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君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


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30/33

こんな風に話してるだけで、楽しいけど、時間はどんどんなくなっていく。もうコップは空。


「出よう」

「うん」


人気のない平日の植物園。

そっと手を繋いでみた。

ぱっと振り払われる。


「私たち、オジサンとオバサンなんだよ」

「誰もいない」


指を絡ませる。逃げられないように力を込める。

人目なんか気にするなよ。

世間なんか気にするなよ。

どーでもいい、そんなん。


「あ、まだバラが咲いてると思う。秋のバラは10月ごろ咲くから」

「もう11月じゃん」

「結構長い間咲くの」


小学校のとき駆け回った植物園は、もっともっと広大だと思ってた。

鬱蒼とした木々が生い茂る小道に入る。


「確か、この道も向こうの方へ続いてるんだったよーな」


言いながら、狭い道で美咲との距離を縮める。


「歩きにくいよー。この道」

「なんでカカト高い靴履いてんの? 草むしりなのに?」

「車降りるときに履き替えたの」


ちょっと嬉しい。それって、オレを意識してるってこと?

誰もいない。


キス。


「びっくりしたー」

「ん?」


ニヤッと笑って美咲を見る。案の定赤い顔。

抱きよせる。

抱きしめる。


「いつ、オレの部屋来れる?」

「『会うだけ』って言ったのに」


説得力に欠ける。抱きしめられたまま言っちゃってさ。


「部屋で会うだけ」

「......」


ダメか。


「一緒に涼介君のビデオ見よ?」

「うん」


やった。


「いつ? あ、スケジュール帳、軽トラん中だ」

「私はいつでも大丈夫。お昼ご飯は義母に任せてるから」


ゆっくり体を離す。


「草むしり的な仕事は?」

「時間の融通は利くから、大丈夫」

「奥様のランチは?」

「そんなに毎日ランチしてないよー」


すっげー嬉しい。


「じゃ、スケジュール帳、車だから」


出口方面へ向きを変える、オレ。


「亮、バラ見ようよ」

「あ、忘れてた」


笑ってるし。

笑ってろよ。

それだけでオレが嬉しいんだ。


バラは、まあ、バラ。

興味ねー。


「義母がバラが好きなの」

「ああ、そーいや、朝飯ご馳走になってるとき、ソファでバラの本見てたっけ」

「玄関周りは和風だけど、裏の庭はバラがたくさんあるの。本当は洋館に住みたいんだって」

「ははは。あの家で、うまくやってるんだな。美咲」

「うん。恵まれてる」


噴水の横、バラの天井の下でキスした。

欲張りになる。キスじゃ足りない。時間は16時5分前。


「帰るか」

「うん」


2人で駐車場。スケジュール帳をにらむ。


「ぎっしり」


空いていない。やったら忙しい。CD発売前後ってこうなんだよなー。


「あらら。ヨーロッパツアーとか行くの」

「年明け。あー年末までは、土曜は全部ライブだなー。この辺りは平日も。あ、別のバンドのライブも入ってるし。ライブ用の編曲もしないとなー」

「すごいね」

「あ、午前中だったら、空いてるとこある」

「そーなの?」

「メンバー全員おっさんだから、でかいライブって結構きついんだよ。だから体力回復のために」

「ライブ会場が大きいところばっかり」

「午前中だったら、ここら辺とここら辺が東京にいるかな。何時から来れる?」

「10時くらいには家を出られるかな。1日くらいなら、もっと早くても大丈夫」

「逢える時間、全部逢いたい」


本当は一緒に暮らしたい。

軽トラから降ろしてもらった場所は、仕事仲間のオフィス前。京都土産を渡しつつ、軽く打ち合わせ。


時間を作って、涼介に会わないと。京都土産も渡したい。美咲に託けようとしたら、直接渡してと断られた。生八つ橋。


『京都土産を渡したいんだけど。会えますか?』


即、返事が返ってきた。


『嬉しいです! 部活は18時までです。片付けや移動も含め、19時半以降なら、どこでも大丈夫です!』


美咲よりも涼介との方が簡単に会えそうだ。高校生とつき合う方が楽なんだろーなー。涼介が息子で良かったよ。娘だったら、未成年との援交と思われて、犯罪者だったよなー。


涼介と待ち合わせたのなんて、渋谷のレンタルCD屋。なんて簡単に便利な場所で会えるんだ。


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