作戦その① ヒイロの気持ち
翌日、朝食も済んだあとにクラナはヒイロとアミカそれぞれに手紙を書いた。
うちに来るか、あちらに向かうかは2人の返事で決めることにしたから。
2日後、2人からそれぞれ返事がきた。
ヒイロからは、
”クラナ、お手紙ありがとう。
僕はいつも通り変わりなく過ごしているよ。
他国のお菓子を作るだって?!いったいどんなお菓子なのかワクワクするし、僕も一緒に作らないか?なんて、是非参加したいよ!
僕の今月のスケジュールだと、今週末と来週いっぱいは予定が空いてるから、その間ならいつでも行けるよ~
クラナの都合の良い日を教えてくれたら、その日に決めてしまっていいからね。
では、返事待ってるね。
ヒイロ・サマントス”
ふふ、やっぱり興味が湧いたみたい♪
良かったぁ~~
さてと、次はアミカから~
カサカサッ
アミカから、
”こんにちは、クラナお手紙ありがとう!
嬉しいわ♪
女子会ですって!?それは噂はチラッと聞いたことがあったけれど、私も良くは知らなかったからとても楽しみだわ。
是非参加させてもらうわ~
当日はこちらからもお菓子を持参させてもらうわね♪
またクラナに会えることを楽しみにしているわ。
私の空いてる予定は、来週までは予定が埋まっているから再来週になっちゃうけどいいかしら?
再来週はまるっと空いてるからいつでもいいわよ♪
またお返事待ってるわ!”
ふむむ、アミカは再来週がいいのね~そしたらちょうどいいから、ヒイロの1週間後にしようかな♪
2人への予定日を伝える手紙を書く。
なんだかこんなこと初めてで、とっても楽しみ♪
さっそく、その日の夕食時に家族にヒイロとアミカからの手紙の内容を伝えて、都合の良い日を決めた。
その日から、ヒイロを迎えるまでの間、料理長とも相談しつつ他国のお菓子のオススメを聞いたり、手伝ってもらえる料理人の選定、時間帯なども考えた。
なんとか順調だ♪
忙しくしている間にヒイロの来る日になった。
朝から楽しみでどこか落ち着かない(笑)
「お嬢様、サマントス伯爵子息様が到着されました」
執事からの報告に歓喜する。
「いらっしゃい、ヒイロ!」
「クラナ~お誘いありがとう!今日はよろしくね」
「うん、こちらこそよろしくね~」
挨拶して笑い合う。
その姿を使用人たちも温かく見守る。
内心では「お嬢様、頑張れ!」という気持ちを唱えながら。
早速、
「着いてすぐなんだけど、もう準備が出来ているから厨房へ行きましょう~、はいコレ、ヒイロのエプロンよ」
手渡すと、素早くヒイロの執事が着させてくれている。
私は普段から自分で着る派なの。
厨房へ着くと、一緒に作業してくれる料理人を紹介してからお菓子についての説明を受けて、それぞれ作業に入っていく。
もちろん子どもだけでは危ないこともあるため、うちのメイドが一人ひとりに付いてくれる。
開始から1時間半ほどでお菓子が出来上がったので、それを運んでもらっていつものように庭の東屋でお茶の時間にする。
たくさん作ったので、余ったお菓子は家族とヒイロのご家族へ分けることにした。
数個だけ取り分けて内緒で包んでおく。
これはあとで・・ふふっ
「今日のお菓子は東の遠い国のものなのよ。うちの料理長が調べてくれたの。とても柔らかいから、お年寄りや小さな子どもも食べやすいんだって、蒸しパンって言ってたわね」
料理長から聞いた説明を思い出してヒイロに伝える。
「へぇ~遠い東の国かぁ、国が違うとお菓子もこんなに違うんだなぁ・・
興味深いね!
作る工程もとても楽しかったよ、誘ってくれて本当にありがとう」
「いいのよ~私もとっても楽しかったわ!」
「さぁ、お茶にしましょ♪」
「そうだね!いただくよ~」
2人してゆっくりと食べ始める。
「「うわぁ~美味しいっ」」
同じ感想を口にして2人で笑ってしまう(笑)
「ふわっふわね!」
「うん、もちもち感もあって食べごたえもあるね~」
「そういえばそうね、今日はお菓子として作ったからドライフルーツを入れたけど・・チーズに変えたら軽食でも出せそうよね」
「それいいね!サンドイッチとかと同じ感覚で外に持って行く食事でもお菓子でもどっちでも!」
「余ったものからヒイロのご家族用にも包んだから持って帰ってね~」
「え!いいの!?」
「もちろんよ!だって2人で作ったんだもん、ヒイロのご家族にも食べてほしいじゃない?」
「うわぁ~ありがとう!!」
「ねぇ・・アミカ・・」
「え!」
「え??どうしたの?」
「え、な、なんでもないよ」
「ヒイロ・・」
チラリとヒイロに視線を向ける。
「クラナ・・」
気まずそうにして俯いてしまうヒイロ。
「ねぇ、ヒイロ、アミカのこと好きなんでしょ??」
ドキッ!!!!!
「な・・なんのこと・・そんな、僕そんなこと」
しどろもどろになっている。
「もう・・いつも一緒に居るのに、私が気づかないと思っていたの?
私はヒイロもアミカも大好きよ、大事な親友だと思っているわ。
いつも二人のこと見てきたのよ?
ヒイロの気持ちだってすぐ気づいたわ?
笑ったりしないし、ヒイロの気持ちを教えてくれない?」
・・・
「クラナの言う通りだよ。僕、アミカのこと好きなんだ・・でもアミカは僕よりも爵位が上だしキレイで気が利くし、とても賢くて頼りになる。
僕なんて相手にされないってわかっているんだ・・
でも、好きになってしまって・・
できればペアになりたい」
必死に説明するヒイロは、とてもアミカのことが好きだと感じられた。
「ヒイロ、私ね、ヒイロのこと応援したいの。アミカとのこと、協力させてくれる?」
「え?・・ほんとに??いいの??」
「もちろんよ!頑張りましょう!」
「う・・うん・・僕頑張るよ!」
「その調子よ♪
手始めに、コレ別で包んだからアミカに手渡してみたら?
あ、でも、私と一緒に作ったことは言っちゃダメよ?
私に珍しいお菓子だって聞いて、調べて作ったって言うのよ?
いいわね?」
「な・・なるほど、わかったよ」
そう言って、帰る前にとライアット家に向かう先触れを出させていた。
アミカの喜ぶ顔が思い浮かぶ。




