そうだ旅行に行こう【一頁完結型小噺・T書庫シリーズ】
__幕間
ここに一冊の本がある。タイトルは掠れてしまっている。
それは、私たちにとっては物語であるかも謎らしい。
しかし、コレが残されているという事は彼等は確かに存在していたのは確かだ。
そういう世界らしいからね。ココは。
さて、短いが少しばかり話に付き合って貰おうか。
弟よ。ココの書庫は蔵書がいっぱいで私はとてもわくわくしている。
どうせ少ししたら存在が曖昧になって私たちは消えてしまうらしいからね。
ちょっと位、盗み見たところで罰は当たらないだろう。
……ん?白い犬?君は?何か咥えているな。これを読んでって事かな?
それではDr.Tの読み語りの始まり始まり。
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そうだ、旅行に行こう!!思い立ったがヨい日デス!
ワタシは廃墟が並ぶ都市でそう思い至った。
次は人が多い所がイイデスね。ここは瓦礫シカありません。
目標地点は南国に行きまショウ!
服を生成シ派手なハイビスカスをプリントされたシャツを着込む。下は短パンこれぞ南国スタイルデェス!!
目的地は南国(予定!海!。サテと、時間は適当、人が多い所!
ワタシは呪文を唱え足元に黒い穴を生成する。身軽に崖を飛び降りる様にその黒い穴に飛び降りた。
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滑り落ちる様にモノトーンの世界を進んで行くと青をベースにした明暗様々な管の集合体が見えマシタ。ウーム、生息地は違うはずデスし。アレは群れで居た気がシマス。
チョットだけ場所を戻りソレとワタシは邂逅シマシタ。ソレはパイプが複雑に絡まった四足獣に見える猟犬と呼ばれる時空の狭間に居る存在デス。群れを作って縄張りに入った者をしつこく追いかけたりするのデスガ、どうやら群れから逸れた一匹の様デス。
「猟犬デスカ?1人、デスカ?一緒に来マスカ?」
コチラに気付いても飛び掛かる気配も在りまセンし、躾ケレバ人前で連れても大丈夫デショウ。シカシ、見た目がイケマセンね。猟犬……犬デスカ。犬の姿にスル事にシマショウ。眷属化するなら名前も決めないとイケマセンね。……そうですねー、犬の像を与える事ですしワイハのキー、ティキと名付けマショウ。
「ふむ、デハ君の名前ハティキデス。テイケイ、ドウデスカ?」
「……」
「デハ、今から姿を変容させマスヨ」
ワタシはティキに向け手を伸ばすと管だらけの姿がもこもこした白い犬に変わった。
「フワフワモコモコのポメラニアンデス。加減はドウデスカ?」
「……」
「あぁ、そうデスネ。意思疎通の術がその状態だと無かったデス。眷属になってる筈ナノデ、意思疎通の魔術位は使えると思いマス」
「僕はティキ?」
「適応速いデスネ。そうですティキデスヨ」
「貴方は?」
「ンー、ワタシはこの個体ではアナライズ・オブザーバー・ユニット通称はアナー・パペットと名乗っていマスヨ。ティキはどうして独りなんでショウカ?」
「皆、アレにやられたの。」
「アレ、デスカ……ふぅむ、猟犬の群れを倒すほどの個体デスカ。この個体は人に紛れ込む為のユニットなので戦闘は苦手なのデスガ、どんなものか聞いても?」
「人型大きい頭の部分が無い、名は言えない」
ソノ情報で該当するのは色々居るマスが、名前が言えないと言う事は該当する個体が居マスねぇ。
「ソレは確かにアレとしか言いようがないデスねぇ。何方かが黙示録を提供しましたカネ?」
自分の名前を知るモノを付け狙うストーカー君が動いているトハ。ウーム、成程、取り敢えずバカンスを楽しみナガラ見に行きマスかね。
「ドッチの方に行きマシタ?」
「あっちかな」
「ふむ、そっちの世界にワイハー在りマスかね?取り敢えず、ワタシはワイハー行きたいデス」
「あっちは地球だね」
「それなら良かったデス。今来たトロイは廃墟しか在りませんデシタしね」
「所でワイハーって何?」
「ハワイの事です。海、サマー、広さ。全てにおいてバカンスに丁度良い島デスよ!早速、行きまショウ!さぁ、肩にしがみついてくだサイね」
「この姿だと爪立てないと駄目なんだけど」
「ドウセ、ヒトガタデスから遠慮なくドーゾ」
「じゃぁ、お言葉に甘えて」
「デハ、行きマスヨー」
___
「サムイ」
「戦闘中だよ」
「サムイデス!ワイハーはドコ?しかも眼下では艦同士が戦ってマスねぇ。時代が違う。戦争時代ですコレ!」
どうやら、コノ世界のこの時分は小競り合いが起きているヨウデスネ。
「今1900年代かな」
「流石、時空犬察デスネ」
「僕、犬じゃないんだけど」
「今はポメですからセーフデスヨ!ポメス犬デス」
「ポリスとかけなくて良いから……どうする登る?降る?」
「降りマショウ、人が多い時代へ修正してレッツゴーデス」
「おぉ、そうそう、ココですよココ!!念願のワイハーデスヨ久しぶりですねぇ!」
「あ、アレが居る」
「えぇ?嘘デショウ?そんなピッタリ?偶然ってアルモノデスネー」
「あっちの近所の島国に居るよ」
島国、じゃぽんデスネ。どうやら、被害は在りそうデスネ。オー、ジャパニーズ電車。電車の上に湧いてますね。如何しまショウカね。
「んー、しょうがありませんね。バカンスは後にしてソッチを優先シマスカ」
日本に繋げた穴に入るとそこは日本デス!淡く光る穴を閉じ早速、目的の奴に遭遇する事にシマスよ。
「状況は最悪デスねぇ。どうして、アレは電車の上に乗っているのでショウ?」
一番先頭の車両の上に乗るアレ、電車は川の上を走ってマス。落ちても都市部には被害は無さそうデスが落ちたら恐らく中の人は助からないと思われマスね。
「電車の中に呼んだ人が居るとか?」
「ンー、手を出して良いモノでしょうカネ?高次元的存在とワタシは敵対したくないのデスが、ヒトガタか探索者は派遣されてマスカネ?そろそろ彼方にも顔出しコウかな?ペットの紹介もアリマスしね」
「あ、動いた」
「フム、乗ってる車両にしがみつきマシタね。しょうがアリマセン、車両を切り離シテ被害を軽減しまショウ」
電車の連結に向かって礫を投げると上手く破壊出来た様デス。アァ、しまった。横から礫を撃ったせいでアレの乗った車両が川に落ちていく。あぁ、コレは呼び出しコースデスかね。……箱庭でバカンスも良いデスね!海に面した所に行きまショウ。
車両に何人乗ってイタノカ……分かりまセンが出来れば少ない人数であって欲しいと思いマス。
___
「貴方が関わると碌な事にならない」
「スミマセんね。Uさん、Tさん、そしてKさん」
目の前に居る影たちはコードと呼ばれる。高次元存在のKPと呼ばれる職業に付いている者達デス。
彼等の仕事は低次元世界の管理デス。と言っても世界群が崩壊する事は早々アリマセンが、ココに所属していない高次元存在が手を出してきたりスルと軽く吹き飛びマス。ソレを監視シ世界が吹き飛ばない様に調整するお仕事デス。
「えっと、今回の被害は26名、恐らく、次の箱庭送りですね。異物取り除かないと死神の釜にも入れられないし」
「あの世界のKPは誰だったんデスかね?」
「あー、僕だけど探索者の選定入ろうとしてたんだけどねぇ。夜内兄弟で良いかなって思ってたんだけど。ヒトガタ投入しようかなとも思ってた所だったからさー」
「流石ガバと有名なKPのUデスね」
「失礼な。コレでもちゃんと仕事してるよ」
「ワールドデータはバグだらけ、頭の悪いアイテムデータをおまけで突っ込む、人物のステータスも間違える。サポートするこっちの身にもなってよ」
「ごめんて、T」
「取り敢えず、異物を箱庭で消化させて、こっちで働けるなら人員補充って感じかな。働けなさそうなら釜送りだね」
「アー、そうなりマスか。バカンスしようと思ってたんデスガ箱庭で過ごしても良いデスカ?」
「そこ等へんはナンバーズと詰めてってね。所詮、下働きのコードだと決められない。4thにはチャット飛ばしておいたから今から行くと良い」
「ありがとうございマス。KP.K。あ、そう言えばこの子ペットにしたんデスヨ」
「ポメラニアン……に見えるけど違うんだろう?」
「ティキと名付けマシタ。ヨイ名デショ?」
「あぁ、取り敢えず仕事も山積みだし4thんところに向かってくれ」
「ワカリマシタ、ソレではマタ」
「お前が関わると碌な事にならん。ちゃんと書類を書くなら否は無い」
渋い顔でそういう、黒尽くしのエナメルなイケメン。この人が4thと呼ばれる人物デス。ナンバーズの一桁はココのボスの直属の部下デス。この人は大体、雑用担当デスね。お疲れの様デスから癒して上げましょう。
「ペットのティキデス!可愛いでショウ」
「そんな、不浄の塊をペットにするのはお前等位だな。ともかく、箱庭生活は了承した。俺様に話を持って来たのは正解だな。幾らでもねじ込めるしな。ただ、ヒトガタはこっちが用意したものを使ってもらう。それが条件だ」
「ワカリマシタ」
ソウシテ、箱庭の中で海に面した領地に配置されたワタシは旅行を楽しむコトにシマシタ。
__終幕
……面白味も無い手記だったな。しかし、ここでもフォースと呼ばれるエナメル男か。
しかし夜内兄弟……ここで、その名を見るとはな。電車事故については把握して居ないから数ある世界の別の私達なのだろう。自分達が選ばれなかった世界か。個の存在とは何か。まるでドッペルゲンガーと会った時の気味の悪さである。
紙を持って来た犬が恐らくティキか……白いポメラニアンにしか見えなかったなぁ。
そう言えばドッペルゲンガーと会った場合は……存在強度の弱い方が吸収されるとかだったか。今の自分達が会ったら即吸収されそうだなぁ。
アナーの箱庭に来る、経緯でした。本編でやっても良いかなと思ったけどシーケンスと同じかなと思ったので別にしました。
カタカナ多すぎて誤字脱字ありそう。アナーの仕様とは言え辛い。読みにくかったら申し訳ないです。
夜内兄弟は異世界Enjoyには登場しませんが実は3LIFEのお爺ちゃんの方には登場しています。地球が舞台だと登場する兄弟です。会話芸だと長くなりがち。それでは皆様また次回。