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柔らかい日差しの中でまどろむ。
「すっげ可愛かった。初めてんときより」
「もう、やめて」
素肌のままの美咲を抱きしめる。
「そんなに恥ずかしいもん?」
「もう自分の体に自信がないの」
「オレだって、ほら、腹」
美咲の手を自分のぽよぽよの腹に乗せる。
「あはははは」
「あのさ、聞いていい?」
「なーに?」
「結婚式の前の日、オレ、噛みついたじゃん。あれ、どーした?」
「......電気点いてなかったから」
「はははは。そっかー。バカだな、オレ」
「バカ?」
「そんなことも思いつかなかった」
それどころか、美咲と旦那の間にわだかまりができてるだろうなんて淡い期待持ってさ。美咲なんて、オレの子供産むつもりだったのに。
かなわないな。
「ねえ、亮。噛みつかれたときね、嬉しかった」
「え?」
「亮が怒ってるのが嬉しくって。亮の気持ちに全身が震えたの。『ああ私、この先、もう誰も愛さなくてもいーや』って思った。『今夜のことを思い出したら、どんな夜も乗り越えられる』って。シャワーの後、鏡で毎日薄くなってくのを見て、寂しかったよ。自分の中から亮が消えてくみたいで」
あれ? 亮」
左手で顔をこする。
「見ないで」
「どーしたの? 亮」
涙もろくなったのは歳のせいだ。
あのとき殺さなくてよかった。
あのとき死ななくてよかった。
「今度、美咲の家に挨拶に行くから」
「うん。でも、生活は変えられないよ?」
「分かってる」
「涼介が育った家だから。涼介が家を出ても、あの家で、義父と義母と一緒に暮らすから。私」
「分かってる。
なあ美咲、いつになるか分かんないけどさ、
人生の最後くらいは
2人で暮らそうな
」
END




