを確認し、言った。
「ようこそ!私たちの世界へ!!」
その言葉とは合わずあたりはしんとしてルルの声がこだました。
「いや、そんなのいいから!ここはどこ?」
「だから、私たちの世界。もうひとつの世界なの。」
もうひとつの…世界?
「帰り道は?どうやって帰るの?帰りたいんだけど」
「早いよ由実。しょうがないなあ。あ、あとこれ。靴!忘れてたよ!」
それは私が屋上に揃えておいた靴だった。
「あ、ありがとう。」
「どういたしましてー」といいながらルルは背負っているリュックをとると、目を丸くした。
「あーーーーーーーーーー!」
いきなり叫んだルルに私は思わず目をつぶった。
「あーどうしよーたいへんだー。ミニヘリのバッテリーがないぃ。」
ルルはよくわからないことを言った。ただ、言っていることはタダ事でないことは私にも分かった。そして、ルルは長々と説明をはじめた。
「あのね、由実。私は由実たちの世界からここまでこのミニヘリを使ってきたの」
ルルが持っているリュックにはプロペラが4つ付いていた。どうやら、このプロペラの力でここまで来たらしい。
「でも、このミニヘリもうバッテリー切れで…。だからさ、その、」
帰れない。
ルルは確かにそう言った。私は、頭の中が真っ白になっていった。それが、自分でも分かった。
「じゃあ、ずっと私はこのまま?」
「いや、帰る方法はもうひとつあるの」
ルルは遠くを指差した。その先は…電車?
「あの電車に乗れば帰れる。でも…」
「でも…何?」
「電車に乗るには切符がいるの。その切符を手に入れるには、由実の世界とこの世界の違うところをひとつ見つけなきゃいけないの」
「ちがうところ?」
「この世界にはひとつだけ、無いものがあるの」