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アカリへ。私達は行きます。

 「マリアンヌ!今日こそは.....!」

 「いや、エリーゼ...。少し、その.....」

 「そうだよ!僕からもちゃんと言うからさ!」

 「マリアンヌ様!是非お願いしたいんですが...。」

 「「「マリアンヌ様ぁ〜!!!」」」

 

 この状況になったのはついさっき。朝会のユーマリン先生のこの一言からだった。


 「はい、じゃあ、皆さーん?今日からはテスト週間に入りましたが、ちゃんとスケジュールはご覧になっていますよね?もし、課題や範囲を把握していないなら...。そうだ。昨日はマリアンヌさん、無断欠席しましたね?ついでにリリーシュさんも。この二人は特別、頭がいいので、皆さんは教えてもらうように!」


 (昨日何が何でも学園に行っていれば...!)

 

 私は歯を食いしばって頭を抱えた。周りからの視線が痛い。それはリリィも同じだろうと後ろを見たら、リリィまでもが私に救いの眼差しで私を見ていた。

 そして今に至る。


 「わ、分かったから!皆落ち着いて!まず順番に!えーと...、カイン!あなたは何が知りたいの?」

 

 一人ずつの応対は流石に疲れてしまうので、元凶になりかねないカインやアンを選ぶことにした。


 「僕は、範囲が知りたいです!プリントは全て燃やしたかも知れないので!」


 (何でそんなにニコニコして物騒なことが言えるのよ!)


 「も、燃やした...。ま、まぁいいわ!範囲ね、なら、私は一応ノートに書いたから、ほら。見たい人は見て、ちゃんと写して!」

 「す、凄い...!ありがとうございます!」

 「よし!じゃあ、次はアン!あなたは?」

 「私は...、そうですね。いい勉強方法とかあれば、教えていただきたいです。」

 「勉強方法...。分かったわ!私が普段やっているのは、仲のいい人2、3人でやる事かしら。その方がモチベーションも上がるからね。場所はどこでもいいのよ。」

 「なるほど...。参考になりました!ありがとうございます!」

 「良かったわ!じゃあ、他は...」


 こうして終わりが見えそうで見えない質疑応答を私はこなした。途中でリリィやベリーナが勉強を一緒に!と誘ってくれた。私はOKしようとしたが、ふと考えた。


 (あれ。アカリが最近私に飛びついてこないわね。変だわ...。何かあったのかしら...。)


 私を陥れようとしているアカリなど、他の人にとってはどうでもいい存在なのだろうが、私は少々胸騒ぎがした。もし、倒れていたりでもしたらどうしようか。...私はもしかして...


「お人好し?マリアンヌが?いやいや、その上をいってるさ。エリーゼ、君なら分かるだろう?」

 「まぁ、私の一番の親友だもの。こんなに優しい令嬢なんて、他にいないわ。まして、自らを虐めてくるものを気にかけるなんてね。」

 「あれ。二人とも私が考えていることがわかったの?」

 「それぐらい分かるさ!僕は君の婚約者。全てのことを把握することぐらい、容易いさ!」

 「リリーシュねぇ...。私は当然よ?マリアンヌなら分かるでしょう。」

 「...私はいいかな。あ、でも明日からはお願いできないかな?今日はアカリの状態で決めるわ。二人とも...。ついて来てくれないかな?」

 「「......。」」

 

 二人は顔を見合わせて笑った。


 「うふふっ!もちろん良いわよ!アカリが病気なら、それはそれで見ものだもの!」

 「そうだね!僕も心が少しでも軽くなると良いよ!」


 二人は私の言った言葉の意味を履き違えていないか?どうやったらそのような考えに辿り着くのかまるで分からない。だが、そう言われるとどこか共感してしまう私がいるのが憎い。流石に私は二人を連れて行く事はできない。アカリに虐めるような素振りでも見せたらいくら私たちでも終わる。


 「マリアンヌ?今更私達を連れて行けないなんて、言わないわよね?」

 「そうだよ、マリアンヌ。約束は絶対だよ?」

 「あ...あはは......。」


 私は苦笑いしかできなかった。


 それからアカリのクラスを訪れた。私が廊下にいる人に聞こうとしたが、私を見るなりこう言った。


 「...うわ。アカリを虐めてるって噂の令嬢じゃねぇか。」


 と。ボソッと呟いていただけだが、確かにそう聞こえた。嘘だ。さすがにこのクラスの人全員を敵に回すのは大変だ。だが、この反応を見たら明らか。アカリの作戦が今までの人生で初めてわかった気がした。


 「うざっ。早く行こ。」


 私が反応するよりも先に二人が動いた。


 「おい。お前、何言ったかわかってんのか?」

 「あんたみたいな奴が、そんなこと言っていいわけ?身の程を知りなさい!」

 「は?いきなりなんだよ。...なんだ、底辺かよ。親の権限で得た地位を俺らみたいな農民に対して使って嘲笑うのは楽しいかよ。そんな奴らにあんなこと言ったって、当然だろ。」

 「...お前、名前は?どこの家だ。」

 「は?誰が...」

 「いいから言えよ、このゴミが。あのなぁ、僕らに対しては何を言ってもいいが...お前はマリアンヌに対して言葉を誤った。君は牢屋に入れられてもおかしくないんだぞ?...僕はこの国の王子として、今ある君が言ったような問題に取り合っているんだ。人によってはそんなことはしない。だが、君は不運のようにも雇い主がそんなクズばかりなんだろう。」

 「まあ、あなたみたいな奴に何を言っても意味ないけどね。」


 私は置いていかれたのか?今日にして私は二つの大きな壁に当たった気がした。これが二人の本性?初めて見た。こんなにも怖いとは思わなかった。


 「...俺の名前はオスウェル・レギンソン。お前らに当たって悪かったな。だが、マリアンヌ...か?お前、このクラスに来ない方がいいかもな。お前みたいな奴、誰も人として扱っていないからよ。聖女のアカリを虐めて楽しいか?」

 「あのなぁ...」

 「リリィ、ここは私に...。」


 私は堪忍袋の緒が切れた...とまではいかないが、こいつに何か言ってやりたい。


 「...貴方、良いわね。そう。わたしがアカリを虐めてる...ねぇ。私は否定したりしない。でも、人を虐める快楽を知っているのは...彼女と言っても過言では無いわ。別に、貴方達のような底辺が私に何を言おうが私達にはが届かない。眼中にも入らないわ。それを知っている上で足掻いているなんて...醜いわよ。」

 「......。」


 少し言いすぎたか、と思ってオスウェルの方を見たら口籠っている。


 「...あっ、ごめんなさい...。その、私達...アカリが最近私達にその...姿を見せてくれないから!き、聞こうと思ったんだけど...。」

 「......。」


 ダメだ。私のオーラと見た目に反して意外と低い声が出る事ですっかり黙り込んでしまった。何か方法は...。あ、そうだ...。


 「ちょっと...、ごめんなさい...。」

 「...えっ、は、ちょ、おまっ...」


 私は一言言い、オスウェルに抱きついた。...どうしよう、リリィよりも何だか良い。後は見ないようにする。


 「その...本当にごめんなさい!あの、えと、私...、気が動転したみたいで!本心じゃないから!ね!泣かないで!」

 「いや、泣いてねぇよ。それより離せって!いいから離れろよ!耳元でそんな呪文みたいに言われても...。」

 「....。」

 「ああっ!」


 私はリリィに引き剥がされ、リリィに抱きつかれた。嫉妬しているんだろう。流石に私は軽率だと反省した。


 「マリアンヌ...。この僕の前で他の男に抱きつくなんていい度胸しているねぇ?」

 「あっ...。」

 「マリアンヌったら!やりすぎよ!」

 「ごめん、エリーゼ!」


 三人でわいわいしていたら、オスウェルがやっと話してくれた。


 「いや、分かった。悪かったよ。それで、アカリについて知りたいようだが...アイツは最近休んでいるんだよ。風邪...って先生は言っていたけど。」

 「そう、ありがとう!あ、もし良かったら貴方も一緒にアカリの家に行かない?教えてくれたお礼とお詫びに。」

 「俺ぇ?他にもいるだろ。」

 「いや、アカリについて詳しそうだし。まあ、いいわ。あなた、今日の放課後に絶対来なさいよね?」

 「...はいはい。分かりました。」


 オスウェルも一緒に行く事になり、私達は少し安心した。だって、私達が急に行くより、同じクラスの人が先に入ってもらった方がいいでしょ?アカリの両親は幼い頃に亡くなって、今は叔父の家にいるらしい。叔父は私達のことは知らないから、入れてもらえればいいけどね。



 「ねぇ、リリィ。授業中ぐらい自分の席に行きなさいよ。先生の視線が痛いのよ。」

 「ふんっ。他の男に抱きついた事、許さないからね。」

 「そっ、それは...。」

 「...リリーシュさん、マリアンヌさん。放課後話があります。少し先生の所へ来なさい。」

 「ほら!もう!」

 「...マリアンヌ、先に私は待っているから。」

 「エリーゼ!助けてよぉ〜!」

 「ダメよ!あなたがあの男に抱きついたからでしょ?」

 「ううっ。そんなぁ〜!」

 「やったね!僕達二人で先生と一緒だね!」


 授業中はリリィが離してくれなかったので、もう二度としないと心に決めました。



 ___放課後(エリーゼ視点)___


 「ほんっと、マリアンヌったら!」


 私は二人を待たずにオスウェルに会いに行く事にした。だって、ユーマリン先生のお説教は長すぎるのですもの。ざっと、私が寝れる時間ね。

 オスウェルは頭にくるような男だが、マリアンヌが誘ったので、何も言えないのだ。


 (えーっと、黒髪だから分かりやすいのよね〜。)


 下駄箱で靴を履き替え、門の前にある大木で探す事に。そうしたら、意外にも早く見つかった。


 「あっ。」

 「げっ。」

 「...おい。げっとは何だ。お前令嬢だろ。」

 「はぁ?失礼ね。あなたはまず基本の口の利き方がなってないわ!」

 「それより、あの二人はどうした?帰ったか?」

 「な訳ないでしょう!マリアンヌがあなたに抱きついたせいでリリィが授業中ずっと離さなかったのよ。それでユーマリン先生に怒られているわ。」

 「うわっ。やっぱあの二人恋人かよぉー。」

 「残念そうね。」

 「だって、俺に抱きついてきたマリアンヌって奴。どっからどう見ても美人じゃねぇか。アイツに色々言われた時、少し嬉しかったんだよな。あんなに可愛いのにあそこまで怖くなれるなんて、何者だよ。」

 「はぁ...。あなた、マリアンヌに惚れたのね?無駄よ。あの子にはリリーシュがいるからね。」

 「だよなぁ。羨ましいわ。」

 「そう?私は一人がいいけどね。でも、マリアンヌは別だけど。」

 「そうか、そうか。悲しい人生だなぁ。」

 「何よ!うるさいわね!」



 ___それから___



 「あぁー、やっと終わったねぇ!マリアンヌと一緒にお説教されるなんて、僕は嬉しかったよ!」

 「どこが...。私は立っているのが辛かったわ...。」

 「ふぅん。歩くのも辛い?」


 リリィは私にある言葉を言って欲しいように私の瞳を見る。


 「...はぁ。分かった。お姫様抱っこして下さい。」

 「もちろんだよ!いやぁ、マリアンヌから言ってくれるなんて、今日はいい日だねぇ!」


 リリィは上機嫌で私を抱き上げ、集合場所へと向かった。すぐに二人の姿を見つけることができ、向かおうとしたが、リリィは足を止めた。


 「リリィ?どうしたの?」

 「いやぁ、あの二人、相性がいいみたいだねぇ。まるで僕達のようだ。」

 「確かに。エリーゼが異性に向かってあんなに話すなんて、珍しい。」

 「邪魔しないでいたいが、時間もあるし、またの機会に二人の様子を伺おうか!さぁ、アカリの家に行くよ!」

 「あっ、降ろしてっ!」

 「それは嫌だねぇ!」


 

 「あっ!マリアンヌ!...って、また...。」

 「あーあ、相変わらずのことで。」

 「エリーゼ!オスウェル!良かった!会いたかったよ!」

 「お、おう...。」

 「たったのことでしょ?あ、足が痺れてしまったのね。それはあなたのせいでしょ!」

 「ううっ、面目ないです...。」

 「そういえば、アカリの家はどこだい?」

 「私は知らないわよ。」

 「マジかよ。まあいいわ。俺が案内する。ついてこい。」

 

 オスウェルとエリーゼと合流し、オスウェルの案内の元、アカリの家に向かった。手土産はむやみらたらに渡さない方がいいので今回はやめておく。


 「アカリの家は学園に近いぜ。この道を真っ直ぐ行くだけだからな。」

 「ここは...。湖の近くだね。」

 「えっ!そうなの?」

 「あら、来たことがあるの?」  

 「ああ。あの時に。ね?」

 「えっ...。あぁ、あの時...。」

 「へぇ、湖に?それは物好きがすることだな。アンタ変わってるな。」

 「よく言われるよ。」

 「まぁ、湖と反対側なんだけどね。もう少しいけば道が開けて屋敷があるはずだ。」


 歩いて少し。私の足でも問題なく辿り着ける距離にあった。私の屋敷と同じぐらいの広さだろうか。見た目はとても豪華だ。 


 「お邪魔しまーす。」


 すると、勝手にオスウェルが門の扉を開いた。


 「...あぁ、これはこれは。その制服...。もしかして皆様はアカリ様のご友人で?」

 「はい。アカリが病気と聞いて、お見舞いに。」

 「そうでしたか!わざわざありがとうございます。さぁさぁ、こちらへ。」


 屋敷から出迎えてくれたのは歳六十にも見える優しそうなご老人。きっと、この屋敷に仕える執事だろう。


 「アカリ様。ご友人方がいらっしゃいます。通してもよろしいでしょうか?」

 「...いいわよ。入って。」

 

 中から聞こえたアカリの声はいつもとは違い、声が掠れている。


 「それでは、私は失礼致します。お飲み物を後で持って参ります。」

 「あ、ありがとうございます。」


 執事が部屋を出ていくと、アカリは私達を見て一言。


 「...何で来たのよ。」


 と言った。多分、私に宛てて言ったのだろう。確かに、鬱陶しく思う相手がお見舞いに来たら、誰もがこんな反応をするだろう。


 「アカリ、元気か?それにしても、さすがに酷くないか?」

 「...うるさいわね......。」

 「ア、アカリ。ごめんなさい、いきなり。貴女が学園で最近見かけなくなったから。...貴女のクラスのオスウェルに聞いて、お見舞いに来たの。急だったからお菓子とかは持ってかれていないけど...。」

 「...って。」

 「え?」

 「帰って!今すぐここから出て行ってよ!あり得ない。何でアンタがここにいるのよ!意味がわからない!」

 「嫌!私は帰らない。貴女がそんな態度でいるなら、尚更よ!」

 「はぁ?ふざけないで!どうせ私を見下しに来たのでしょう!?リリーシュ様まで連れてきて、親友にうちのクラスメイトまで...。あなた正気!?」


 アカリは私に対して怒声を浴びせた。多分、あの執事にも聞こえているだろう。来てはまずかったか。


 「もういいから帰って!私に会いに来ないでよ!」


 私達は今日のところは引き上げる事にした。執事にはお詫びをしようと、明日もアカリの家に行く事に決めた。アカリも心を開いてくれるかもしれない。そうすれば、私は断罪を免れる!


 「おいおい、明日も行くのかよ。」

 「マリアンヌ、本当に懲りないねぇ...。」

 「まあ、良いじゃない。」

 「ふふっ!みんなありがとう!」


 私達は夕陽に向かってアカリが心を開いてくれるまでアカリの家に行こうという誓いを立てた。

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