表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/22

幕間1 あるネクロマンサーの純愛

 おばあちゃんが死んだ。


 私の最愛の人だった。ほとんど家に帰らず、たまに顔を合わせても喧嘩ばかりしているパパやママなんかより、私にとっておばあちゃんは生きる意味そのものだった。


 だからおばあちゃんが死んだ日、私も死んでしまおうとも考えた。


 こんな世界で生きるより、死んでおばあちゃんに会いにいく方がずっと幸せだと思ったのだ。


 おばあちゃんを見送って、ちゃんと遺品整理もしたら、私も旅立とう。


 そんな決意を固めながら、おばちゃんがいなくなった部屋で1人遺品を整理していると、一枚の茶封筒を見つけた。それは私宛の手紙のようだった。


 手紙にはいろいろ書かれていた。概ね私のことを心配するような内容だ。おばちゃんが自分が苦しい時にだって、私のことを想ってくれていた。


 嬉しくて、同時にとても悲しくなった。


 胸にぽっかりと空いた空洞が、さらに大きくなったような気がした。


 でも手紙はそれだけで終わらなかった。そして茶封筒に入っているのは手紙だけではなかったのだ。チャラという音を立てながら出てきたそれは、どこかの鍵だった。


”私にそれを呼び覚ます力はなかった”

”でもお前には、その力がある”


 手紙にはそう書いてあったが、私にはさっぱり何のことか分からない。代々受け継がれてきていた力がずっと弱まってきていたが、私は隔世遺伝によって云々。難しい話はよく分からない。


 そもそもこの鍵はどこの鍵なのか。場所は手紙には記されていなかった。


 でも、おばあちゃんから託された何かであることは確かだ。私は死ぬ前にそれが何なのか確かめたかった。


 私は家の敷地内をとにかく手当たり次第に探した。そして日が傾きかけた頃、私は家の敷地にある物置と化した離れで、私はようやく見つけた。


 その鍵は、たくさんの物で隠れていた地下への扉を開けるためのものだった。もちろん私は今まで地下の存在なんて知らなかった。


 長く続く階段。私は一段降りる度に、久しく感じていなかった自分の鼓動が明瞭になっていく。


 階段の先にあったのは、古く重そうな扉。こちらは鍵が掛かっていない。私は身体を使って何とかその扉を開ける。埃が舞って、咳き込んだ。長らく誰も立ち入っていないようだった。


 部屋は真っ暗だった。でも、入り口の側には、古い扉とは打って変わって真新しい電灯のスイッチがある。パチっとスイッチを入れると、部屋の中央の電灯が点滅を繰り返した後に、暖色の光で部屋の中を満たした。


 そしてその部屋にあったのは死体だった。


 きっと私はこの日を忘れることはない。


 酷い意味じゃない。だって、その死体はあまりにも綺麗だったから。まるで時が止まっているみたいに。私は息を呑んで、しばらくその美しさに意識を奪われてしまった。


 運命の出会いだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ