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古代文明機 アーシェス  作者: 海猫銀介
2章 抗う戦士達
12/26

第9話 仮面を外す時 ①


「その話、本当なのか?」


「ああ、間違いねぇよ」


今日も息を切らしながら部室へ駈け込んできた丈一は、静かだった部室を騒然とさせた。

丈一本人が騒がしいのはいつもの事ではあるが、問題は彼が語った内容にあった。

なんと、丈一は一人でアーシェスを使ってヴェノムと戦ったという。

それだけではない、自分の身内である妹がヴェノム自身に襲われていた。

古代文献によれば、一度ヴェノムの支配されてしまえばその支配から脱する事は決して簡単ではない。

それが意味することは、ほぼ死に近い程までの意味を持っていると記されていたはずだ。


しかし、実際丈一はその手で妹を救いだし、ヴェノムを返り討ちにしたという。

瑞葉の持つ白のアルマフォースであれば可能性は考えられたかもしれない。

だが、丈一のアルマフォースは、瑞葉のように誰かを救い出せる力ではないはずだ。

だからこそ、英二は丈一の言葉をそう簡単に信じることができなかった。


「アンタ昨日帰ってこないと思ってたら……そんな無茶してたのね」


「しかし、ヴィクターは我々に知らせなかったぞ。 お前は本当に戦ったのか?」


「おいおい、俺が嘘をついているように見えるか?」


丈一が嘘をついているはずがない。

英二も馬鹿ではないし、そんなことはわかりきっている。

だが、丈一の話には多くの問題点がある。

一つは、ヴェノムは未だにアカシャの戦士を狙っていること。

彼らは明確にアカシャの戦士を『敵』と認識し、ありとあらゆる手段で妨害を試みているという事実が生まれるのだ。


「勿論、お前を信じないわけではない。 しかし、お前の言葉を信じるなら今後我々はできる限りまとまって動くべきだな。

いつどこでヴェノムが我々を狙っているのかわからん」


「確かに英二君の言う通りだわ。 一歩間違えれば、丈一君はまたヴェノムに支配されていたのかもしれないんでしょ?

また同じように私が助けられる保証もないんだから、無茶だけはしないでよね?」


「わ、悪い。 俺、みんなの足引っ張ってると思っちまってよ……何とか自力で問題を解決しようと必死だったんだ。

すまねぇな、先輩……それとお前達もな」


丈一はヘラヘラとしながら言っていたが、付き合いが長い英二には丈一がどれだけ思いつめていたかが何となくわかってしまう。

丈一は確かにサインを出していたはずなのに、ヴェノムの対策で頭がいっぱいだった英二はそれを無視してしまった。

今回の事件は英二が動かなかった事も原因の一つとして受け入れざるを得ないだろう、と英二は丈一をこれ以上問い詰めるつもりはなかった。

心配性の瑞葉はマシンガンの如く丈一に罵声を浴びせ続けるが、あれは瑞葉の愛情の裏返しだろうと英二は凜華の隣へと静かに座った。


「君はどう思う、丈一の話を」


「どうして、私に聞くの?」


静かに本を読んでいた凜華は、目を丸くして英二に尋ねた。

彼女が驚くのも無理はないか、英二は自ら凜華に話しかける行為はあまりした事がないのだから。


「ふむ、君もヴェノムについて色々と調べているのだろう?

丈一の言うように現実世界でもヴェノムが潜んでいると考えるのならば、我々は常に奴らの監視下にあるといっても過言ではない。

やはりヴィクターの言う通り、ヴェノムが本格的に動き出す日はそう遠くないのだろう」


「でも、焦ってもいい結果は生まれない。

歴代のアカシャの戦士が何度やっても解決できなかった問題、今度こそ私たちの代で終わらせないといけない」


「そんなことはわかっている。 だが、時間がないのも事実だ。

何より、丈一の話を聞いて私はますます奴に疑惑を抱くようになってしまったよ」


「……ヴィクターの事ね」


凜華は察したのか、瑞葉と丈一に気づかれないように囁いた。

そう、丈一が襲われているにも関わらずヴィクターは全く動きを見せなかった。

それだけではない、丈一の家族がヴェノムに狙われたというのに、それを一切明かさなかった。

はっきりといえば、ヴィクターは胡散臭くてどうも信じられないというのが英二の見解だった。


「でも、私は彼女を信じるしかないと思うの」


「ほう、興味深いな。 一体、どういう事だね」


「きっと、心を閉ざしちゃってるだけなんだと思うの」


「心を閉ざす?」


一体凜華は何を言い出すのか?

ヴィクターは自ら言っていたはずだ、心を持たないただのプログラム体にすぎないと。

だから精神世界に侵入できないし、感情だって見せない。

それなのに凜華は、彼女が心を閉ざしていると言った。


「ないな、彼女はあくまでも作り物にすぎない。 所詮、古代人の命令通りにしか動けない人形にすぎないと思うのだがね」


「貴方程の人が、当たり前なことを見落とすなんて。 やっぱり、焦っているのね」


「……何を言う?」


凜華はいつになく冷たい目で英二を睨みつけて告げた。

普段は感情を隠している彼女でも、その時だけは僅かにだが英二に対して怒っているとわかった。


「でも、今は確かに私も貴方と同意見であるのも事実。

ヴィクターは必要以上に私達に情報を開示しないし、非協力的であるのも事実。 だから、あまり信用しないほうがいいという点では同意なの」


「つまり、ヴィクターが非協力的なのはあくまでも彼女自身の信頼を得ていないから、そう考えているというのか?」


「うん」


間髪入れずに凜華がそう答えると、英二はため息をついた。

英二の考えと彼女の考えは根本的な違いがある。

勿論、考え方の違いは人それぞれであり、意見がまとまらないのであれば気が済むまで徹底的に議論をすべきなのだ。

だが、残念ながら彼女の理屈は議論するに値しない。


「これ以上、君と話す必要性はないようだな。

我々がヴィクターをどうしようが、優先すべき事はヴェノムをどうするかだ。

私は決してヴィクターや浄化プログラムに頼らず、奴らを確実に殲滅する方法を探し出して見せる」


「ダメ、今は一緒になって考えないと」


「だったら、少しは真面目に考えるんだな」


「私は、いつだって真面目」


「……失礼、訂正しよう」


これ以上付き合ってられん、英二はついその言葉を口にしそうになったが、何とか堪えて飲み込んだ。

今は仲間割れをしている場合ではない、そして焦りすぎても答えは出ない。

確かに今は彼女の方が正しいと英二も認めざるを得なかった。


「ちょっと、二人とも怖い顔してどうしたのよ?」


例のお節介リーダーこと、瑞葉が事態を察して仲介に入ってきた。

彼女はこういった点でもリーダーとして適任である、と英二は頷いた。


「気にする必要はない、議論を重ねれば自然と表情は引き締まっていくものだ。 それよりも暑くないかね?」


英二が誤魔化すようにおもむろにワイシャツのボタンに手を伸ばすと、察した瑞葉が天使のような笑顔で握り拳を作っていた。

彼女の一撃は強力だ、しばらく起き上がれなくなるのは勘弁願いたい、と英二が手を止めると瑞葉も拳を下ろした。


「フ、流石音琴君。 私が何を考えているか瞬時に理解したか、これも私と君の意思が繋がっている証拠だろうな」


「あんなの私じゃなくて、誰でもわかるわよっ! 全くもう、そのクセどうにかならないの?」


「仕方あるまい、感情が高ぶったときは身体から冷やすのが一番だろう?」


「だからって、脱ぐ必要はないでしょ?」


「いいかね、脱ぐ行為は絶対的に必要な要素なのだよ。 自分の裸体を他人に曝け出すことにより頭がスッキリと――」


高速でズガンッと強力な一撃が英二の頭へと襲い掛かった。


「そんなにスッキリしたいなら、私がいつでもリセットしてあげるわよ?」


彼女は満面の笑みでそう告げたが、英二はにやりと謎の笑みを浮かべてその場で倒れこんだ。




部活動が終わり、今日は一旦解散となった。

というのは、昨日話していたアーシェスによりヴェノム退治を今夜から決行するプランとなっていたからだ。

まず、動けるところから活動を始めていく。

正直、根本的な解決にもなっていないし気休め程度にしか過ぎない。

だからと言って、このまま何もせずにじっとしているのは性に合わない、それが我らのリーダー音琴 瑞葉の方針なのである。


英二は帰宅する前に、駅の近くにある本屋へと足を運んでいた。

別にヴェノムやヴィクターの調査の為ではない、どうせ古代文献以上の情報がこの本屋にあるとは限らないのだから。

ここのところヴィクターやヴェノムの問題に追われていて、少し頭が煮詰まってきていると感じていたところだ。

せめて気分転換にでもなればいいが、と思っただけである。


しかし、頭ではそう考えていてもどうしてもヴェノムの事が頭から離れない。

自然と足を運んだ先は古代文献に関する書籍がまとめられているスペースだった。

ここ数年、考古学は世間から注目を浴びており、メディアでもよく古代遺産や古代人の技術について取り扱われることが増えてきていた。

何気なく目を通していると、ふと英二は一冊の本に目が留まる。

「貴方が知らないアーシェス文明」、何処にでもありそうなタイトルではあるが……英二が目に留まったのはそこではない。

その表紙に描かれた人型兵器の方だ。


「これは――」


そこに描かれていたのはアルヴァイサーだ。

細部は異なっているが、それにしてもよく似ている。

英二が真っ先に手を伸ばそうとすると、もう一人隣からスッと手を差し出してきた人物がいた。


「あ、ごめんなさい」


「いえ、気にせず」


隣の女性に一言謝ると、英二はさっと手を引いた。 まさか同じ本に興味を持つ者がいたとは。

最後の一冊と思われるが、別に表紙に描かれたアーシェスが気になっただけではあるし、諦めて譲るとした。


「あの、もしかして、左京君?」


「ん、何故名を――」


自分の名を知る女性が限られているはずだが、と英二は隣の女性の顔を見ると……言葉を失った。


「――ま、まさ、か。 君は――」


流石に動揺を隠しきれなかった。

全身から妙な汗が吹き出し、身体が震えて奥歯をガチガチと噛みしめた。

思い出したくもなかった過去の記憶が、今その場で走馬灯のように蘇っていくと……

ハッと我に返って頭を横に強くふるって掻き消した。


「私の事、覚えてくれてる……かな?」


「――忘れるはず、ない。 ……香奈ちゃん、だよね」


その名を口にすることさえ戸惑った。

だが、英二はあえて当時の記憶のままで、彼女の名を口にした。

忘れるはずもない、英二のトラウマとなったあの事件を。

そして彼女は、事件の引き金となった張本人なのだ。

まさか、こんな形で……彼女と再会することになるとは夢にも思っていなかった。


「そうやって呼ばれるの、凄く久しぶり。 最近では皆、私の事呼び捨てだしね」


「それじゃ、私は失礼する」


せっかくの再会ではあるが、これ以上彼女と話す事はない。

いや、むしろ英二自身には彼女と合わせる顔がない。

そう思って、静かに立ち去ろうとしたが……彼女は、止めた。


「ねぇ、ちょっと待って」


服の袖を少し強めに引っ張ると、英二は思わずぴたりと足を止めた。


「アーシェス文明に、興味あるの?」


「……」


英二は何も答えなかった。

少し前までは確かに遊び感覚で調べていたが、今や世界を救うために勉強しているだなんて口が裂けても言えるはずがない。

それに、英二は無意識のうちに彼女を避けようとしていた。


「左京君、今から時間ある?」


「……構わない、が」


「じゃあ、ちょっと待ってて」


彼女はどこか嬉しそうにアーシェス文明の本を手に取ってレジへと駈け込んでいった。

今なら逃げ出せる、このまま彼女を置いて逃げることだってできたはずだ。

しかし、何故か足が竦んで動くことができなかった。

本当は怖いぐらい逃げ出したい気持ちだというのに、でもどこかで彼女と再会できたことに喜びを感じている。

そして、彼女が英二の事を避けずに……話しかけてくれた事が少し、気になっていた。

何処か矛盾した感情がぐるぐると渦巻いている間に、香奈はおまたせと英二に声をかけると英二はうむといつものように頷くと

彼女に連れられて英二は本屋を出て行った。


「なんか、変な喋り方してるよね。 左京君って、そんな人だったっけ?」


「人は変わるものだ、いつまでも小学生のままというわけではないだろう」


「そっか、でも顔は全然変わってないよね。 メガネかけてても、私すぐわかっちゃった」


「……そう、か」


ぎこちない会話が続く、英二は自転車を引きながら彼女に連れられていくと、そこは英二がよく立ち寄る喫茶店だった。

二人は喫茶店に入ると、アイスコーヒーを注文してしばらく沈黙が続いた。


「……ごめんね、左京君」


「な、何が……だね」


「ずっと、貴方にちゃんと謝りたかったの」


「何を言うか、謝るのは私の方、だ」


今でも昨日の事のようにはっきりと脳裏に浮かぶ。

自分が正しいと思って行動したことが、結果的に彼女を傷つけてしまい、自らがいじめられるきっかけとなった事件を。

彼女に罪はない、悪いのは全て勝手な正義感で動いた英二にあるのだと。


「本当はね、その……左京君が私の事を庇ってくれたの、嬉しかったんだよ」


「……何を、今更ッ!」


感情的になった英二は、思わず思い切りテーブルをガンッと叩き付けた。

ようやくその事を口にしたかと思えば、冗談じゃない。

もし本当に……あの時、嬉しいと思ってくれたのならば、何故その場で口にしてくれなかったのだ。

彼女は肩をビクッとさせるが、それでも続けた。


「でも、私はその事はからかわれていた事を全然気にしていなかったの。

だけど、その時の男子が凄く私の事を気にしちゃって、その……変に気を使ってたから。

その子がなんだか泣きそうになって、私もなんだか凄く……悲しくなっちゃって」


彼女は誰にでも優しかった。

当時香奈の事をからかっていた男子は、確かに英二の言葉で反省しているようには見えた。

だからこそ英二は当時、自分は確実に正しいことをしていたと実感を持てていたのだから。

でも、結果的に自らの行動は彼女を苦しめ、自身の首を絞める結果になったのは事実だ。

彼女が今更何を言おうと、この事実が変わる訳ではない。


「言いたいことは、それだけか?」


「……私、バカだと思った。 あの時の事が原因で英二君がいじめられてるのを知ってたのに

何もできずにただ見ている事しかできなくて……本当、自分が凄く卑怯だなって」


「――今更そんな言葉、信用すると思うか?」


彼女が嘘をつくはずがない、恐らく言っている言葉は真実なんだろうと思いたい。

しかし、だからといって英二は簡単に彼女を信用することはできなかった。

何故ならば、もし彼女の言葉が真実だとしたら――【今の自分の姿】とは、何だったのだろうか。

偽りの仮面をつけたのは、彼女が起因で起きた事件がきっかけだった。

もう二度と同じ過ちを繰り返さないよう、自分への戒めとして、もう一人の自分を演じてきた事。

長年苦しめ続けてきたあの時の事真実が、こんな形であっさりを打ち明けられても……英二には受け入れる事は、出来なかった。


「……左京君、私がここで貴方と出会えたのは……きっと、何らかの意味を持っているはず。

私はずっと神様に願い続けていた。 いつか左京君と再会して、真実を伝える機会がほしいと」


「なら、僕が抱えてきた数年間はどうなるっていうんだ?

僕は、僕は本気で君を傷つけてしまったと思って……それ以来、僕は……僕はっ!」


気づけば英二は自分の素、つまり彼女が知る小学生時代の英二を曝け出していた。

弱いはずの、いらないと捨てたはずの自分。

それを捨てるまでの経緯に至った痛みを、彼女は知る由もない。

理解できるはずもないというのに。


「手を、貸して」


「……何を?」


「お願い、何も言わずに手を出して」


突然の事に首を傾げたが、英二は言われるがままに彼女に手を差し出した。

すると彼女は両手でそっと英二の手を包み込むと、両手から白い光が発生し始めた。


「この光――まさか、君は一体っ!?」


ガタンッと椅子から立ち上がり、思わず声を荒げて叫んだ。

店中から注目を浴びていたが、英二には周りを気にするほどの余裕はない。

今の光、アルマフォースと酷似していた。 それも……瑞葉が持つ「白き力」と同質だった。


「この光の事、知っているの?」


「知っているも何も、アルマフォースそのものじゃないかっ!」


「アルマフォース? それが、この光の名前なの?」


力を知らずに使っているというのか? 彼女の様子を見ると、アルマフォースの事を本当に知らないように見える。


「今君は、僕に何をしようとしたの?」


「私が嘘をついていないことを、信用してもらいたかった。

昔親友と喧嘩した事があってね、その時こうやって手を包んだら真っ白な光が現れて、私の気持ちが伝わったことがあったの」


「……性質が違う、白?」


「性質?」


「いや、なんでも……ない。 つ、続けてくれないかな」


単なる勘違いだと思いたい。

しかし、彼女の言葉がどうしても気になって英二はもう一度手を差し出すと、香奈は黙って両手で包んだ。

すると確かに、頭の中に彼女の言葉が伝ってくる。

いや、言葉というよりかは……感情がそのままダイレクトに伝ってくるかのような不思議な感覚だ。

音ではあるのだが、それはちゃんとした言葉ではなく、感情が音として伝わってくるのだ。

例えるなら自分の感情を音楽で伝えようとするとき、喜びは賑やかな雰囲気の曲を、悲しいときは物静かな音を奏でるかのような表現に限りなく近いと言える。


「昔の事はそう簡単に忘れることはできない。 でも、君も同じように、重い過去と戦ってきたのはよくわかった」


「でも、左京君の方がよほど苦しい思いをしてきたはず。 今更かもしれないけど……私、左京君の力になりたい」


だが、英二はすんなりと彼女を受け入れる訳にはいかない。

しかし、彼女が持つアルマフォースは少し気になる。

昔の事は一度忘れて、その力について聞きたいと思ったが……聞いてものいいのだろうかと少し戸惑う。


「……左京君、アーシェス文明について調べてるんだよね?」


「そ、そうだけど」


「実は、私もそうなの。 ねぇ、もしよかったら二人で調べてみない? 色々と気になることがあるし。 ね、いいでしょ?」


普通ならなんて図々しい奴だと怒るかもしれない。

しかし、英二にとっては腐っても初恋相手。

今更強がって彼女を突き放すようなまねはできなかった。


「……少し、だけならね」


「やったっ! まだ時間大丈夫だよね? ちょっと早速、さっきの本についてなんだけど」


返事を得ると同時に、彼女はカバンから本を取り出して広げ始めた。

本来なら気分転換によったはずの本屋で、結局またヴェノムに絡む話を聞かされるのかと思うと愕然とした。

が、不思議と嫌な気持ではない。

過去のしがらみが邪魔をしているものの、本音としては……初恋相手である香奈との再会は、英二にとっては純粋に嬉しかったのだ

二人はしばらく、夢中になって話し続けていた。


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