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ふたつの星 ひとつの祈り(パート1)  作者: 慧ノ砥 緒研音


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第27話 黒き太陽(決戦:姉妹編)


 レオンの動きに一拍遅れて、ソフィアがノクティウスとレオンの円の外周へ踏み込む。白銀の軌跡が、赤い刃の影を断ち切った。

 「今よ!レオン!」

 ソフィアの声に、レオンが体をひねる。白い刃が赤の上を滑り――火花が、黒い太陽の血まみれの顔に降りかかる。

 ノクティウスが義腕で押し返し、赤い剣を突き上げる。


 ノクティウスは、義腕を唸らせてブラッドセイバーを振るった。赤い閃光が横薙ぎに迫る。ソフィアが前へ、白銀と赤の光が噛み合い、甲板に鋭い音が降る。激しい剣戟に、ノクティウスはついに後ずさり、船倉への階段を駆け降りた。

 

 「待て!ノクティウス!」

 ソフィアが叫び、レオンが続く。二人はノクティウス号の甲板から、煙と火花が立ちこめる船内へと、暗い階段を駆け降りていった。

 「ソフィア姫様!無理はするな!」

 無線からハヤセの声が響く。


 ソフィアとレオン、二人の視界は黒煙に覆われ、数メートル先も定かではない。傾いた船内は足場が悪く、鉄骨が剥き出しになっている。


 「見失ったか……」

 レオンが低く呟いた。

 そのとき、闇の奥から微かな駆動音が音をたてていた。通路の奥では、倉庫に逃げ込んだノクティウスがスイッチを入れたのだ。

 同時に、小さな影が船内の通路を縦横無尽に走った。グレネードを積んだ超小型ドローンが、ソフィアたちめがけて走り出した。


 その刹那、ソフィアは暁光の剣を強く握りしめた。柄の紋様が激しく光を放ち、ソフィアの脳裏に、かつてダリウスから教えを受けた日々が鮮明に蘇る。

「ソフィア……目に見えるものだけに頼るな。………心眼(しんがん)に徹せよ……」

 

 耳元に、懐かしい声が響いた気がした。白銀の刃文が脈動した。ソフィアの目が、暗闇の中でわずかに開かれた。


 「……心眼………見えた!」

 ドローンの群れがソフィアを囲む一瞬前、彼女は迷いなく、剣を横に一閃した。刃文から放たれた白銀の波紋が、通路の空気を震わせながら広がり、ドローンの群れを瞬く間に飲み込んだ。

 ドローンは一斉に制御を失い、ソフィアたちの10メートル先で次々と爆発する。爆炎と轟音が、船内を揺るがした。

 「助かったわ……ダリウス」

 

 ソフィアは安堵の息を吐き、さらに奥へと進んだ。煙が晴れた通路の先には、崩落した天井から光が差し込み、二人の進むべき道を照らしているようだった。

 通路の先、破壊されたブリッジの入り口で、ノクティウスが立ち尽くしていた。背後には、炎を上げて燃え盛る機関部。崩れかけた床の隙間から、地獄のような赤い光が揺らめき、ノクティウスの右半分の仮面を不気味に照らし出す。

 「もう逃げ場はないぞ、ノクティウス!」

 レオンの声が、爆音にかき消されずに響く。彼はソフィアと並び、呼吸を整えた。 

 ノクティウスは沈黙し、ブラッドセイバーを構え直す。その刃の先は、赤黒くくすんでいた。

 「……忌まわしき血よ……お前たちに、この私を止められるものか……」

 義腕の駆動音が甲高く唸る。床を蹴り、赤い閃光が二人へ向かって迫る。


 「いくわよ、レオン!」

 「ああ!」

 ソフィアが白銀の刃で、レオンが自らの体でノクティウスの攻撃をいなす。剣がぶつかり合うたびに、火花が散り、熱が頬をかすめた。レオンがノクティウスの攻撃を巧みに受け流し、隙を作る。その一瞬の隙を見逃さず、ソフィアが剣を突き出す。

 キィィィン!

 甲高い金属音と共に、レオンの剣がノクティウスの義手の右手首ごと、ブラッドセイバーを吹き飛ばした。赤い剣は虚空を舞い、炎の中へと消えていく。

 武器を失ったノクティウスは、一瞬の動揺を見せた。

 その隙に、ソフィアが踏み込む。

 暁光の剣の白銀の輝きが、ノクティウスの真っ赤に血に染まっった瞳に焼き付いた。

「これで、終わりよ!」


 剣先がノクティウスの胸を貫いたか、その瞬間――

 ガラガラッ!

 ノクティウスが立っていた床が、轟音と共に崩れ落ちた。断末魔の叫びが、爆炎の中に吸い込まれていく。黒いマントが風をはらみ、揺れる炎の中で、ノクティウスの巨体は徐々に小さくなっていく。


 ひときわ大きな炎が渦を巻いて立ち上がる

 ――黒い太陽が燃え盛るように

 ――何かを浄化するように


 ソフィアは、炎を見つめる。レオンは、ソフィアの肩にそっと手を置いた。

 二人は、とどめを刺せなかった。だが、確実に、ノクティウスという存在は、炎の海へと消えていった。


 レオンの唇がかすかに動いた。

 「……親父……」

 その声は、炎の轟きにかき消されるほど小さく、誰にも届かない呟きだった。


 静寂が、二人の間に流れてきた。激しい戦いの終わりを告げるように、遠くで響く轟音が、少しずつ静かになっていくのだった。




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