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君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


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31/33

「よ、お待たせ」

「いえ。ぜんぜん待ってないです」


近くのライブ会場と同じビルにあるレストランに入った。


「すっげー。大人の店」

「そーでもないって」

「でも、なんか、社会人ばっか」


値段的にも、ガキ相手じゃない店。別にコーヒーショップで京都土産を手渡してもよかった。でも、聞きたいことがある。


「メシ、つき合えよ。家にある?」

「大丈夫です。2食くらい食べられます」

「ははは。オレの若い頃と一緒」


自分で言っておいて、はっとする。ニアミス。


「こーゆーとこ、よく来るんですか?」

「ここは仕事の打ち合わせとか、上で友達がライブやったときに打ち上げで使ったかな」

「かっけー、業界って感じですね」

「かっけー? オレにしてみりゃ、涼介君のお祖父さんが利用してそうな料亭とかの方がかっけーけど」

「どーなんですかね。僕が知ってるのは、家にいる姿だけなんで」


涼介は学ランを脱いで背もたれにかける。

白いYシャツに日焼けした顔。こんなにも日焼けして、髪も少し明るくしてパーマかけてるのに、こいつ、チャラく見えないんだよなー。はっきり言って、モデルができるくらいカッコいい。


今日もピシッと背筋を伸ばし、水が運ばれてくると「ありがとう」とウエイトレスに軽く言う。好少年。


「ほい、土産。ありきたりだけど」

「ありがとうございますっ」


息子だと思うと、ただのファンとは違うことが気になってくる。

高校の志望動機なんて聞いてしまったり。


「この高校、モテるって聞いたんです。制服やバッグ見ただけで女の子がついてくるって」


なーんだ。オレと一緒じゃん。中学生のときに考えることなんて、男はみんな同じ?


「でもさ、入るのは結構大変だろ? 勉強頑張った?」

「そこそこ頑張りました。祖父や母には『ちっとも勉強しない』って言われてましたけど」

「はははは。お母さんは、本当に勉強家だったからなー」


ああ、またついニアミス。


「母のことをいつから知ってるんですか?」

「......あんまり言うと、怒られそうだけど。大学時代」

「一緒ですもんね、大学」

「知ってた?」

「はい。小笠原さんの出身校はウィキペディアに載ってました」

「あれ、何でも載ってるもんな」


ガーリックトースト、オレンジジュース、サイコロステーキ、サラダ、パスタ。テーブルはいっぱい。男2人だから次々と皿が空いていく。


話の方向が美咲に向いたところで、緊張が生まれる。

言おう。宣言するんだ。


「あのさ、涼介君」

「はい」

「その、涼介君のお母さんと」

「はい」

「つき合ってもいいかな?」

「もちろんですっ」

「いや、そんなに大きな声ださなくても」

「すみません」

「まだ、そんな、ただのメル友くらいで。あっちにそーゆーつもりはないかもしれない」

「母を幸せにしてください」

「寛大だな」

「どうしてですか?」

「母親って、自分にとっては"女"って生き物に思えない年頃だろ?」

「そんなことないです。小笠原さんの歌詞を見て、母が小笠原さんの曲を聴いてて、離れてるなんて不自然だと思いました」


オレが父親だって知っているからだろう。


「まあ、なるようにしかならないけど、な」

「週刊誌ネタになったりするんですか?」

「ならないならない。オレなんて名前知れてないし、ジジイだから。アイドルか俳優、著名人限定だから、あれ」


涼介はサイコロステーキを頬張りながら、嬉しそうに(うなず)いている。


「母って、ぜんぜん遊ばないんです。勤めてないからってのもあるけど、夜出歩くことなんて殆どなくて。家のことばっかりして、自分がやりたいことなんて、何もしてこなかったんじゃないかなって思って」


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