表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/33

「どうしたの? 一人で笑って」


助手席からオレの顔を覗き込む美咲。


「思い出し笑い。またさ、2人で魚さばいたりしたいなって思ってさ」

「これでも主婦歴18年だから、魚なんて普通にさばけるよ?」

「イカとかも?」

「主婦だもん」


そうだよな。あの家で、家族4人分のメシ作ってるんだもんな。

オレの日々の生活も支えて欲しいって思うのは、贅沢......かな?


「仕事してねーの?」

「家の雑用。大家さんだから。勤めてはいないよ」

「なんか勿体ないな。資格があって仕事もできるのにさ」

「そんなことないよ。意外に楽しいの。やってきたことは役に立ってるし。亮たちは、勉強したこととはぜんぜん違う道に進んだね」

「ああ、そうだよな。バンドのメンバー、みんなこの辺のふらふらしてた大学生だったもんなー。音大卒は、やっぱ、クラッシック方面目指すんだろーなー」

「ふふふ。みんな変わってないよね。古くからバンドにいる人も、亮の周りの人も」

「変わんねー。大学でやったことは関係ねーかもしれないけどさ、あの頃の感性の蓄えで、今がある気ぃする」

「そーなの?」

「何をカッコいいって思うかとか、その程度のことだけど。音楽をどっぷり聴くのって、やっぱ10代だからさー」

「そーだね。思春期?」

「特別な時期なんだよ。そー思う」

「涼介は真っ只中だね」

「いい子に育ててくれて、ありがとうな」

「亮の子だもん。どこまでも真っ直ぐだよ」


はは。オレの音へのこだわりも、美咲への固執さえも、「真っ直ぐ」って言ってくれるんだな。


「涼介君のさ、成長の記録とかって、あんの?」

「あるよー。たった1人の孫だもん。ビデオも写真もすごいことになってるよ」

「見たいなー」

「ホント?♪」


美咲の声が弾む。

思わず笑みが零れる。


「少しずつでいいから、貸して?」

「今度渡すね」


今度があるんだ。

今度という言葉を噛みしめながら、涼介のいろんな話を聞いた。

小学校時代にピンポンダッシュをした話から、中学時代に「学校1草食系」と女子に言われて落ち込んだことまで。

少しでも一緒にいたくて、遠回りしてみた。こんな時ほど渋滞がない。


「次、いつ会える?」

「私はいつでも大丈夫。夕ご飯の支度に間に合えば」


⤵⤵

主婦とつき合うって、思った以上に大変かも。


「時間帯が難しいな。はははは。連絡する」


大学祭ライブ、新しいCDの発売の宣伝、音楽番組の出演、ゲリラライブ。オレはその準備に追われ、依頼されていた編曲もこなす。


CD発売の時は、広報活動のために雑誌の取材が増える。ダンディな男としてメンバーの誰かがファッション雑誌にも載る。

新たな作詞作曲依頼、海賊版の対処、ネットのチェック。

忙殺。


「頼むって、スーツ着て写真撮ってきてくれよ」


オレは、バンドメンバーの若手2人にお願いする。若手って言っても、35歳と38歳。


「亮さん指名だったじゃないですか」

「いいって。オレはもう。毎年のように出てるから」

「オレ、あの女性向けの雑誌、恥ずかしいんです」

「いーから、行け!」

「「はい」」


メジャー雑誌の対談は、オレ。音楽専門誌の対談は、このバンドのカリスマギタリスト。


「「終わりました~。は~」」


女性向けファッション雑誌の写真撮影に行ってきたメンバーが疲れている。


「どうした?」

「ダンディを出すのが恥ずかしくて」

「ジャケットを脱ぐとか、シャツのボタンを全部外すとか」

「は? 全部外す?」


遊ばれてやがる。


大学祭は、関西の大学2校からも依頼があった。

泊まり。宿泊は、鴨川近くのホテル。いい大人の男がホテルの1室に集って飲む。いつも思う。高校時代に友達の家に集まって泊まったときと一緒。


「おー、お前らが載った雑誌、もう出てるじゃん」


女性向けファッション雑誌をみんなで眺める。


「「「「「「おおおーーー!」」」」」」


ボタンを外して腹筋をチラ見させているくせに、ジャケットを羽織ってる。帽子は目深。もう1人は、シーツを纏ってタバコ。


「すげーな。お前ら」


半ば感心、半ば呆れてポツリ。


「亮さんは、こーゆーこと言われなかったんですか?」

「オレ、ビール腹だから脱げませんって断ったもん」

「「ええー。断っていいんだ」」

「オレら、アイドルじゃなくって、ただのオヤジのミュージシャンだから」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ