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君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


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3/33

いつもの店、いつもの席。ライブハウスのカウンター。

ライブをする空間とは少し離れた位置にあり、BGMとしてライブを聞きながら酒が飲めるようになっている。


「上手いな、今日のバンド」

「センスもいーし。商売敵になりそう?」


聴こえてくるのは、ジャズとロックの間くらいの音楽。ノリがいいせいか、若者のオーディエンスが多い。


「ちょっと被るかも。でも、大丈夫っしょ」


45歳のオヤジがいるオレのバンドもこの手のタイプ。

結構大人数。

バンドメンバー各々は、ジャズ好きが多い。

でもみんな、そこら辺は割り切って、好きなジャズは別のバンドでやってたりする。

まあ、ジャズってゆーのは、かなりのとこまで行かないと、食っていくのが難しいって世界。

オレ程度じゃ、とても儲けるメンバーまで上り詰めることは不可能だ。


「失礼ですが、小笠原亮さんですか?」


振り向けば、白い襟のストライプのシャツに紺のカーディガンを羽織った若者が立っていた。


「そうだけど」

「僕、ファンなんです」


大学生くらいに見える、いかにも育ちの良さそうなボンボンタイプ。

髪は茶色でくるくるして、顔は服装と不釣合いな日焼け、オレと同じくらい長身。


似てる。

驚きのあまり瞳孔が開いた。

目、鼻、口元、微笑んで少し首をかしげる仕草。


「座る?」


ガキに隣の席の椅子を勧めた。


「いいんですか? 失礼します」


ガキは物怖じもせず、嬉しそうに腰かけた。


「何がいい? バーボン?」

「い、いえ、そんな。未成年なんで」

「堅いことゆーなって」


ケンが横からちゃちゃを入れる。


「じゃ、ノンアルのものを」

「よっしゃ。いーねー、いーねー」


そのガキは、カウンター席で飲むのに、妙に姿勢が良くて、店の景色に違和感が生まれる。

でも、そんなことどーでもよくなるくらい話が盛り上がった。


「次のコンサートも行きます!」

「是非来てくれよ」


やっぱり似ている。


ガキはオレの左側に座った。

あいつも、いつもオレの左側にいたんだ。

長めのまつ毛が、薄暗い照明の中で陰影を深くする。

ああ、笑うとこんな風にきゅって唇の端が上がるんだ。


「会えるなんて思ってなかったから、感激です」

「そんな喜んでくれるなんて、嬉しいよ」


多少、カッコつけて紳士的に話す。

一応オレ達のバンドは、大人の男集団ってイメージだから。

ちょっと遊んでる風で、ちょっと女好きで。

こんなに有名になる前は、メンバー全員よくファンに手ぇ出してた。


「ライブのオープニングの曲、好きなんです」


笑って目が垂れると、マジ似てる。


「ありがと」

「これから踊るぞ!盛り上がるぞ!って思うんです」


笑いながら首を傾ける仕草、耳の形。

些細な動作で揺れて顔にかかる髪。

思わず体が動いていた。

カウンターに右手で頬杖をついたまま、ガキの髪を左手の人差指と中指で、すっと耳に。


オレ、何やってんだ?


思わずしてしまったオレの動作に引いたのかもいれない。


「じゃ、オレ、先帰るわ」


ケンは半分呆れて先に帰った。


「似てる」と思いながらも、変なことしないように気をつけて話した。

すっげーバンドや音楽のこと褒められて、オレのバンドが出した、20枚以上のCDを全部細かに感想言ってくれてさ。

もー、嬉しくて嬉しくて。

こんなに濃いファン、久しぶりで、酒が旨い旨い。

気分⤴⤴


「はははっはは。君はなんていーやつなんだ!」

「いえ、大好きなだけです」

「気に入った。ライブ永久フリーパスにしよう!」

「ええっ! 本当ですか?」

「ははははは」


バーボン(あお)る呷る。

で、潰れたらしい。

歳かな。

弱くなったよなー、酒。




朝目覚めたら、床の間のある八畳間だった。


「んー」


あれ?

えーっと。


原作では未成年が飲酒しております。まだ、そういった規制の緩い時代に書いたものです。

その部分を修正しましたので、かなり気に入っていた部分、

「で、潰れたらしい。

 ガキじゃなくて、オレが」

を変更しました。


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