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君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


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22/33


ちょっと景色は悪い。

目の前は一般住宅の壁。高さ80センチくらいの駐車場のフェンスにはローンの広告がある。


単刀直入に。


「涼介君って、オレの子?」

「たぶん。どうして分かったの? あの子に誕生日を聞いたの?」


え? 知らないのか?


「涼介君のお祖父さんに言われた」

「え!」


目の前の美咲が一瞬で青ざめる。

固まったまま。


「聞いてないのか? DNA鑑定のこと」

「知らない!」


かなりのショックだったようだ。


「写真のことは?」

「何? それ」


血の気を失ったまま、サンドイッチを持つ手の力が抜けて、具が落ちそうになっている。


「結婚前にオレと会っていた写真を何枚も見せられた。この間、お詫びに行ったとき。丁度、他に家の人はいなくて2人だったんだ」

「ああ。あの日? 来ることは聞いてたけど」

「結婚式の前日のジープの写真もあった」

「っ」

「で、お祖父さんは息子と孫に内緒でDNA鑑定をしたって。結果は不一致。『たぶん小笠原さんの子だ』って言われたよ」

「......そう。DNA鑑定を。じゃあ、やっぱり涼介は......」

「やっぱりって。分かってたの?」

「亮の子だったらいいなって思いながら産んだの」


耳を疑った。


「な、んで」

「だって、好きな人の子供が欲しいもん」


こうもサラッと「好き」なんて言われると調子が狂う。


「だったら、どうして他の男と結婚なんかしたんだよ」

「言ったじゃない。亮のお隣さんは疲れたの。それに、亮の子は欲しくても、亮と育てたくなかったから」

「どーゆーこと?!」

「そのまんま。

 子供って、父親の背中を見て育つんだよ?」


凹ませてくれる。


「そっか」


ぐうの音も出ない。


「知ってたんだ。お義父さん」

「涼介君のお祖父さんは謝ってたよ。『美咲さんの女としての人生を奪った』って」

「そんなことを」

「涼介君が目につきそうなところに、写真を置いておいたって。ご主人が生きてるときは、貸金庫に保管してたらしいけど」

「じゃ、涼介も知ってるの?」

「たぶん」

「涼介まで。母親がこんな女って知って、どう思ったんだろ。怖くて聞けない」

「受け入れてるよ。オレと美咲を会わせようとしたくらい。『母は自分の人生を生きてもいいと思う』って言ってた」

「私の人生......か」

「オレが酔い潰れて泊まったじゃん? 涼介君は、オレと美咲を会わせようとして、オレに近づいてバーボンに薬入れたってさ」

「ちょっと! あの子、犯罪じゃない」

「まあまあ。で、どーする?」

「どーするって?」

「涼介君に父親宣言していい?」


あんなかわいい息子ができるなんて。


「ダメ」

「なんで」

「二階堂の子供として育てたから」

「本人はもう知ってるのに?」

「二階堂の父や祖父を尊敬して育ったの。信念を持って政治をした2人のことを、小さな頃からずっと話して聞かせたの。人の2倍仕事して、献身的で、驕ることもなく、相手を尊敬する」


ああ、オレなんて若造に、あのジイ様は頭を下げたんだ。


「そっか。そんな立派な人だったんだ。旦那も」

「うん。結婚してから分かった」

「良かったよ。いい人で」


この失恋は痛いな。ちょっと立ち直るのが難しいかもしれない。


「『私の人生』なんて。旦那に死なれて可哀想と思われてるのかなー。ぜんぜん違うのにね。好きな人の子供に最高の環境を用意して。父親が亡くなったことは誤算だったけど、素晴らしい環境ってことは間違いないの。それ以上の『女としての人生』ってある?」

「1人じゃ寂しいだろ。息子はずっと傍にいるわけじゃない。人生は長い」


別に寂しさにつけこもうとは思わない。

自分の気持ちは、寂しさの埋め合わせどころか、心が躍ってるんだから。


「亮、変わったね」

「え?」

「人の2倍以上働いてるよね」

「そこまでは。しがないミュージシャンだよ」


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