表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君は我がすべてーーーAll The Things You Areーーー  作者: summer_afternoon


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/33

「そっかー。あの年代の人まで聴いてくれてるんだ。それは嬉しい。今度チケットを家族分渡すよ」


建物から出てぶらぶら歩く。


「やっぱりミュージシャンは会社員とは違うじゃないですか。平日のこんな時間に」

「今日はたまたまだって。いつもだったら、この時間は曲作ったりしてるから」

「あ、僕が邪魔したんですね?」

「とんでもない。オレこそ学校サボらせてさ」

「それは自主的にサボってるんで」

「ははは。全然変わったなー。街ができるってわかってたけどさ」

「そーゆー歌詞ですもんね」

「街も人も変わるって」


オレも変わったのか?


「人って変わるんですかね?」

「どーなんだろな。本質は変わらないと思うけど」


今、美咲に会ったら殺したいのか?


「本質ってなんなんでしょうね?って真面目かっ」

「はは。涼介君だったら、そーゆー何事においても誠実なところ?」

「ぜんぜんですよ。僕、昨夜、小笠原さんの飲み物に薬入れましたもん」


ん? このガキ、今何て言った?


「え?」

「僕、あの店に小笠原さんがよく来るって知って、張り込んでました」

「危ないファンってこと」


自分の顔が険しくなっていくのが分かる。


「すみません。バーボンに眠くなる風邪薬を入れました」

「すみませんって......」


怒りと呆れが混ざる。


「どうしても会ってみたかったんです」

「じゃ、薬を入れる必要はないだろ?」

「母と逢わせたかったんです」

「コアなファンだからか?」

「ええ。まあ」


涼介は視線をそらす。

大人の対応だ! 大人の。狂信的なファンを宥めるんだ。


「まあ、取り敢えず展望台でも行くか?」


オレだってさ、伊達に45歳になっちゃあいない。

展望台のチケットを購入し、エレベーターに乗った。


「あの、展望台のチケット代......」


しおらしく気にする涼介。


「おごり」

「ありがとうございます」


展望台で富士山を探す。


「おー見えてる。らっきー」

「あれですか」

「で?」

「はい」

「だめだろ、そーゆーことしちゃ」


涼介の頭をゲンコツでぽこっと叩くジェスチャー。


「すみません」

「そんなにファンなら、今度、昨日のお礼に行ったときにちゃんと会うから。オレだって、熱心なファンは嬉しいから」

「母はまた逃げると思います」

「逃げるって?」

「今朝、犬の散歩に行ってしまって」

「よくあるよ。美容院へ行って、オシャレしてから会いたいってファン心理。つーか女心」

「母はいつも綺麗です」


なんだなんだ、このマザコン。


「君ねー」

「母は、二階堂美咲です」



「ちょっ、え?」

「父は他界しました。だから今は」

「何をどこまで知ってる」

「たぶん、母が小笠原さんの殺したかった女だって」

「お母さんが君に言ったのか?」

「いいえ。母が大学時代の友達と話してたのを聞きました」

「お母さんから直接聞いたわけじゃないんだろ?」

「でも、小笠原さん、会ったとき、僕の顔見てびっくりしてたじゃないですか。やっぱりって確信しました。僕、母にそっくりですよね」

「ただの知り合いだよ」

「ただの知り合いなのに、髪を触るんですか?」

「え......」

「昨日、何度も僕の髪を触ってました。運んでるとき『美咲』ってうわ言で言ってました。母は、タクシーから小笠原さんを降ろしたとき、もの凄く驚いてて。『困った人』って」


全身が固まった。顔はばっと熱くなった。きっと真っ赤だ。


「参ったな......」


でかい左手を顔に擦り付けた。


「父が亡くなったのは、僕が2歳の時です。でも母は実家に帰らずに、父方の祖父母の家に住んだんです」


そりゃあ金銭面を考えてだろ? 二階堂家だ。


「まあ、大人の事情があったんだろう」

「僕も高校生になったし、母は自分の人生を生きてもいいかなって思うんです。結婚したのに、祖父母の世話をしているだけなんて」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ