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君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


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20/33

美咲に会うといっても、連絡手段がない。

いくらオレが父親かもしれないと知っているとはいえ、涼介に「お母さんに会わせてくれ」と頼むのは変じゃないか。かと言って、ジイ様から話を聞いた以上、男としてほおっておくわけには行かない。

結局、涼介に自宅の電話番号を聞いた。

聞いたものの、電話を掛ける勇気がなくて、仕事の忙しさを理由に、そのままになっていた。


そんなある朝、涼介と横浜へドライブして丁度1週間目。


「亮ちゃん」


1週間前と同じように、朝、ケンがマンションの玄関のチャイムを鳴らした。


「おう。ブドウ美味しかったよー。ご馳走様」

「食った?」

「で、今日は?」

「お迎え」

「は? 何の?」

「スタジオ見学」

「なんで?」

「いーからいーから」

「なんだよ。オレ、編曲頼まれてるんだよ」

「納期いつ?」

「来週末

「じゃ大丈夫」


どうせ新しいセッション仲間とか、そーゆー話だろう。

スエット生地の短パンの上はくたびれたTシャツ。その上にパーカーを羽織ってサンダルを引っかける。


「亮ちゃん、もうちょいカッコよく」

「は? どーせバンド関係だろ?」

「いや、ファン?もいるからさ」

「なんだよ、そのファン?って」

「ステージ用のスーツとまでは言わないから、レストランくらいは行けるカッコして」

「んだよ。ケンだって大したカッコしてねーのに」


ぶつぶつ言いながら、マシな恰好に着替え。


大事な顧客に繋がるって可能性も考えて、ジャケットを羽織る。名刺も用意。書類を読むための老眼鏡も準備OK。楽器ケースを持つ。


「あ、サックスはどっちでもいーや」


は?


「ファンじゃねーの?」

「持ってきてください」


な~んか企んでいる。ケンは本当に隠し事が下手。

ま、いっか。


マンションの1階に下りると、車を出せとまで言う。

いつもはケンが車に乗ってやってくるのに。


「自分の車、どーしたんだよ」

「あ、えーっと、奥さんが使うって」


あ、嘘だ。すぐ分かる。


ケンの道案内で到着したのは、ケンが持つスタジオの1つ。

スタジオの他に控室があって、そこには講義の様子を映すモニターがある。


「先週さ、わがままなおばさんがいるって言ったの覚えてない?」

「あー。そーいえば。ごめん、今思い出した」


この1週間、それどころじゃなかった。


「見てみ」


ケンが指さすモニターに5人の生徒が映し出されている。

一瞬でわかった。


「美......咲......」

「ぜんぜん変わってないな。そりゃあ、歳はくってるけどさ。もう、さ、今なら、話くらい普通にできるだろ? あ、別に、向こうからこっちは見えてないからさ、亮ちゃんが会いたくないなら」

「何時まで?」

「え?」

「レッスン」

「12時に終わる」

「12時か……」


左手で顔をこする。オレが考えているときの癖。


「あ、えーっと、オレ、余計なこと、した?」

「いや。感謝。会わなきゃならなかった」

「なんで今更?」

「この間のガキ覚えてる?」

「ガキって、ああ、あの、手ぇ出したのと間違えた」


失礼な。仮にもオレの息子かもしれないのに。


「あいつ、涼介ってゆーんだけど、美咲の息子」

「え? そーなの?!」

「で、涼介はオレの息子かもしれない」

「......亮ちゃん......」

「だから、会わなくちゃならなかった」

「え? でも、すっげー家に嫁いだんだろ?」

「旦那、涼介が2歳のときに亡くなったってさ」

「そうだったんだ。だったら、実家に帰ってたのか」

「いや。向こうの実家にいる」

「向こうって、旦那?」

「うん」

「そっか。難しいんだろうな。大きい家はいろいろ」

「もの凄い偶然だな。ケンのこと覚えてた?」


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