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風のスープ
地上の空を見つけた四匹は、しばらく穴の出口でぼんやりしていた。
青い世界は思っていたよりも広くて、モグラたちの小さな目では収まりきらない。
「これ……どうやって食べるんだろう」
オルガンが空を見上げて言った。
「スプーンで掬うのかな?」
ペルラが、持ってきた錆びたスプーンをひょいと空に伸ばした。
もちろん、何も掬えない。
そのとき、風がふわりと吹いた。
地下では感じたことのない柔らかさ。
「……今の、味しなかった?」
ミゼロが目を細める。
四匹は顔を見合わせ、鼻をひくひくさせた。
確かに、どこか懐かしい甘さがした気がする。
「これが……空のスープ?」
ラギトが呟くと、みんなが一斉に頷いた。
その日から、モグラたちは毎朝、穴の出口で風を味わうのが日課になった。
空のレシピはまだ完成していないけれど、彼らは少しだけ幸せになった。