表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/33

「へー。たまには夜出歩くことあるの?」

「学生時代や仕事してた頃の人と会うとか、僕の学校のPTAの打ち上げくらいです」

「主婦なんてそんなもんだろ」

「でも、なんか楽しいことあるのかなー?って思うんですよ」


ふっと美咲が涼介のことを話す嬉しそうな顔が頭に浮かんだ。


「涼介君の成長だろ」

「こんなんに?」


自分を指さす涼介。


「『涼介がいればいい』って言ってた」

「母に会ったんですね!」


ミス。


「まあ、何回か」

「でも、出かけてた感じしなかったけど」

「会うって言っても、ま、こんな風に食事できたことすらないけど。忙しいから」

「そうなんですか。僕なんて、相当遊んでもらったのに」

「いやいや、こちらこそ。涼介君との方が気兼ねなく、ゆっくり会えるな」


最後にオレンジジュースをおかわりする、オレ。


「もし、もしだけど。つき合うことになったら、涼介君の家にご挨拶に行くよ」

「え? どーしてですか?」

「結婚してる人だから」

「もう、相手はとっくにいないのにですか?」

「大人は難しいんだ」

「僕なんて、彼女の家に挨拶してからつき合うなんてしてませんけど」

「彼女いるんだ?」

「ああ、えーっと。まあ」


へー。照れてる。日に焼けた顔を赤くする涼介。


「写真ある?」

「えええっ?!」

「見せて見せて」

「えーっと」


スマホでデータを探しているらしい。


「どこで知り合った? 男子校なのに」

「中学のとき、塾で一緒だったんで」

「お、かわいーじゃん」


なんかいーなー。


「K女なんです」

「女子高かぁ。へー。ライブのチケット、家族分渡したけど、追加しようか?」

「いえ。祖父母は行くらしいんですけど、母は行かないみたいで、母の分のチケット彼女にもらったんです」

「来ないのか」

「あ、すいません。なんか、自治会の敬老会の手伝いがあるらしくて」

「いろいろあるんだな」

「ご馳走様でした。美味しかったです」

「いえいえ」

「お土産ありがとうございます」

「また、メシでも一緒に食おう」


涼介との食事、約1時間半。

9時か。帰ろう。誰もいない405号室へ。


『涼介君に京都土産渡した』

『ありがとう。お世話になります』

『つき合っていい?って聞いたら、いいって』

『どうして勝手にそんなこと言うの! 私、涼介にどんな顔すればいいの?!』

『つき合おう』

『会うだけ』

『わかってる』


キスとハグはしてもよさそーだし。

おっと。今、自然に顔ニヤケてたよな。



2日後、最寄り駅のロータリーへ車を寄せる。


「おはよ」

「迎えに来てくれてありがとう」


車に乗り込むと「生八つ橋美味しかった。ごちそうさま」って。

美咲はスエット素材の紺色のワンピースにグレーの厚手のカーディガン。足元はブーツ。草むしりのときとは違い、女っぽさが艶やか。


「マンション古くなったよ。外壁の色変わったし。結局、オレ、あそこの部屋買ったんだ」

「買ったの? 古いのに」

「大家に買ってくれって言われた」


助手席で美咲が笑う。


懐かしの405号室へ案内する。何年かぶりに、鍵を回すとき、406号室を見なかった。美咲がいるなら見る必要なんてない。


『おかえり、美咲』


「ぜんぜん違ーう。改築した?」

「もう2回改築した。ドアの高さ変えたら、頭ぶつけなくなった。構造上、無理なとこもあったけど」

「ふふふ。家でも涼介がよくぶつけてる」


2人てソファに埋もれて、DVDを見た。

DVDの中の涼介は、よちよち歩いたり、お遊戯会で踊ったり、運動会で女の子の声援を浴びながら走ったりしていた。


美咲はオレの胸にもたれたままはしゃいで。オレは美咲の鼻をつついて、髪を触って。


美咲の胸に手をやると「もうペタンコだよ」と言われた。


「変わるの?」

「涼介が吸ってなくなっちゃった。歳取ったし」


そーゆーもんなんだ。


「ベッド行こ」


結局我慢できず、美咲を寝室へ連れて行った。クイーンサイズのベッド。あの頃と同じ。


「あんまりにオバサンで、もう会いたくなくなるかもよ?」


この期に及んで(わず)かな抵抗を見せる美咲の口を唇で塞ぐ。


今でも綺麗なままじゃないか。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ