戒めの準備中
2人の顔を見て、ユスランはニヤリとして続きを話す。
「それがな、今代のルティ家の奥方のことだ。
2人も知ってる通り、今代の奥方は結婚式を後に一度も姿を見たことがないじゃないか。
ミラからの報告では、どこのお茶会にも出席していないと言っていたし、ましてや出席が必須な王城での夜会にも欠席ときた。
だが、病気だとか死んだとかいう話は聞いたことがないだろう?」
「「たしかに・・」」
「だからな、俺はある仮説を立てたわけだ。
もしかすると、奥方はルティ家の屋敷内で監禁もしくは同等の状態にあるのでは?とな。」
「なっ!!監禁だと!?犯罪だぞっ!!」
「そんな恐ろしいことっ」
「無いと言い切れるか?」
「「・・・」」
2人ともあってはならないことだと、しかし状況的にはあり得ると思ったのだろう。
「もうそれしか考えられなくてな・・
実は少し前にルティ家の執事長と話す機会があってな、近々使用人一同屋敷を去るということを聞いたんだ。」
「なんと・・・」
「使用人にも見限られるほどか」
「ずっと奥方に会えないのも前から疑っていたらしく、加えて長男の引きこもりや次男の最近の所業に嫌気がさしていたらしい、何か起きて巻き込まれてからでは遅いとみんなで話し合って決めたらしいんだ」
「なるほどな」
「賢い選択だ」
「そこでだ、俺が取引を持ちかけたんだ。
使用人一同、辞めた後の行き先を斡旋するから、奥方を探すのを手伝って欲しいとな。」
「ほぅ、それで動いたか??」
「あぁ、彼らの身の保証もつけてやったぞ。
ほら、王都から3つほど離れた町に俺の親族に昇爵した家があるだろう?」
「あぁ、確か田舎という場所柄あまり目立たない家だが、最近新しい鉱脈を見つけていたな。
しかもかなり資源が豊富だとか。」
王の覚えもめでたいほどか・・
親族ながらにあまり突っ込んでないからなぁ。
「そこなら俺でもわかる、モンス伯爵家だな」
さすが宰相、頭に入っているな。
「そうそう、モンス家で合っている。
伯爵になったこととだし、これから領地もどんどん栄えていくだろうってことで屋敷も大きくしてな。
働き手を探しているんだよ。
私の方にも良い人材画居たら紹介してくれと連絡画きていたからな。」
「なるほど、そうするとルティ家から移動してモンス家に仕えるというわけか。」
「タイミング的にもよかったなぁ」
「だろう?
モンス家のほうにも話はついているし、彼らには既に契約書だけは渡してある。」
「仕事が早いな(ニヤリ)」
「いやいや、それからな。
奥方の行方だが、見つかったぞ」
ガタっと2人が立ち上がる。
「まぁ、2人とも落ち着け。
奥方は無事だったよ、あと数日遅かったら・・あるいは危なかったかもしれんがな。」
・・・
「して、どのような状況なのだ?」
「あぁ、それがなぁ。
報告書によると、奥方は屋敷内の誰も入らない森の奥の小さな小屋で一人で暮らしいてな、共も付けられずにひっそりと。
食料も足りないというほどしか当たらなかったらしく、体を壊してな。
いまは療養させないといけない状態だな。」
王と宰相は絶句した。
貴族出身の女性が、共も付けずに一人で放っておかれたなど・・到底生活していける環境ではない。
「しかし、食料が少なくとも届けられたりしていたらそれなりに人の通った跡なり残るはずだろう?
それを辿って脱出できんかったのか?」
「それがな、毎回跡を消されていたそうだ。
だから出口もわからず、自分がどこに居るかもわからない状態だったんだそうだ。」
・・・
「酷いな。
罪人の流刑みたいじゃないか」
「ほんとにそう思うよ、ルティ伯爵は何がしたかったんだろうな」
「わからん・・」
「わかりたくもないな」
一時の沈黙が流れて、またユスランが話し出す。
「それでだな。
奥方が回復して話せるようになったら、ルティ家の実体を証言してもらえないかと思ってるんだよ」
「そうか、生き証人だな」
「そういうことだ」
「まぁ、奥方が話してくれたら、何よりの証拠になるな」
「あとな、ほれ。」
バサリと書類を置いた。
「なんだ?」
「コレはな、過去ルティ家のせいで家族や親族が被害に合った実家やその親類、元婚約者とかな関係者からの訴えだ。もちろん、今回キッシュ家とトルディア家も訴える所存だ。」
それを聞いて、深く息を吐いたサディ。
「あぁ、わかったよ。
危ない種はそろそろ摘んでおいたほうがいいだろうからな・・」
「わかってくれるか」
「もちろんだ・・自分の妻や子どもが被害に合っていたかもしれないと思うと、恐ろしいわ」
「そうだな・・俺も息子には重々言い聞かせないとな・・」
3人は取り敢えずの落し所が決まって、同時に息を吐く。
”絶対に許さんからな、待っておれ”




