羽柴秀吉とアドルフ・アイヒマン
「おい、お前いつも馬の手入れをしているな」
それが初めてノブナガ様からかけられた言葉だった。
「は、はっ!!!戦では兵と同じぐらい馬は重要だと聞きます!ならば少しでも馬の調子を良くしておけば有利になるかと!」
「だがそれは微々たるものだろう。いつ見てもお前は働いてる。朝から晩までだ。辛くはないのか?」
「1頭では微々たるものかもしれません。しかし100頭では、1000頭では。いつぞや大きな力になりまする!」
「その通りだ」
「あ、ありがとうございます」
「面白い奴だ。名は?」
「き、木下藤吉郎でございます!皆からはサルと呼ばれております!」
「サルか、確かに似ておる」
「そ、そうです!サルゆえ動物の気持ちがわかるのでございまする!」
「なるほどな。ははははは!!!」
ノブナガ様は腹を抱えて笑ってくださった。
それからノブナガ様はこんな農民での儂に声をかけてくれるようになった。
あの方に『サル』と呼ばれるのがなによりも嬉しかった。
そして殿は美濃攻略に始まり、要所要所で儂を頼ってくださった。
ノブナガ様に頼られたというだけでなんでもできる気がしたものだ。
儂の夢はノブナガ様の一番傍で天下を見ること。
だがその夢は目の前で失われた。
明智を憎んだ。そして何よりも無力な自分を憎んだ。
その思いは自ら天下を獲っても満たされなかった。
だがまさかこの現代でもう一度夢が見られるとは。ゲームであろうが何だろが関係ない。
今度こそ儂は殿のお傍で天下を見る。
「邪魔じゃあ!!!鳥野郎!!!」
*
ヒトラー様との出会い?
そんなものもう忘れましたよ。
そしてヒトラー様と出会う前の私も忘れた。
ヒトラー様と出会った瞬間に私の人生は始まったのです。
母親から誕生した日のことを覚えている人間がいますか?
いないでしょう。
私にとってヒトラー様とは?
王ですよ。
この世界のね。
それは揺るぎない事実。
だから私たちは歪んだ世界をあるべき姿に戻すために戦ったのです。
私たちが敗北した日、世界は選択を間違えた。
まあ今となってはどうでもいい。
間違え続ける世界にも興味はありません。
今の私は最後にあの方ともう一度戦争がしたいだけ。
最後に父と一緒に遊びたいだけの幼子のようなものです。
「あなたこそ邪魔です!!!この猿がぁぁぁ!!!」
―猿情猛ー
ー荒鷲ー
金色に光る猿と血のように赤いオーラを纏った鷲がぶつかり合う。
それは幾度ともなくだ。
二人はよく似ていた。天下を目指した男に惚れこんだ二人。
ここまでならよくある話かもしれないが、2人が惚れこんだ男たちは本物だった。
確実に天下を治める器。
いや、天下を治めなくてはいけない人間。
だから二人はずっと同じことを思ってきた。
『自分のせいだ』
王になることが約束されているような主、それを王に出来なかった。
そんなあり得ない結果を生んだ理由はただ一つ。
『自分が無能だったからだ』
だからこそ奇跡的に天から降って来たこのチャンスを逃がすわけにはいかない。
命を捨ててでも、絶対に。
「「おおおおおお!!!!」」
知略で名をはせた伝説の二人が知も策も投げ捨てて、感情だけでぶつかり合う。
この光景を見た兵士がいたならきっとこう言っただろう。
『美しい』
と。
ほぼ互角の二人が策もなくぶつかり合い続ける。
力任せの根競べ。。
「どけぇぇぇ!!!」
「それはこちらのセリフだ!!!」
一時間ほど戦い続けた後、化け物同士の戦いは終わる。
「はぁはぁはぁ、毛利よりも手こずった。立っているのがやっとだ。すぐには殿の元へは向かえなそうじゃ」
血だらけになった秀吉が一人そこに立っていた。
「すぐに向かえないならいいですね。少しは嫌がらせが出来ました」
そう言ってアイヒマンは目を閉じる。
「向かわなくても結果は変わらん」
そう言って秀吉は笑った。
秀吉にとってノブナガの敗北はありえなかったから。
秀吉は生涯の内で一度もノブナガの勝利を疑ったことはない。
だからこそ明智光秀に殺されたと聞いた時、何よりも世界を疑った。
ノブナガが負ける世界などあってはいけなかったから。
「天下などそもそも殿に治められるために存在しているものなのだ」
*
こちらは秀吉に信じ切られているノブナガ。
「おーい、結局一対一になったなぁ」
「でもこの決着のつけ方が一番しっくりきますね」
もうノブナガ、ヒトラー、両軍生き残っている者はいなかった。
兵の死体に囲まれながらノブナガとヒトラーの最後の戦いが始まる。
ノブナガはハバキリと火縄銃、ヒトラーはムラクモと拳銃、互いに二刀流。
ガキン!!!
バンバンバン!!!
「お前のその銃いいなぁ」
「あなたの刀の切れ味も羨ましいですよ」
「同じ刀を持ってるくせに白々しい」
―第六天魔王 獄の相―
キャラネーム ノブナガ
レベル 652
職業 第六天魔王
特殊スキル 英霊隷属 死を喰らうもの 神に背くもの 天下を統べる者
闇がノブナガを包んでいき、漆黒の外套を作り上げ、刀と鉄砲も黒に染まる。
「それが第六天魔王という上位職ですか。では私も上位職の力を使うとしましょう」
―独裁者―
キャラネーム A・H
レベル 666
職業 独裁者
特殊スキル カリスマ ナチズム アウシュビッツ ホロコースト
A・Hは戦国時代には似つかわしくない軍服の姿になる。
そして二の腕には『かぎ十字』のマークが刻まれていた。
兵がいなくなった二人は自分の力だけでこの戦争にケリをつける。
本当の戦争ならあり得ない。
兵が全滅して大将同士が戦い合うなど。
兵数が3分の一となった時点で敗走する。
だがこれはゲームの世界。
ゲームだからこそ可能な戦い。
職業があり人知を超えた力もふるえるこの世界での話。
そして2人共戦争が始まった時からこういう決着のつけ方になるのはわかっていた。
だからこそのここまでの戦い方。
2人共、自らの身体で確信できる決着を望んだ。
「さて背負っているものは何もなくなった。単純な殺し合いを始めるか」
「楽しみですね。こういう戦いは初めてです」
「俺もだよ。だからこそ滾る」
「私もです」
「死ね」
「死んでください」
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