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君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


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6/33

シャワーを浴び終わって髪をガシガシ拭いていると、玄関のチャイムが鳴った。

オートロックでも何でもない古いマンション。

405号室のドアの向こうに誰かがいるってことを示す。

急いで体の水滴を(ぬぐ)って、ハーフパンツを身につけた。


「はい」


ドアの小さな穴から確認すると、ケンだった。


ガチャ


「おはよ。ケン、どーした? 入って」

「-っす。亮ちゃん」


ケンをリビングに通す、と、、、


「え? マジで?!?」


小声で呟いたケンが、オレのすぐ脇に戻ってきて、裸の上半身をジロジロを眺める。



それから耳打ち。


「未成年に手ぇ出すのはマズいだろ」

「は?」


持っていたタオルを落としそうになった。


「んなわけねーじゃん!」

「じゃ、なんで昨夜のガキが亮ちゃんの部屋にいるんだよ。で、亮ちゃん、シャワー浴びてんだよ」


ケンは至って真面目で真剣な顔。

で、昨晩の説明。


「なーんだ。そーゆーことかよ。あーびっくりした」


リビングのソファにケンと涼介が並んで腰掛けている。


「オレは生粋の熟女好きだ」

「いやー。最近はとんとご無沙汰みたいだったから、てっきり」

「こら、ケン。高校生の前だぞ」

「大丈夫ですよ。高校生なんですから」


涼介はくすくす笑う。

おいっ。お前も疑われたんだぞ。怒れ。


「で、ケンは?」

「ああ、オレ、ブドウがいっぱい送られてきたからさー。おすそ分け。潰れるといけないから、持ってきてやった」

「おー、サンキュ。いただきます」

「じゃ、オレ、仕事行くわ。今日は、おばさんの歌聴かなくちゃいけねーからさ」


ケンはブドウの箱を置くと、仕事に。


「はー。悪かったな。勘違いされてさ」

「あはは。いえ。はは」

「この業界、世間一般よりそーゆーの多めだからさ」

「やっぱ、そーなんですか?」


冷蔵庫の扉を開け、ペットボトルの水を飲む。

ん。酒は抜けてる。


涼介は部屋の中を壁伝いにゆっくり歩きながら、モノクロの写真や本の背表紙を見ていく。


「ちゃんと防音室があるんですね。ピアノもあって」


部屋の一角に、防音ガラスで仕切られたコーナーがある。その中には、ピアノ、キーボードがあって、作曲するとき楽譜を書く小さなテーブルもある。

オレがサックスの練習をする場所。


ブドウを冷蔵庫に片付けながら「ああ」と答える。

バンドの曲の8割は、オレが作詞作曲。

まあまあのヒット曲は4年に1回くらい。オリンピック並み。

それでも、ドラマの主題曲やCMに使われたりって程度の曲は、1年に1曲はある。


今はコンサートツアーシーズンの中休み。この時期は大学祭やイベントが多いから、関東周辺から出ないスケジュールが組んである。


「あの部屋、入ってみていいですか?」

「どーぞー」

「すげっ......」


防音扉を閉めてしまったから、涼介が何を話しているかは聞こえない。ただ、目をきらきらさせてこっちを向いてるのはわかる。

かわいーヤツ。

息子ってさ、こーゆー感じ?


今度、ケンに聞いてみよう。

24歳でできちゃった結婚をしたケンには、大学生の息子がいる。


息子かー。

結婚すらしていないオレには夢のまた夢。

オレはこのまま、ずーっと同じような毎日を暮して、死んでいくんだろうなって時々思う。

サックス吹いて、バーボン(あお)ってさ。


5畳ほどの防音部屋に入っていくと、涼介はボンゴを叩こうとしていた。叩き方を教える。


「そうそう、そんな感じ」


ポン ポン


「いーじゃん。速くして」


ポン ポン ポン ポンポン カスッ


「あれ?」

「はは。空振り? 貸してみ?」


ポン ポン ポコポコポコポコ ポン ポン ッポ ッポ


「すげー」

「一応、これでメシ食ってるんで」


ポン ポン ポコポコポコポコ ポン ポン ッポ ッポ


「さっすが」

「ブラバンじゃねーの?」


オレ達のバンドのファンは、圧倒的にブラスバンドをやってるヤツが多いから聞いてみた。バンドの構成は半分以上管楽器。


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