さようなら
翌朝、いつもよりも随分すっきりと目覚めたシェリアーナ。
キョロっと辺りを見回して、レベッカの姿を探すと扉が開いた。
シェリアーナが起きていることに気づき近寄ってきた。
「奥様~お目覚めでしたね。すみません、ちょうど奥様の朝食を運んできたのです。
今日も胃がビックリしないようにと、料理人たちが胃に優しいお粥と野菜スープを用意してくれましたよ。」
どうぞと目の前に置いてくれた。
「わぁ・・」
目の前には真っ白いお粥と野菜を細かく刻んでくれたスープが湯気を立てている。
美味しそうっっ
食べ始めると、もう美味しすぎて止まらない。
なんと・・完食してしまったのだ。
私、こんなに食べられたのね。
と思っていると、私が食べるのをずっと見守っていたレベッカが目をうるうるさせて、
「おくさまぁぁ良かったですっ!全部お食べになられたんですね・・
ちょっとずつ食の細さも改善していきましょうね!
料理人たちも張り切っていますよ~」
と嬉しそうにしている。
食べているところを見られることも随分と久しぶりなので、私は気恥ずかしくなってしまった。
「さて奥様、お食事も召し上がられたことですし、着替えて出立致しますよ!他の使用人たちはみんな準備も終えてそろそろ集合している頃だと思いますから、奥様も急ぎましょう!
僭越ながら、私が今日の衣装を選ばせてもらいました♪
このお色、奥様にとっても似合うと思うんです!」
ふふっ張り切ってくれたのね。
嬉しくて顔が緩む。
レベッカに支度を終わらせてもらって、みんなが居るという食堂へ向かった。
「みんな~奥様をお連れしましたよ!奥様、どうぞ!」
「「「「「「「おはようございます!奥様!!」」」」」」」
随分と多くてびっくりしたけれど、私は微笑んでお辞儀をする。
「お・・はよう・・」
と出せるだけの声で頑張った。
みんな私の事情は聞いているみたいね。
侍女長へ顔を向けると、ゆっくりと頷いて笑ってくれた。
とても安心する笑顔ね。
一人の男性が出てきて、
「おはようございます。
お初にお目にかかります、奥様。ルティ家執事長のナインと申します。
いえ、今日からはただのナインと。
一応年の功もありまして、今日からこの旅のまとめ役となりました。
よろしくお願いいたします。」
ロマンスグレーになりかけの紳士に挨拶をされ、
「えぇ、こち・・ら・こそ」
とぎこちなく返す代わりに微笑む。
「では、そろそろ行きましょう。日の出前には出立したほうがいいですからね。屋敷の人が動き出すのは日の出後ですからねぇ~
みなさん準備はいいですね?」
小さくおーーーとみんなで拳をあげる。
みんなは先に荷物を馬車へ積み終えたようで、残りは私の荷物を運んでみんなで乗り込むだけらしい。
とっても用意がいいのね~素晴らしい使用人たちだわ!
そうして一同、乗り込んだ馬車は予定通りにルティ家を去った。
”あなた、セス、マトワ、さようなら・・私も自分の人生を生きるわ”
計画としては今日の夜前まで馬車を走らせて3つ先の町まで行く予定だとか。
そこの領主が協力者のお貴族様の親族のお屋敷であるとのこと。
ちょうど屋敷を出ようと画策しだした頃、ある人物から協力してくれないかと頼まれて、協力する代わりにこちらにも手を貸して欲しいと頼んだのだとか。
協力者・・・いったいどこの家だろう。
私も知ってる家かしら??
とにかく、私のいまの体調では無理をするとみんなの負担になってしまうし、余計な時間も使えないから、大人しくしていなくちゃね。
それにしても、みんな一緒にお屋敷を辞めてきた仲間というだけあって、それぞれの役割分担がしっかりしているし、とっても頼もしい。
連れ出してくれて本当に感謝しているわ。
いつかみんなに恩返し出来るといいな。




