ABCDの最期~あとはオフ会で~
ABCDサイド
今頃謙信も戦っているだろう。
あいつは勝つ。
というかあいつが負けるところなんて想像できない。
なら俺も勝たないとな。
「やっぱり待ち伏せられてたか。アイヒマンの言う通りだったね」
ちょうど俺も敵軍と向かい合っていた。
敵の武将はプレイヤーだ。
キャラネーム HELL-SD
レベル 496
職業 麻薬王
特殊スキル 幻覚 致死毒 虚空無性
「奇襲にならなくて残念だったな」
「いや、まだそうとは決まってないよ?」
敵将のチャラそうなガキがそう言った瞬間、敵兵たちが蜃気楼のように消えていく。
「ちっ!幻覚使ってやがったか!てめぇら!妖気を感知しろ!死角から攻めてくるぞ!」
「「「「「はっ!!!」」」」
ガキン!
部下に指示を出した直後、背後から振り下ろされた刀をギリギリで受け止める。
「大将自ら俺の首を獲りに来るか。プレイヤーらしくていいじゃねーか」
斬り込んできたのは敵の大将、チャラいガキだ。
「超不意打ちだったと思うけど。さすがノブナガ軍の大名にまで上り詰めたプレイヤーだ。じゃあ死ぬ覚悟も出来てるよね」
「それはお前が俺を殺すってことか?」
「君だけじゃない。君の兵たちも全員死ぬ」
「「「「「「おおおおおお!!!!」」」」」」
四方八方から雄たけびが聞こえる。
うちの兵じゃない。
HELL-SDが率いている兵たちだ。
辺りを見渡すと狂戦士と化した敵兵たちがうちの兵たちに襲い掛かっていた。
「なるほど。お前自軍の兵にドーピングかましてるな」
「僕はそういう能力だからね。ウチの兵隊たちは数時間の間、人間の限界を超えた強さを発揮する」
「こんな無茶なドーピングを行えば、薬が切れた後は身体が絶えられなくなって死にそうに見えるが?」
「最後の戦いなんだ。兵の命なんか気にしてもしょうがないでしょ。数時間後に僕の兵たちは全員死ぬ。でもその前に君たちを皆殺しにすれば、A・H軍としてはプラスだ」
「いい感じにクソ野郎だな、お前。だがお前の兵たちが命を捨ててぶつかってこようが、大したことじゃない。ウチの兵を舐めるなよ」
ABCDはHELL-HDを睨みつける。
「ああ、そういうのいいから。というかこのゲームじゃ兵を全滅させるより、大将首を獲ったほうが経験値貰えるしね。だから君は僕が殺すよ。ウチの兵が君の兵を全滅させる前に君の首を獲る。まさにタイムアタックって感じだね。燃えてきたよ」
「舐めてんのか、お前」
「もちろん舐めてるよ?だって君タイマン弱いでしょ」
「・・・」
「君に出来るのは魔獣の召喚だけど、この乱戦だと味方も巻き込んじゃうんじゃない?そうなってくると兵力はこっちが上だから君の勝ち筋は単独で僕の首を獲ること。でもそれも無理だよね。だって君単純な戦闘弱いでしょ。まあ僕もそんなに得意じゃないけど、少なくとも君よりは強い」
「・・・」
「詰みだよ」
HELL-HDが静かな声でそう呟く。
ー虚空無性ー
その瞬間、俺の世界から光と音が失われた。
「どう?音と光のない世界は?って言ったところで聞こえてないんですよね」
「・・・」
「五感のうち二つが無くなればもう何もできないでしょう。これから貴方が感じるのは痛みだけですよ」
「ぐっ!」
何が起きてるのかよくわからないけどとりあえず切り刻まれてる。
「ぐはっ!」
この斬り方は痛めつけて遊んでる感じだな。
本当にクソ野郎だ。
「ほらほら!もっと声を上げてくださいよ!どこから来るかわからない痛みは恐ろしいでしょ!はははは!」
「ぐあああ!!!」
楽しそうだな。でも逆にこいつの被虐趣味のお陰で俺はまだ生きていられるな。本当なら一刀目で首を切り落とすべきだ。
こいつの性癖に救われている。
、、、性癖に救われる?ムカつくな。
うーん、細かく考えるのはやめよう。
どうせこのまま俺が嬲り殺されたらうちの軍は敗北。
それなら味方の命とか考えてもしょうがないか。
そもそもらしくないな。
味方だろうが何だろうが、死ぬ奴は死ね。
どうでもいい。
キャラネーム ABCD
レベル 513
職業 召喚術師
スキル 無限召喚 妖力共有
俺は天才だ。何でもできる。できなかったことなんてない。
だから周りがすべてサルに見えた。
見えたというかサルだった。
サルと同じ空気を吸うのが嫌になって、俺はゲームの世界に入った、
バーチャルの世界ならサルと一緒にいても同じ空気を吸うことはないから。
現実より少しはましだ。
「ABCD軍ー!!!聞こえるかーー!!!今から俺はこの辺り一帯を消し飛ばす!!!お前ら諸共だ!!!逃げろ!!!だがお前らが逃げ切るまで待つつもりはない!!!俺と一緒にノブナガのために死ねー!!!」
俺には何もなかった。
本当に何もなかった
だからつまらなかった。
だからくだらなかった。
だから心が躍った。
この世界に自分よりすごい奴がいたことに。
―ノブナガ―
この男は面白かった。俺には思いつかないイカレたことを平気で次々やる。
そのうちノブナガを見ているのが何よりも楽しくなった。
目が離せなくなった。
だから傍にいたいと思った。
この男の配下にならなってもいいと思った。
いや、なりたいと思った。
そして今俺はここにいる。
おそらくこれはノブナガ軍最後の戦い。
じゃあもういい。
ここが最後だ。
全部使おう。
配下の命も自分の命も。
所詮これはゲームなんだから。
このゲームこそが俺のすべてだったんだから。
―地獄門 滅―
「来い!ゴミクズども!!!」
*
ABCDは地獄の門を開く。
おびただしい数の魔獣が湯水のごとく湧いてくる。
それはもうどうしようもないもの。
単純な終わりだ。
だがABCDはそれでよかった。
「何を考えてるんだ!!!これじゃあ僕もお前も兵も全て死ぬじゃないかぁぁぁ!!!」
「ああ、だから一緒に行こうぜ。この戦争の結果はログで見るよ。まあ間違いなく俺たちが勝つがな。そのあとはオフ会だよ」
ABCDは笑って見せる。
「最初っから相討ちが望みだったのかぁ!!!」
HELL-SDは叫んでABCDに掴みかかる。
「相討ち?違うな。これは俺の勝ちだ」
「はぁ!?」
「お前の目的は侵攻だろ?だが俺の目的は防衛。目的を達成したのは俺だ」
・
・
・
数時間後、その場所には一切の生き物は残っていなかった。
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