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君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


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5/33

朝食後、ガキが学校へ行くのと一緒にお暇させてもらった。

やっちまった感、半端ねー。

帰り際、立派な門を見ると「二階堂」と表札に書かれていた。

え?


「君、二階堂ってゆーの?」

「はい。そういえば、昨日、自己紹介していませんでした。二階堂涼介です」


二階堂だって? まさか。

いくら似てたって。

あいつが嫁に行ったのは、神奈川4区のはず。

ここは東京都だ。


「小笠原亮です」

「分かってますよー」


できた高校生、涼介は、またあいつと重なる笑顔を見せた。


「もう一度改めて、お礼に来たいんだ。それに、二階堂君とも友達になりたいから、連絡先教えて」

「連絡先は是非、小笠原さんのも知りたいです。誰にも教えませんから。でも、お礼なんていいですよ」

「それだけはさせてくれよ。真夜中に見ず知らずの男を泊めてくれたんだから」

「そーなんですか?」


お互いの連絡先を交換した後、涼介が言った。


「僕、小笠原さんと同じ高校なんです。だから、今日、小笠原さんの時間が許すなら、一緒にいたいなって思うんですけど」


きゅん


なんつーかわいいこと言いやがるんだ。

(寂しい)オジサンは一発KO。


遥か昔通ったオレの母校は、ゆる~い感じの大学の付属高校。やることやってれば、授業に出なかろーが、金髪にしよーが、私服で登校したっておとがめなし。

自由な校風。


「へー、あの高校なんだ。予定、3時から」

「あの、いいんですか?!」

「おう。こちらこそ。でも、その前にシャワーと着替えに部屋行っていい?」

「やったー!」


涼介は両手をグーにしてガッツポーズ。

こんなに素直に喜ぶなんて、すっげかわいい。

オレさ、女にこんなこと言われると面倒くさいのに、なんでこんなにウキウキしてんだろ。

これって、休日を息子と過ごすおとーさん的な気持ち?


「オレのマンション、こっち」


東京を網の目みたいに張り巡る地下鉄を乗り継いで、オレのマンションに到着。


「こ......こ?ですか?」


ま、そんな反応だよな。


「そ。意外?」

「はあ......」


だよな。

オレは売れる前から同じマンション。20代から同じところに住んでるわけで、その頃だって新築じゃなかったから、マンションはかなり老朽化している。

名の知れたミュージシャンは、大抵もっといーとこ住んでるからさ。


「気に入っててね。ただ、本当に古いから、天井が低いけど。二階堂君も背が高いから、気をつけて」

「あ、涼介でいいです」

「涼介君」


気に入ってるとか、そんな理由で長々といるわけじゃない。

ここから出られないんだ。

あいつが帰ってくるかもしれないから。


動くときにガコンと揺れるエレベーターで4階へ。

405号室の鍵穴に鍵を入れて回すとき、406号室を見る癖が治らない。

もう、とっくの昔にいないのに。


ガチャ


「うわーぁ。これがミュージシャンの部屋なんだー」


オレの部屋に入って、まず深呼吸をする涼介。


「別に男臭いだけだろ?」

「部屋の芳香剤の匂いがします」

「はははは」


中は1年前に2回目の改築済。


「その辺で、適当に。テレビ点けても、オーディオ点けてもOK。飲み物は冷蔵庫。コップはあの辺にあるの使って」

「はい」


オレは涼介をリビングに残し、下着を取りにベッドルームの扉を開けた。クローゼットから下着を取り出すときに目に入るクイーンサイズのベッド。

未だに使い続けている。

自分の女々しさを再認識し、自己嫌悪に陥る。


こんなにも意識してしまうのは、涼介があいつに似ているせいだ。おまけに苗字まで「二階堂」。

シャワーだ。

頭ん中もさっぱりしよう。


少し熱めの湯にしてシャワーを浴びる。

それにしても、昨日、なんであんなに飲んだんだろ。

後悔。

高校生のガキに酒勧めるなんて、週刊誌ネタじゃん。


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