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呼び出しと過去のミス

コンコンコン

「どうぞ~」

カチャリと静かな音を立てて扉が開いて入ってきたのはこの家の執事のメンデル。

「やぁ、メンデル、こんな時間にどうかしたかい?」

夕食も終わり、夜の寝支度をしているような時間だ。

急用か??と首を傾げる。

「リオル様、お休み前のお時間に申し訳ありません。

今しがた、キッシュ家のサリエル様からと御手紙が届けられました。

早馬でしたので、お急ぎの用件かと思いまして持ってきた次第です。

どうぞ、こちらです。」


銀色のトレーに乗せられた封筒の封蝋は間違いなくキッシュ家の物。

差出人は友人であるサリエル・キッシュからだった。

「こんな時間まで仕事をさせてしまってすまない、しっかり受け取ったよ、ありがとう。」

「いえ、問題ありません。それでは、おやすみなさいませ。」

「あぁ、おやすみ」


丁寧な礼をとり、部屋を去っていった。


さてと・・サリエルからか。

しかも早馬でなんてそんな急を要する用事とはなんだ。

流石にもう寝ようとしてたのに・・とブツブツ小言を言いながらも、封を開けて手紙を確認する。


寝台に座り、いつ寝てもいいような姿勢で読み始めると・・

ビクっ!!となり、寝る体勢どころではなくなった。


手紙の内容は・・

クラナに最悪な虫が付いた。

相手はマトワ・ルティ伯爵子息 ルティ家の次男で、先のパーティーでクラナに目を付けて、先日家にペアの申し込み書が届いたこと。

当のクラナは、マトワとペアになって婚約することになったりでもしたら死んだほうがマシだと言ってるくらい嫌っている・・怯えていると。

キッシュ家でルティ家の情報を集めているが、どれも危険だと警戒せざるえないことばかり出てくること。

これにより、対策を立てたいからよければ相談に乗ってくれないか?


とのことだった。


親父さんとの意見を纏める会が1週間後にあるから、その前までに会いたいこと。

しっかり時間を取れる日にしたいとのこと。


クラナ・・

いったい俺の知らない間に何が起こっているんだ。


こうしちゃいられない、とにかく明日は確か午後は予定が空いていたな、追加で明後日の朝~15時までと4日後は1日空いていることを手紙に記した。

明日の朝1番に手紙を持っていってもらうことにしよう。


クラナのペアか・・

素敵な相手と繋がってくれていたなら俺も祝福出来ただろうに・・

キッシュ家がこんなに慌てるような相手なんて、絶対に認めない。


俺は・・俺はいまでもずっとクラナが好きなんだ。


10歳の時、ペアリングパーティーで申し込まれて仕方なくペアを組んだ。

仕方なく1ヶ月に1度の交流会も我慢して参加した。

仕方なく彼女の好きな観劇や街歩きにも付き合った。

どれもこれもペアだから仕方なく。


あぁ、婚約者じゃなくて本当に良かった。

俺はこの子を好きになれないし、婚約・・ましてや結婚なんて絶対無理。

まず、好きなことが違いすぎる。

俺は騒がしいのが苦手。

本を読んだり、何かに集中するのが好きだ。

甘党だけど流行りとか関係なく美味しいかどうかに拘る、お茶にはちょっとうるさいし(苦笑)

対して彼女は、街歩きや観劇やカフェで流行りのお菓子やお茶をいただくのが好き。

友達とワイワイはしゃぐのも好きだし、じっとしているのは苦手みたい。


そんなの・・絶対相性最悪。


なんでペアになりたかったのか聞いたことがある。


単純だった。

”顔が好みだったのと、連れて歩いたら自慢できそうだから”

なんて頭の悪そうな答え・・

それを聞いた時から心底無理になった。

絶対に解消してやると意気込み続けていると、

なんと幸運か、あちらから相談してきた。

12歳の秋に、”他に好きになった人がいるから、ペア解消したのだけどダメかしら?”と。

願ってもない!!!!

彼女の気が変わらないうちにと、その日のうちに書類作成をしてもらいさっさと提出までしてきた。


晴れて俺はフリーになったのだ。


いや・・言葉の選定を間違えた。正しくは

”クラナに選んでもらえる立場になれた”


その時はあまりに気分が高揚して忘れていた。

ペア解消したことをトルディア家の外へ発していなかったこと。

1番大事なキッシュ家へ伝え損ねていたことを・・


なんという凡ミス(苦笑)


はぁ・・あの時の俺、馬鹿だなぁ。


それが現在まで続いてるもんだから・・うん、サリエルに会う日にしっかり伝えないとな。

そして、クラナへの想いも。



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