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君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


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26/33

盛り上がる盛り上がる。

オレはこっそり抜け出して、スマホで美咲にメッセージを送る。内容なんてない。

部屋に戻ると、一斉にみんながこっちを見る。


「何?」

「最近、よくメールしてね? 亮」

「機嫌いーし」

「ちょいちょいスマホ見て、ニヤニヤしてますよね?」

「女?」

「別に」


気をつけよう。

夜が更けてくると、大人数でいっしょくたに騒いでいたのが、2、3人ずつに分かれてくる。

 

オレはトロンボーンの徳さんとラーメンを食べに出た。

徳さん、オレの命の恩人。


「昔の友達がやってるイタ飯屋があってさ」


あれ? ラーメン食いに来たんじゃねーの?なんて思いながら、徳さんに続いて店に入る。時間のせいか、店内にはぱらぱらと男女の客がいるだけ。徳さんはカウンター席に。


「あ、マコちゃん」


オレがカウンター席に腰かけるとき、恐れ多くも髭面男の徳さんを「ちゃん」付けで呼んでしまう声。ぎょっとしてしまう。


「来るなら連絡くれればいーのに」


カウンターの中から、徳さんを「マコちゃん」と呼んだ女性が声をかける。


「よっ。ラーメン2つ。オレはチャーシュー抜きで」

「初めまして。お願いします」


昔の女かな?なんて勘繰(かんぐ)りながら、ラーメンを待つ。


「タバコ吸いてー」


徳さんの言葉に、さっきの女性がハイライトの箱をすっとカウンターに置く。徳さんが吸うのはハイライト。


「いーの?」

「どーぞ。マコちゃん」

「マコちゃん、ゆーな」


ははは。徳さんの名前はマコトだからだろう。


「吸いすぎないでね」

「けち」

「喉は商売道具でしょ?」


会話の掛け合いが親しさを(かも)し出す。


「じゃ、せっかく美人がくれたから、ラーメンの後にもう1本」

「ダメ。体も大事にして」

「......はい」


なんかいーな。こーゆー感じ。


「相変わらずモテますね、徳さん」


徳さんの耳元で囁く。


「ここのラーメン、アサリだしで旨いんだ」


なんて思いっきりごまかす徳さん。


徳さんは背が高いわけでも、イケメンでもない。だけど、妙に男の色気がダダ漏れている。で、やたらモテる。タバコの煙をくゆらせる姿が絵になる。腹筋なんてないだろうし、目なんて笑うと線になるのに。


「亮、女できたって?」


徳さんには嘘はつけない。オレの命の恩人だから。


「ええ、まあ」

「おめでと。何年ぶり?」

「えーっと、前いつだっけ?」


最後って、そういえば誰だったっけ? スタイリストだったっけ? ゲストボーカルに手ぇ出したのが最後? ビール会社の広報?


「オレに聞いて分かるかっ。知らん」

「たしか、ビールのCMに起用されたときだったと思うんだけど」

「じゃ、7、8年前じゃん。すっげーな」

「すっげーって、そんなに空いたことがですか?」

「ははははは。よっぽどいい女なんだろな」

「美咲です」

「......そーか」

「徳さんには、怒られるかと思いました」

「怒っても、無理だろ。こればっかりは」

「バッタリ会ったんですよ。あの時から本当に会ってなかったんですけど」

「あいつ、結婚して数年で旦那に死に別れてて」

「ああ。知ってる」

「え?」


自分の傍に灰皿を引き寄せる徳さん。


「オレ、お線香だけあげに行ったんだ」

「知ってたんですか?」

「現職の議員が亡くなったって、ニュースで流れてたから」

「オレ、なんで知らなかったんだろ?」

「東南アジアツアーに行ってたから。タイにいたとき。で、オレは二日酔いで日本のテレビ観てたんだよ。お前らは、潜りに行ってた」

「そっか」


これも巡り合わせってやつだろう。


「オレさあ、亮。美咲ちゃんに、結構酷いこと言ったんだよ。それも気になってたから、葬式終わってたけど、お線香あげに行ってきたんだ」

「そうだったんですか」


トン

トン


「どーぞ」


カウンターの上に、ラーメンの器が置かれる。

旨そうな匂い。


「冷めないうちに食おーぜ」

「いただきます」

「どーぞ」


徳さんを「マコちゃん」と呼んだ女性はニコニコ。


「旨。アサリだし効いてる」

「だろ?」


読んでくださってありがとうございます。

10年以上前に書いたもので、当時の喫煙への緩さが出ております。結婚観も全く違います。

「魔法のiらんど」に掲載したものです。サイトの流行りと自分の文章力のなさにより、際立たせたい言葉や間を、改行で視覚的に表現している部分が多々ありました。めっちゃ改行を減らしました。

時代の流れを感じました。

summer_afternoonとは誰も知らせず、世界の片隅で今日も物語を綴っております。

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