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君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


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28/33

位置情報から一番近い駅で降り、タクシーでスマホの地図を見せた。


「あの、ココへ行ってほしいんですけど」

「はい。えーっと。分かりました」


8分ほどで、タクシーは木々が生い茂る坂道に差し掛かる。

あ、写真の白い自治体指定のビニール袋の山!


「ここです。ここでお願いします」


オレはタクシーから降りた。

どこ? ここ。もし美咲に会えなかったら、オレ、帰れないかも。

民家はあっても人が出歩いていない。

辺りを見渡す。


ん? まさか、あれ?

しゃがみこんで、鎌を片手に草むしりをしている人がいる。

季節外れの実用的な麦わら帽子。首にタオル。青いダンガリーシャツ。軍手。


そっと近寄ってみる。タオルと帽子で顔が見えにくい。

あ、やっぱり美咲だ。荷物と楽器ケースを脇に置いて、でかいビニール袋に、刈り取ってそのままになっている草を入れていく。


「あ、ありがとうござい、まっ! きゃ~」


オレに気づいた美咲は、とっさに身を縮めてタオルで顔を隠す。


「きゃ~ってなんだよ。きゃ~って」

「こんにちは。どーしたの? こんなところへ」


美咲はタオルで顔を隠したまま話す。

1週間ぶりに会えたのに、どーよ。このつれなさ。


「京都から戻った。途中、名古屋のテレビ局寄ったけど」

「おつかれさま」


きゅん


うっわー。妻帯者って、こんな言葉いつも言われてるんだろーなー。


「ただいま」


へへ。言ってみたかったんだ。


「なんで抜き打ちで来るの?」


へ?


「『抜き打ち』って何だよ。『抜き打ち』って」


逢いたくて逢いたくて飛んできたのに。


「誰にも会えない恰好してるの。お化粧も近場バージョンなの」

「そんなん今更。オレの前ではスッピンだったじゃん?」

「何年前の話? 20代と今は、お肌が違うの」

「いーから、顔見せて」

「だって、亮は、業界の毛穴のない人たち見てるんでしょ?」


は?


「毛穴がない?」

「テレビの人達って、毛穴ないもん」

「もー、いーから、そんなん」


美咲のタオルをひったくる。

あ、ほっぺたと額に泥付いてる。はは。

ひったくったタオルで泥を拭いてやった。


「軍手で汗拭いたろ?」

「うん」

「草むしり、まだかかる?」

「ううん。もういい。もう腰が限界。続きは明日にする」

「お茶でも飲まない?」

「そーする」


美咲は鎌を片手に立ち上がって伸びをした。

さっきまで男か女かも年齢も分からなかったけれど、デニムに包まれた脚は長くて、背が高くて、やっぱりスタイルがいい。(歳の割には)


ビニール袋の口を閉じ、軽トラに近づいていく美咲。

あれに乗ってるわけね。

お邪魔した広いお屋敷のいたいどこに軽トラがあったんだろう。想像しにくい。


「待っててね」


軽トラをビニール袋の山の所まで移動させる。

たぶん、この草がいっぱい入ったビニール袋の山を積むんだろうなー。

オレは、ぽんぽんと軽トラにビニール袋を積んでいく。


「ありがとー。意外と重いから助かるー」


ビニール袋を積み終えると、オレは軽トラの助手席に。

顔がちょい濃いめのガテン系だから、オレ、軽トラ、似合うんだよなー。


「ちょっと向こう向いてて」

「なんで?」

「お化粧直す」

「はい」


素直に待つ、オレ。

な~んかな。

感動の再会とまでは行かなくても、もうちょっと、こう、しっとりした大人なさ、あるじゃん。


「お待たせ」


化粧直しが終わったらしい。


くるっ


帽子被ってない。セミロングの緩いカーブの髪。タオルもない。ダンガリーじゃなくて、白のブラウスと白のカーディガン。


「着替えもしたの?」


「ううん。カーディガンに変えただけ。帰りに買い物に行くつもりだったから」

「別にさっきのカッコでよかったのに。っぷ」


つい吹き出してしまった。


ギロッ


「ごめんなさい」


睨まれちまったから、すぐ謝る、オレ。

がたがた揺れながら軽トラが進む。


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