価値観
「価値観が全く同じ必要なんてないと思うのよ、私は」
男女間の友情は成立するのかしないのか、そんな議論はさておいて、これまで、いいお友達関係を築いてきた彼女は、今日、恋人に振られたらしい。
僕の部屋に押しかけてきて、やけ酒を飲み、さっきから愚痴っている。
いい加減、飲みすぎだとは思うが、止めても無駄だということは、これまでの経験から分かっているので、好きなだけ飲ませて愚痴らせるのが僕の役割だ。
「あんたはどう思うの? やっぱり価値観が一緒じゃないと付き合ってけないわけ?」
彼女が理不尽な喧嘩腰で僕に問うてくる。
「そうだねぇ……」と僕は少し笑い、考える。
「少なくとも、好きなことは共有できた方が楽しいと思うけど」
「……そう?」
「うん。君の愚痴を聞くのは嫌いじゃないし」
「べ、別に、私は愚痴を言うのが好きってワケじゃないわよ」
彼女は早口でそう言って、口を尖らせた。