守るべき者
睡魔に勝てなかったクラナが部屋へ戻るのを見送った後、残った家族+主要な使用人で会議を開いた。
キッシュ家会議。
相当重要なことがない限り開くことはないけれど。
今日はその重要なことがあった。
それもつい先程。
お父様もお母様もクラナが居た時までとは違う、酷く冷めた表情をしている。
これはちょっと荒れるかもな・・
ふぅ。
僕も戦闘要員に入れて欲しいんだけどな。
子どもだけど、僕だって学園で手に入れた人脈がある。
街中には懇意にしている商店もいくつかあるし、情報も入ってくる。
色々考えていると、お父様が話しだした。
「んっ、まずは冷静になろう、私もだが・・
とりあえず、クラナがルティ伯爵子息からのペアを断ることについては特に問題はない。
そして、今後また申込みをされても徹底的にこちらは断る方針しか持ち得てないことを皆で共有して欲しい。
万一にも、こちらに訪ねて来られても絶対に侵入を許してはならない。
いいかね?」
お父様の顔も強張っている。
思ったよりもイライラしているのかもしれない。
「あなた、私達もあなたの意見と同じように思っているわ。もちろん、使用人も。」
「そうですよ、旦那様。私達はお嬢様に、キッシュ家に害為す者は絶対に許しませんよ」
「「「「当たり前です」」」」
「お前達・・本当に感謝する。
それからサリエル、学園でのツテを使ってルティ伯爵子息についての情報を集めて欲しい。
もしもの時、相手を断る理由をしっかり用意していたほうがいいと思うからね。
ルティ伯爵家自体についても、私が調べておくよ」
「承知しました、お父様。僕の可愛い妹を怖がらせたんです・・許しませんよ」
「まぁ、この子ったら、まだ何か事が起きたわけじゃないのよ、落ち着きなさい。ね?」
母に言われて、なんとか冷静になる。
「んっ・・そうですね。
確かに冷静になるべきでした。
すみません・・」
「わかってくれたのならいのよ~ね、あなた」
「あぁ、そうだな。
とにかくお互いに情報を集めたらまた再度情報交換ということで場を儲けよう。
一応期限を決めておこうか。こういうのは早いほうがいいからね。
2週間後でどうかな?」
「あら、その期間なら私もライアット侯爵家のお茶会に呼ばれているし、そちらで情報収集してきますわ♪皆さん顔が広い方ばかりだし、きっと色々教えてくれると思うの」
「なるほど・・ちょうど良いタイミングだったということだね」
「えぇ、本当に良いタイミングね♪」
にっこり微笑む美しい顔からは想像出来ないほどの怒りを秘めていそうだ・・
顔は笑っても目が笑っていない。
これほど恐怖を覚える表情はないんじゃないかと思うほどだ。
家族会議を終えて各自、自室へ戻ってからも色々考えていたらしく・・
キッシュ伯爵家にはその日、遅くまで明かりの灯る部屋があった。
それは、使用人棟でも同じ。
彼らの”守るべき者”を何がなんでも守るという信念に火を付けたかのように。
嫌なものは嫌ですしねぇ・・
生理的に無理!!は最終段階ですから。




