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君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


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27/33

ずるずるラーメンをすすりながら、徳さんが話し出す。


「小さな男の子抱えてたよ。オレが行ったのは、東京のでかい家でさ。そこで暮らすって言ってた。黙っててごめんな。亮」

「いえ。ありがとうございます」

「でさ、亮は『会ってない』って思ってるかもしれないけど、美咲ちゃんは会いに来たんだ。亮が病院運ばれたとき」

「え?」


あいつが?

結婚して10日目に?


「ケンが連絡したんだよ」

「ケンが?」

「いつも完璧な、あの美咲ちゃんが化粧もしないで、病院にタクシー乗り付けて。オレ、廊下で『二度と亮の前に現れるな』って怒鳴ってさ。そしたら美咲ちゃんが泣くんだよ。『顔見たら帰るから』って。『亮の意識が戻る前に帰るから』って。『ごめんなさい。ごめんなさい』って」

「……」


箸が止まってしまう。

コップの水を一口飲んだ。


「オレ、ケンを連れてタバコ吸いに行ったから、その時、病室に入ったと思う」

「そんなことがあったんですね」

「悪かったな。黙ってて」

「いえ」

「ラーメン伸びるぞ」

「はい」


なんだよケン。そんなこと、18年も隠してたんだ。日本にずっといたんなら、美咲の旦那が亡くなったことも知ってただろうに。隠し事、苦手じゃねーじゃん。


「お線香あげに行ったときさ、"殺したい女"の自主制作の方のCD、渡した。本当に亮が作ったのは、あっちだったから」


徳さんだったのか。


「ありがとうございます」

「ガキ、大きくなったか?」

「ああ、はい......って、え?」


まさか美咲が、徳さんに涼介がオレの子だって話した? いや、あり得ない!


「お前そっくりだったよ」

「え?」

「甘えん坊でさ、べたべたべたべた美咲ちゃんの髪触って。やったら人懐っこくて、みんなに可愛がられて」


んーっと。オレは、ダンディで大人の男のハズ。


「徳さんから見たオレって、そーゆー印象ですかぁ?」

「はははは。まんまだって」

「今、17歳です。背格好とかオレに似てて。顔は美咲に似てるんですけど」

「背格好か。180ぜんぜん超えてるんだ?」

「はい」

「間違いねーな」


ラーメンを食べ終わって店を出るとき、「マコちゃん」と呼び止められる徳さん。


「ん?」

「良かったら、泊まってって。すぐ店終わるから」


あらら~。大人のお誘い。


「じゃ、オレ、失礼します。ご馳走様でした」


そそくさとその場から逃げようとする、オレ。


「待て! 亮」

「おやすみなさい」

「待てって。あ、じゃ。ごちそーさん。旨かった」

「マコちゃんっ」

「また来るから」


徳さんは隅に置けない。「また来る」なんて言ったら、この女性(ひと)、ずっと待ってそう。


「はーっ。相変わらずモテますね。所構わず」

「うるせー。亮の方がモテるくせに」


徳さんが女にモテるのは当然だ。オレだって女だったら、そこら辺の見た目がいい男なんかより、ずっと徳さんの方がいい。


「徳さん、結婚しないんですか?」

「オレ? しない。亮は結婚すんの?」

「断られました」

「美咲ちゃんは、怖い女だよなー。オレ、やっぱ、女はちょっとバカでいーや。美咲ちゃんがバカな女だったら、手放しで結婚喜ぶよな?」

「どーかなー。徳さんは今、誰もいないんですか?」

「ま、オレのことはいーって」


またいつものようにはぐらかされる。



大学祭のステージはテレビ中継も来たほど。

相当宣伝になった。

めでたしめでたし。


美咲に会えなかった。約1週間。たかが1週間。

でも、また会えなくなるんじゃないかって不安になるくらいの焦燥感。


新幹線の中でメッセージを入れる。「今どこ?」

手にはスマホを握りしめたまま。


「どーしたんですか?」

「何? グラビア男」

「グラビア男じゃありません」

「シーツ男」

「あーっもう。誰かからの連絡待ち?」


前の座席から頭を出して覗き込んでくる。


「いーから座れ」


35歳とか38歳って、こんなにも子供っぽいんだっけ? ノリが高校生じゃん。


東京駅で解散。

ちょっとほっとする。あ、シーツ男と目ぇ合っちまった。くっそ。意味深に微笑みやがって。


手元のスマホが着信を告げる。

あれ? 写真。

写真には、白い自治体指定のゴミ袋が積みあがっている。


『草むしり中』


写真から位置情報で、美咲がいる場所を突き止める。


「行くか」


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