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トルディアの心意気

キッシュ家での騒動の1時間後、トルディア家に手紙が届いた。


早急にという言伝を受け、メンデルが急ぎ侯爵へと手渡した。


執務室で仕事をこなしていた侯爵も、慌てた様子の執事に何事かと問い、急ぎ渡された手紙を確認する。


差出人はキッシュ家当主、ローデル・キッシュ。

晩餐会のことかと思い読み進めると、とんでもない・・


「なんだと・・話は聞いていたが・・うちの嫁になるであろう娘になんということを」

ワナワナとしだしてブツブツと呟く様子を見て、執事も何かを感じとったかのように身構えた。

「メンデル!!急ぎリオルをここへ」

「っ!!すぐに」

主人のあの様子はただ事じゃないと感じつつ、いまはただ坊ちゃまの部屋へと急ぐ。

ドンドンドン!!

「坊ちゃま!メンデルにございます!大至急旦那様が執務室へ来るようにとのことですっ」

「なんだっ?まだ夕食前っ、すぐに向かう」

「はい、そのように願います」

いつものメンデルらしからぬ様子に最初は嫌々顔を出したが、予想以上に取り乱した姿に危機感を抱き、父の元へ急いだ。


なんだ、一体何があったんだ・・

妙な胸騒ぎがしながらも足を動かす。


コンコン

「父上、参りました。」

すぐさま部屋へと入る。

「早かったな。いや、急に呼び出してすまん。

まぁ、話すよりもコレを読んでみてくれ。」

「??なんでしょう?キッシュ家ご当主から?」

カサリと音を立て、手紙の内容に目を通す。

読み終わる頃にはリオルの顔は鬼の形相に変わっていた。

「なんなんですか、コレは・・僕のクラナにこんなことををする奴がいるなんて・・許せない」

ギリィと奥歯を噛み締める音が聴こえる。

「本当にな、それでなこういうことは早いほうが良いからな。

うちの正式な嫁候補にこのようなことをしておいて、ただで済むと思うなよと抗議文と共に制裁を与えようと思う」

「父上、どのような制裁をお考えで??あまり甘いものだと許しませんよ?・・」

息子の顔は青筋が立って口元も引き攣っている。

「まぁ、落ち着け。

私だってクラナ嬢のことは気に入っているし、ミラだって彼女のことは娘のように思っているんだ。

生半可な制裁では俺がミラから三行半を突きつかれかねんからな。

ルティ家は代々、そこまで功績をあげたわけでもなく、最近では落ちぶれた伯爵家だ。

財政関係も危ぶまれているらしいと耳にした。

過去にもルティ家の男性連中の性質に泣き寝入りしてきた女性が多くいるらしくてな、ここらへんで貴族界から消えてもらおうと思う」


「そうですか、ですがうちとキッシュ家だけの抗議では彼等を没落させるには無理があるのでは?」


「いや、うちだけじゃないさ。

代々彼等の家に嫁に行かないといけなくなった女性の実家はさぞ恨み続け、代々語り継いでいるであろう。

奴らには近づくな、気をつけろ、目をつけられたら最期だと。

その家々を回って署名を貰い、これ以上の実害を出さないためにも陛下へ進言しようと思う。

あとは、陛下から影をお借りして結婚式以来姿を見せない現伯爵夫人を探して証言してもらう。」


「なるほど・・

署名の数や当時の様子を聞くのも手ですが、なにより現在の被害者の証言があれば1番強いですからね。

わかりました。

父上、僕にも出来ることがあれば是非協力させてください」


その言葉に侯爵はポンと息子の肩へ優しく手を置いて告げる。

「お前のいまやるべき最優先事項を告げる。

いますぐキッシュ家へ行き、クラナ嬢をこちらへ連れてこい。

そしてトルディア家で彼女を守り、事が片付くまではお前が彼女の傍にいるんだ。

将来を共にしたい相手なら、しっかり守れ。

よいな?」


「・・ありがとうございますっ

いまからクラナを迎えに行ってきます!」

「まてまて、この先の動き方とこちらで預かりたいことを手紙にするから、それも持っていきなさい」


「わかりました!では、僕は一旦部屋で着替えてきます!」

「あぁ、こちらも準備が出来たら出発を知らせるよ」

「お願いしますっ」


パタンと扉を閉めて部屋へと戻っていった。

息子を見送るその目には思いが込められていた。


”守れよ大事な人を”


こうして、一足先にトルディア家では情報が回り、使用人一同も含めてみんながクラナを迎え・守るための準備を始めるのだった。


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