表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋の時間  作者: 手毬猫
1/5

第1話

これから頑張って執筆していきます。

作品に対する感想など頂けたら嬉しいです。


素人作品なので大目に見てもらえればと思います(苦笑)

朝日が目に入る。まだ寝ていたいのに。

昨日のお酒も抜けてない。


一体今は何時なんだろう


布団に潜り込んだまま右手を伸ばす。

枕元に置いてあるはずの携帯電話を右手だけで探す。

だが見つからない。それどころか妙な違和感に気付く。

僕の部屋のパイプベッド、枕元に置いてある小さな棚、そこにあるはずの携帯電話。

それら全てが伝わってくる右手の感触とは違うものだった。


えっ?


何が違うのかわからないまま身体を布団からだす。


えっ?


そこは全く見覚えのない部屋だった。


えっ?


ふと左側に妙な違和感。

僕は左側に目をやると慌てて飛び起きた。


そこには全く見覚えのない女性が、僕の隣で裸で横になっていた…。




ー1日前ー


「「かんぱーい!」」


乾杯の号令と共に冷えたビールを口へ運ぶ。

冷たいビールが喉を潤す感触は格別だった。


「藤田君、いい飲みっぷりだね」

そう僕に話しかけて来たのは、僕の上司の北島部長だ。

年は50を少し回ったくらい。少し薄くなった頭と眼鏡が、日本のサラリーマン社会の象徴のようだ。

僕は

「仕事終わりのビールは格別ですね」

そう適当に相槌を打ちながらグラスに残るビールを全て喉の奥へと流し込んだ。


北島部長はそんな僕をニコニコ眺めながら

「今日は久々の飲み会だし、須藤君の歓迎会だから沢山飲みなさい」

と、自分のグラスをグイッと飲み干した。


僕は愛想笑いを浮かべて須藤さんの方へ目をやる。

彼女はニコニコと、隣に座る木村と話し込んでいる様子だった。


ー須藤舞ー

今月新入社員として入ってきた彼女は、一目で僕の視線を釘付けにした。

長くて綺麗な栗色の髪。大きな目に手入れの行き届いた睫毛。白い肌。

全てがとても可愛らしかった。


しかし、そう感じたのは僕だけではなかったようで…。

彼女の周りには常に男性陣が集まってきていた。

僕はどうにかチャンスを作ろうと、気合いを入れてこの飲み会に挑んだのだが…。

何故か僕の隣には北島部長が…。


はぁ…


溜息を漏らしながら新しく運ばれてきたビールを口に運ぶ。

緊張と気合いから、いつも以上にグラスを手にするペースが上がってきていた。


「藤田さん、次もビールでいいですか?」

向かいの席からそう声を掛けてきたのは田島さんだった。

田島美里31歳。

僕より3歳年上だが、中途で入社したのが1年前というのもあって、常に気を使ってくれている。

後ろでひっつめた長い髪と瓶底のような厚い眼鏡のせいで、彼氏いない歴31年なんじゃないかと噂をする失礼な社員も多かった。


今日の僕のポジションはどうやら決まってしまったようだ…

須藤さんの方へ目をやる。

彼女を中心に男性陣が集まっている。

反対側のテーブルには女性陣達が楽しそうにサラダやらポテトやら選びながら話し込んでいる。

そして真ん中のテーブルで僕と北島部長と田島さん…


はぁ…


溜息をつきながら僕はまた新しく運ばれてきたビールを飲み干した



ー現在ー



…と僕の鮮明な記憶はここまでだった…


その後の記憶をうっすらと辿る。

二次会でみんなでカラオケに行ったような気がする。須藤さんと話すこともままならなかった僕は半ばやけ酒のように酒を煽る。

そこらへんからの記憶は全くない。

その先を思い出そうとすると…


誰かとベッドの中で身体を合わせている…

彼女の髪をかきあげ唇を交わす…


そんな記憶が途切れ途切れに蘇ってきた。


まるで夢の中での出来事のようにうっすらと…



えーー!!



僕は慌てて隣に眠る彼女の顔を覗き込む。

彼女は枕に埋めた顔を僕には見せずに眠っている。


どうしたもんかと、彼女の長い髪を横からかきあげてみる。

すると…


「んっ…」


と、少し蹴伸びをしながら彼女が枕に顔を埋めたまま少し僕の方へ顔を向けた。

そして

「あ…起きたんだ…おはようございます」


の言葉とともに僕の顔を真っ直ぐ見つめた。


僕は彼女の顔を見つめたまま声が出せなくなっていた。

彼女は、布団で身体を隠したままベッドの下に落ちていた下着を手に取り

「昨日の事覚えてますか?」

と、笑いながら僕を見た。


僕はまだ言葉が発せずにいた。


彼女の黒目がちな大きい目、透き通るような白い肌、笑いかける笑顔。

全てが今まで見た事ないくらい綺麗で、僕の人生で一度だってこんなモデルのような女性と知り合った事がないからだった。


そんな僕を横目に、彼女はさっさと着替えてキッチンへと歩き出す。

冷蔵庫からお茶を取り出すとグラスに入れて僕の方へと持って来てくれた。


その間も僕は、彼女にかける言葉を見つける事が出来ずにただ、じっと彼女を見つめ続けていた。

頭の中の混乱をなんとかしようと彼女の持って来てくれたお茶を飲み干す。


彼女はそんな僕を見ながらクスクスと笑うと、横に流した前髪を邪魔くさそうに全部下ろした。

そして枕元に置いてあった眼鏡を付けた。


っ!



「た…田島さん??」


僕は前髪で顔を隠し、瓶底眼鏡を掛けた彼女を見てやっと彼女が誰かを理解した。


それは、彼氏いない歴31年とまで噂されるほどの田島美里だった。



驚き口を閉じれないでいる僕に

「安心して下さい。最後まではしてないですよ。」

と、彼女は笑ってみせた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ