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君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


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23/33

「ヨーロッパツアーや東南アジアツアー、もちろん、日本中も。CDをコンスタントに発表して、合間にジャズライブ。バンドのマネジメントと他のアーティストへの作詞作曲編曲プロヂューサー」

「改めて言われると、オレってすげーな。いつ寝てるんだろ」

「ホントに凄いご活躍で。何よりです」

「あの曲が売れたからだよ」

「そっか」


"殺したい女"。


「だから、美咲には感謝しないとな」

「皮肉?」

「本当に。涼介君を産んでくれて、ありがとな」


急に喉の奥が熱くなった。


「私も。亮の子供。ありがとう」


車内を包む空気が柔らかくなる。美咲が隣にいるだけで、どうしてこんなに温かい気持ちになるんだろう。


「今さ、独りなんだろ?」

「うん」

「彼氏いる?」

「は? 何言っちゃってんの?」

「また、1から始めない?」

「ちょっ。一応、二階堂家の嫁なんだけど」

「知ってるよ。だけど。今のオレは、ちゃんとしてるだろ? 結婚相手としては、合格だろ?」

「はああ?! 結婚?」

「だって、それしかないだろ。この歳でつき合うとしたら」

「......」

「この間言われたよ。『美咲さんと涼介を連れて行ってくれ』って」

「お義父さんがそんなことを?」

「結婚しよ?」

「できない」

「なんで」

「無理だよ。


だって、涼介がいなくなったら、二階堂の家は途絶えるんだよ?」


「もうそんなことはいいって言ってたよ」

「不貞の嫁と知ってたのに......

 義父は、涼介とキャッチボールをしてくれたの。自転車のコーチも。あんなに忙しい人だったのに。義母は、私に怒られて泣いてる涼介をフォローしてくれたの。本当に優しい人で、いつも涼介や私が寂しくないようにしてくれて。私、あの2人じゃなかったら、涼介をちゃんと育てられなかったと思う」

「そっか。

 じゃあ、

 涼介君が大きくなったら、オレんとこ来る?」

「私、義父と義母のお世話をちゃんとする。これだけお世話になったんだもん。これからどんどん歳を取って大変になると思うの」

「この歳になると、感情だけじゃダメか」

「……」


感情は聞いた。「好きな人の子」って。


「なあ、キスしていい?」


美咲の瞳がオレを向く。

キス。

キスは長く続かなかった。他の車が駐車場に入ってくる音で中断された。


「はー」


ハンドルに顎を乗せる。


「亮、仕事は大丈夫?」

「今日は銀行振り込みや荷物のチェックみたいな、時間指定のない仕事ばっかだから大丈夫」

「そう」

「オレの部屋来る?」

「は?」


美咲がばさっとサンドイッチを膝に落とす。


「405号室。ずっと住んでるんだ」

「えーっと」


キス。

助手席に身を乗り出して抱きしめた。会った瞬間から、抱きしめたかったんだ。


「好きなんだ。やっぱり。忘れられなかったってのもある。でも、今日会って、やっぱり、好きだなーって」


しばらくして、ゆっくり離れると、美咲の目は潤んでた。


「私も」

「車出すから」

「下りる」

「え?」


今、まさにこれから、って感じじゃねーの? お互い「好き」って。


「えーっと。私、もうおばさんなの。亮はさ、あーゆー世界で、綺麗な人ばっかり見てるでしょ?あのバンドで、亮は女好きで通ってたし」

「それはセールスのため。ビジネスだよ」


あー、なんかこのノリ。初めて美咲をアパートに送って行ったときに似てるよなー。


「私、涼介がいればいーの。お義父さんとは、ちゃんと話しておく。じゃね」


えっ


「ちょっ」


バタン


美咲は助手席のドアを開けて外に出た。

急いで追いかける。


「待てって!」


スタスタと歩いて行ってしまう。

大の大人が走るって、意外と恥ずかしいけどさ、走ったよ。

つーか、そんなヒールでよく速く歩けるよな。


「美咲っ」


捕まえた。


「なに。今まで通り、古い知り合いでいーじゃない」

「オレはよくない」


美咲は困った顔をする。


「なんかさ、亮、幻想抱いてない? 会ってなかった間に美化しちゃったとか。私、相当ひどいことしたよね?」


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