#000「八月六日土曜日」
――昨夜の十八時から二十四時に入っているニュースは、と。
ウゥン。五輪関連のニュースばっかりね。
あとは、外国人の訪問介護、米国大統領支持率、空港の混乱か。
スマート・フォン・ゲームの不具合については、時事問題にはなりそうにないわね。
*
「おはよう、福島さん」
「おはようございます、金谷先生。今日も暑いですね」
「連日の猛暑日に、連夜の熱帯夜。おまけに、お盆には台風が近付いてるというわ。早く涼しくならないものかしらね。――それでは、昨夜のニュースの報告から始めましょう」
「はい。昨夜は五輪関連のニュースが目立ちました。ボクシングのモロッコ代表が性的暴行を加えたり、選手村の水道設備が不十分だったりと、何かと問題が取り沙汰されています。聖火は、コルコバードの丘を通過した模様です。あとは、来年度から外国人の訪問介護が始まり、米国大統領支持率がピークを向かえ、新千歳空港で身体検査のすり抜けによる混乱があったようです。日本国内の枠に囚われず、広い視野で考えることが大切だと思いました。わたしからの報告は以上です」
「よく出来ました。五輪に関しては、ドーピング疑惑に、治安の悪さ、公衆衛生管理の杜撰さと、これまでも様々な問題があったけど、どこで開催しても、何かと不安の種がついて回るものね」
「平和の祭典なのに、おかしな話ですよね」
「本当ね。国家の枠を超え、スポーツを通して、お互いに切磋琢磨していくはずが、足の引っ張り合いになってるわね」
「交通手段や通信手段の発達で、人間の移動範囲が広がって、色んな国の人たちと協力していかなきゃいけない時代なのに、残念な話ですね」
「言語や民族、それから文化や習慣の壁は厚いものなのね」
「難しいものですね」
「国際政治だって、近所のトラブルだって、突き詰めれば人と人のあいだの問題だもの。反りが合わないことや、仲違いすることはあるわ。でも、もめたままでいる訳にはいかないから、どこかで折衷案や妥協点を見つけないとね」
「交渉が上手な人がリーダーになれば良いんですね」
「その通りね。――それじゃあ、今日も英語から見ていこうかしら」
「はい」