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君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


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9/33

普段、もうちょいケバ目の女とか、バンド系の女しか周りにいないけどさ、もう、これは頑張った。

一生懸命面白い話をかき集めてさ、何が好きで、どんなデートコースがウケそうか探った。


「そっかー、テニスのサークルかー。じゃ、彼氏いるでしょ?」

「いな~い」

「マジで?」

「小笠原君はバンドやってるなら、いそう」

「いな~い」


ま、このノリと出逢いは大切にしないと。


連絡先を交換したものの、あまりガツガツして見られるのもなーなんて、今思えばどうでもいい計算と見栄で、4日後くらいに連絡する予定だったんだ。

そしたら、2日後に再会。

しかもライブハウスで。


大学の軽音サークルのバンドで、美咲は2曲だけ舞台に出てきて歌った。

その頃かなり流行ってた曲。


オリジナルはどっちかってゆーと、可愛いタイプの声で素直に歌ってたから、まるで別の曲みたいな印象だった。

話してるときも思ってたんだ。すっげぇ心地いい声だって。

ハスキーで、ときどき甘くて、圧巻の声量で。歌声は観客を魅了した。バックの音楽なんてしょぼかったけどさ、声だけじゃない。オレには、歌の中の景色が見えたんだ。


それは小さなライブハウスで、オレのバンドはトリ。

打ち上げのとき、乾杯より前に走っていった。


「ねえ、歌うの?」


気がつくとオレは、美咲の手首を痛いんじゃないかってほどの強さで掴んでいた。

美咲の周りにいた軽音サークルの連中が怪訝な顔をした。


「亮! 女は後。乾杯すっぞー」


オレは自分のバンドのメンバーにずるずる引きずられるように連れ戻されたっけ。


その夜、大方の予想通り、オレは美咲と打ち上げ会場を出た。

星空の下の道を歩いて送って行った。

けど、部屋には入れてもらえなかった。


「あのさ、喉かわいちゃったんだけど」


努力家?のオレ。

アパートの彼女の部屋の前で粘る。


「あそこに自販機あるよ」

「水でいーからちょーだい」

「......」

「......」

「ちょっと待っててね」


やった! 入れる。

きっと今、少しばかり散らかった部屋を片付けてるんだって思った。

けれど、再びドアが開いたとき、期待は裏切られた。


「どうぞ」


コップに入った水を差し出された。

はー↓↓


「あのさ、トイレ貸してくんない?」


もうなりふり構わない努力家?のオレ。


「コンビニまで走ってね」

「じゃさ、コンビニまでついてきてくんない?」

「送ってくれてありがとう。おやすみなさい」


バタン


「あっ」


あ~あ。

ダメか。


夜10時半。

まだ他の連中はいつもの店で飲んでいるだろう。

戻ろ。


「なんだよ、亮、2次会行かなかったのか?」


11時に仲間のところへ戻ると呆れられた。


「は? 二次会?」

「美咲ちゃんと2人で飲みに行ったんじゃねーの?」

「部屋まで送った。でも、入れてもらえなかった」

「「「「「は?」」」」」

「振られた」

「亮、それ、当たり前だから」

「え?」

「普通、飲みの席で会った男、すぐに部屋入れねーし。ってか、お前、今までそんなことしてたわけ?」


そーですが。なにか。


「病気移るぞ」


そういえば、今までのオレの相手は、誘って欲しそうなサインを出してきた年上が多かった。

同年代だとしても、顔見知り程度の知らない相手。


その夜、先輩や友達からこんこんと説教された。


「亮、本当に好きな子できたら、まず最初に、お前の場合はエイズ検査しとけ」


これが1番身に染みたアドバイスだった。


したよ。

取り敢えず。

結果は陰性。

で、誘われてもついていかなくなった。怖いもん。


キャンパスで探した。商学部と政経学部の校舎は隣同士。

美咲はいつも5人くらいの女友達と一緒。

当時は携帯電話すらなくて、だけどひたすら、用もないのに電話。


夜10時半頃。

公衆電話を使うから、やったらテレホンカードを買ってた気がする。

音楽の話をして、食事の約束をして、ライブに行って、手をつなぐとこから始めて。

キスして、ハグして。


やっとやっと美咲の部屋に入ることができた頃には、季節が変わってた。


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