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『隣人』

情のグラデーション

作者: 鈴木
掲載日:2025/09/12

「俺達の関係って友情だと思う?」


 いきなり突きつけられた、今までまともに考えたこともなかったそれに、カナンはかなりの時間、沈黙で応えた。


 友情?

 それだけは違うと断言したい。

 他人の目にどう映るかは関係ない。

 そういうことに拘泥し過干渉してくる存在は現在、周囲にいないので考える必要もないだろう。

 そもそもジョシュアが言い出したこと自体、意外ではある。最もそうしたことに拘らない性質(たち)だろうに。


 ともあれ、ではただの知人?

 それも不本意ながら否定せざるを得ない。

 あまりにも深くかかわり過ぎている。

 内面ではない部分において(肉体的にとは断じて言いたくない。霊的に?魔力的に? 精神的に、と同列な曖昧レベルだが、思考が繋がれていても掘り下げることはしていないのだから別物扱いしたい)。


 友情と言えるほど厚い(誤字ではない)感情はないが、さりとて全く情がないかというとそうでもない。


 互いの関係を運命共同体と言い表すこともあるが、これは心情的なものは含まない。

 同じこの言葉を使う者でも精神的な繋がりの形態は人の数だけ存在するに違いない。

 友情、愛情、無情……………情のグラデーションには他に名称があるものだろうか。





「…………………………何故、今になってそんなことを?」


 結局結論は出せないまま、質問に質問で応えるというタブーを微妙な表情で選択したカナンに、愉快犯は実に無責任に、


「なんか、天の声が聞こえたから!」


 訳の分からない回答をしてきた。


 溜息しかない。








「おやk……」

「それもない」







 * * *







「なんだ?」


 酒肴を供しながら、ふとジョシュアの意味不明な問いを思い出したカナンは、思わず杯を呷るアウレリウスを凝視してしまい、苦笑気味に問われてはっとなった。


「いえ……すみません」


 理由なく強い視線を向け続けるのは失礼だろう(理由があっても失礼という常識(・・)はこの際置いておく)。


「何か言いたいことがある、という感じでもないな」


 気にするな、と寛容を示した後、アウレリウスが理由を知りたがっているという風でもなく、自身の受けた印象だけを穏やかな表情で告げて来るのに、後から理由を自覚したカナンはばつの悪い表情(かお)で応えるだけに留めた。


 私とアウレリウスの関係は何なのだろう。


 ジョシュアとは別の意味で、深く突き詰めたくない、と切実に思った。

 誰が困るのでもないのなら、このままでいいではないか。




 図らずもアウレリウスと同じ思考に至っていることをカナンが知る術はない。

 アウレリウスもまた、現状に満足するが故にそれを口にすることはないからだ。


 愉快犯もこの件に関しては不干渉(「それぞれで遊ぶネタにはすっけどなー。それはそれ、これはこれ」)。












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