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#003「八月十四日日曜日」

――昨夜の十八時から二十四時に入っているニュースは、と。

明日の朝に、台風六号が北海道東部に上陸する可能性が高いのね。大雨や強風に気を付けないと。

御年九十四歳のご長寿が、この秋に語り部に。沖縄戦を風化させないために、次世代に継ぐ姿勢は大切だけど、話すほうも聴くほうも辛いのよねぇ。

シリアのクルド人勢力が、アイ・エスの補給拠点を制圧したのね。これで過激行動が収束に向かえば良いんだけど。

  *

「おはようございます、金谷先生」

「おはよう、福島さん。どうしたの? 何だか元気が無いわね」

「あの国民的アイドル・グループが、今年いっぱいで解散することになったんですよ? 落ち込まずいられません」

「あぁ、そのことね。二十五年も活動を続けられたほうが、奇跡だと思うわ。よく続いたほうよ」

「そうでしょうか?」

「そういうものよ。それに、今回の事務所の決定は、メンバー一人一人と面談の上での判断だから覆らないと思うわ。――昨夜のニュースを報告するわね。明日は終戦の日ということもあって、一つは第二次世界大戦に関するニュースよ。沖縄戦を経験した男性が、この秋に初めて体験を語ることになったの。戦争の壮絶さを風化させてはいけないと、閉ざしていた重い口を開くことにしたそうよ。それから、シリアのクルド人勢力が、アイ・エスの補給拠点を制圧して、アイ・エスに大打撃を与えたというニュースもあったわ。これでテロ活動が収まっていけば良いんだけど、どうなるか注目したいところね。まず一つ目のニュースについて質問だけど、戦争が終わったのは、いつのことか覚えているかしら?」

「一九四五年の八月十五日です。今から七十一年前ですね」

「そう。よく覚えているわね。特に沖縄は本土決戦の地で、激戦地だったの」

「沖縄は今も、米軍基地の問題を抱えていますよね?」

「そうなのよ。国際的な安全保障のありかたについて、日米間だけでなく、世界全体で考えていかないといけなくなりつつあるわね。二つ目のニュースについて質問だけど、アイ・エスが何の略かは知ってるかしら?」

「イスラム国ですよね。イラクとシリアを拠点として活動している、イスラム過激派組織です」

「そうそう」

「どうして、武力に訴えるんでしょうね」

「対立構造は、簡単に生まれるものよ。他人とお話しするのが好きで、常に誰かと一緒に居たいエーさんと、他人と言葉を交わすのが苦痛で、なるべく一人で居たいビーさんが同じ場所にいた場合、エーさんはビーさんに話しかけても、ビーさんは話しに乗らないわよね? せっかく話しかけてるのにビーさんが話に乗らないことに、エーさんは不満を感じるし、ビーさんはエーさんに話しかけられたことに迷惑を感じるでしょう?」

「人それぞれ、顔や身体も違えば、考えかたも違うのに、それを認められないのは残念ですね」

「身も蓋も無いことを言うようだけど、身体的、精神的、社会的な違いがなくならない限り、差別や争いは無くならないものよ。でも、だからと言って無関係な人を巻き込んで良いって話にはならないの。そこを、どう折り合いを付けるかが、平和な社会を築く第一歩ね」

「難しい課題ですね」

「それに比べたら、この数学の問題のほうが簡単ね。はい、ノートを出して」


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