真夜中の逃走
初めての作品となります。拙い文章ですみません。
一人の少年が馬で夜道を駆けていた。つたなく馬を駆る少年の後ろから彼を捕らえんと騎馬武者の一団が迫っている。
「待てえ!」
追っての怒声に少年は身をすくめながらも、必死にに手綱を握りしめ、馬を駆る。そうしている小さな森が見えてきた。その時、少年は閃いたー
少年が森に駆け込んでいく姿を追っ手の一団は捉えていた。
「頭!あの小僧森に逃げ込みました!」
「あの森を抜けた先には確か大きな川があったよな?」
「はい!あいつが川を渡ろうとまごついているうちに捕らえましょう!」
「待て、森のなかで奇襲をされてはかなわん。頭、安易に森の中まで追うのは危険です!」
森のように障害物が多い空間では数が多いほど騎馬の機動性も落ちてしまう。加えて夜の森は視認性が悪く、連携が取りづらい。
「よし、6騎は全速力で森を迂回して川へ向かえ!残りの3騎は俺と森へ向かうぞ!」
頭目の指示を受け、追っ手の6騎はすぐさま一団を離れ、残りの4騎は森へ入った。
少年が夜陰に紛れて奇襲を仕掛けてくることを警戒し、4人の男たちは周囲を警戒しつつ森を進む。そうしているうちに森を出た。
「森にはいなかったよな?」
「もしや既に川を渡って逃げたか?」
男たちが不安に駈られているとき
「おーい、頭ー。」
「ん?あれは川に向かわせた奴だな。」
川へ向かった者の1人が合流してきた。その手には濡れた靴が握られていた。
「頭、これを見てください。」
「何だそれは?」
「俺たちが川についたとき、川の流れが見た目よりも急なものですから渡るのに手間取っていたところ、川中にこの靴と鞍が引っ掛かっていたのを見つけたんです。こりゃひょっとしてあの小僧のものではないかと思って見たところ、靴の大きさは子供の足くらいで、鞍は小僧がうちから盗んだ馬の物と一致しているんです。」
そう言って部下が差し出した靴を頭目はまじまじと観察する。所々、川の中で石にぶつかった様な傷痕があり、もしこれがあの小僧のものであれば、小僧の命は万が一にもないだろう。しかし、小僧の物でなはないとすれば、小僧は森に隠れているやもしれない。
「いずれにしても、今夜は物が見えづらい。これ以上あいつを捕らえようとすると無用な負傷者をだすやもしれぬ。引き揚げるぞ。」
男たちが馬に跨がり、去っていく姿を少年は行きを潜めて岩かげから見ていた。やがて、男たちが去っていったことを確認すると安堵のあまり寝ころんでしまった。
「助かった~。ああ、お前をそんな藪に押し込んで悪かったね。今出してあげるよ。」
そう言って少年は馬を藪からだすと、森小屋から拝借してきた材木と縄で非常に簡易的な橋を架け、馬と共に裸足のまま橋を渡った。
「おっと、橋を壊すのを忘れてはいけないね」
少年は抜かり無く橋を壊すと、すぐさま騎乗した。鞍を川に放り込んでしまったため、更に騎乗に苦戦しつつも一生懸命に馬を走らせる。その目は闘志で燃えていた。
彼の名はエヌヴェレス・クーバー。後の世に名を残す彼もこの時は、まだ名もなき少年であった。
作中で主人公がかけた橋は、忍たま○太郎「委員会対抗戦の段」にて架けられた橋をイメージしております。