#005「八月二十一日日曜日」
――昨夜の十八時から二十四時に入っているニュースは、と。
五輪に水を差したとして、一連の解散騒動を謝罪。三日連続で、三人目ね。
ジャマイカや米国の陸上メダリストが、日本のリレー選手のバトン・パスを高評価してるんだ。日本は、チーム・ワークに強いのね。
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「おはようございます、金谷先生」
「おはよう、福島さん。予報によると、明日から明後日にかけて台風十一号が接近するらしいわ」
「そうみたいですね。今日の午後には北海道に上陸するとか」
「土砂災害や河川の増水に警戒が必要ね。――昨夜のニュースを報告するわね。五輪に関して、豪州の選手が身分証の識別用の数字を改竄して、客席に座る権利がある身分証に見せかける細工をしたという疑いで、延べ十人が逮捕されたというニュースがあったわ」
「競技に関係なくても、不正をしてはいけませんね」
「アスリート失格ね。それから、福岡で自動車運転中に事故を起こした男性が、覚醒剤を所持していたことで逮捕されたそうよ。警察の調べに対しては容疑を否認してるようだけど、運んでいただけにしろ、使っていたにしろ、持っている時点で犯罪の動かぬ証拠だと思うわ」
「依存症は怖いですね」
「薬物乱用者が物理的に危害を加えるおそれがあるばかりではなく、売買による利益が反社会的組織の活動費に充てられていることも問題なのよ」
「違法薬物撲滅に関するパンフレットは、悩み相談電話の名刺などと一緒に、終業式で配られることが多いですよね」
「それだけ注意喚起を徹底していないといけないほど、身近に潜んでいるということなのよ。危機管理に関連しては、米国が核の先制不使用を導入するかどうかを巡って、日本でも動向に注目が集まっていて、総理は、今後も米国政府と緊密に意思疎通を図り、核なき世界に向けて着実に前進するよう努力を重ねたいと述べたというニュースがあったわ。ここでポイントになるのが、核の先制不使用なんだけど、どういうことか説明できるかしら?」
「えぇっと。相手が核兵器で攻撃してこない限り、核兵器で攻撃し返さないということ、でしたっけ?」
「そうよ。合ってるわ。教科書には、核保有国は五ヵ国だということになっているんだけど、どこか言えるかしら?」
「アメリカ、フランス、ロシア、中国。それから、えぇっと」
「イギリスよ。ちょっと不謹慎な覚えかただけど、茸雲をアフロ・ヘアーに見立てて、アフロ注意と記憶すると良いわ」
「なるほど。ねぇ、先生」
「何かしら?」
「どうして、攻撃に対して反撃する用意をするという護りかたなんでしょう? 放射能が届かない場所に安全な水や食糧を蓄えておいて、いざとなったら閉じ篭るという方法では駄目なんですか?」
「核シェルターを保有しておくのね。スイスでは、そういう民間防衛が徹底してるそうよ」
「あっ。そういう国もあるんですね」
「世界には色んな国があるものよ。今日も、社会から始めましょうか」