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明智の呪い

A・H陣営でもノブナガたちと同じような話し合いが行われていた。


「ノブナガも同じ考えでいると思いますよ」


A・Hもノブナガも互いに何をするかわかっていた。その上で裏をかくわけでなく馬鹿正直に戦うつもりだ。


「そうは言いますがヒトラー様。もっと勝率の高い戦い方があると思います」


珍しくアイヒマンがヒトラーに意見する。


正直アイヒマンの意見は正しい。


そしてそれはヒトラーもノブナガもわかっていた。それでもこういう戦い方をしたかったのだ。


「これはゲームですよ?」


「え?」


「だからこんな戦い方で勝負を決められる。私が短パンを履いて駆けまわってた頃に憧れた戦争だ」


「ですが!」


「アイヒマン、最後の戦争ぐらい何も考えずあの頃のように戦おう」


少年のような目をしているヒトラーを見てアイヒマンは溜息を吐く。


「はぁ、わかりました。そういえば私たちにとっての戦争とは元々こういうものでしたね。それが背負うものがどんどん大きくなり、色々な策を張り巡らされ、子供の頃に憧れた兵隊たちなんて忘れていった。でもそうですね。これはゲームだ。そんなものに囚われていてはもったいないのかもしれない。思いっきり戦いますか」


「楽しもう。私たちだけの戦争を」


「御意」





ノブナガ軍もA・H軍も互いにこの戦争を心の底から楽しむと決めた。


『Akashic』との約束はこの戦いに決着がつくまでの『信長の覇道』延長。


ノブナガもヒトラーも思い残すことのない自由な戦争を望んでいた。


それはゲームだからできること、でもゲームだからこそ全力を尽くして戦うと決めていた。


「単純な戦い。くだらないことを考えなくてもいい戦争。それができるんだからこの時代に来たかいがあった」


「私がこの世界に呼ばれた理由は戦争に使えるAIを作る為だったのかもしれない。でもこの世界に私が来た理由は没頭できる純粋な戦争をするために違いない」


ノブナガとヒトラー、二人の天才が今度こそ真っ向からぶつかる。





こちらはランサイド


二人は向かい合っていた。


いや、二人と言っていいのかはわからないが、とにかく向かい合っていた。


「明智光秀!やっと会えた。あんただけは私が殺すって決めてたの!だってあんたは、、、ん?あれ?あんたって何したんだっけ?」


「、、、」


「うーん?あれ?ちょっとなにしたのか教えてもらっていいかな?ここからの戦いのテンションに影響するから」


「、、、」


「、、、」


「、、、」


「あ、言わないタイプの人!?じゃもうどうしようもないじゃん。じゃあもう想像で怒るしかないってことか!恨んでたのは間違いないの。そんで私が恨んでるってことはきっとノブナガ関連。あ、そっかこいつ私のノブナガにひどいことしたんだ。じゃあ何の恨みとかもう難しいことはいいや。単純に殺す」


ランの目の色が変わる。


「理由もないのに殺すのか?」


「急にしゃべりだすのかよ」


「ノブナガがそんなに大事か?」


「この世の何よりも」


「、、、そうか。私と同じだな」


光秀はランには届かなような小声で呟く。


「え?なんか言った?」


「いや何も言ってないです。では殺し合いましょうか。私を殺してみてください」


「だからそうするって言ってんでしょ!!!」


珍しくランが声を荒げる。


そして次の瞬間、空に浮かび上がって両手を広げる。



―みんな来て―



ランは眩しいほどに光り輝き、周りにはランの式神たちが集まる。


頭上にはトリ、両サイドにはアニとイモウト。そして更に遥か頭上にえっちゃん。


ラン、スタートから本気の布陣である。



―百鬼夜行―



今度は光秀。


彼の背後におびただしい数の妖怪たちが現れる。


「ノブナガ因縁の相手、明智光秀!今は何なのかよくわからないけど。私が跡形もなく消し去ってくれる!!!というか私の式神たちが!!!!」


ランはノリノリだった。ナチュラルハイと言うやつだろう。歴女でもあるランにとって推しキャラのノブナガを殺した憎き明智光秀と向かい合っているだけでかなりテンションが上がっているのだ。


『やってやりましょうぜ。姐さん』


『やってやるぜ』


『やってやるんだよ』


棒読みだった。式神たちはやけくそだ。


向かい合うのは明智光秀が奪い取ったただのプレイヤーアカウント。でもA・Hによって大名の地位を与えられ中位職についている。




キャラネーム ベルトルト


レベル 486


職業 復讐者リベンジャー


特殊スキル フルカウンター 怨恨 呪い




「それにしてもよく私が明智光秀だとわかりましたね。バカそうな女」


「バカそうな女?イモウトの事かぁー!!!」


激昂したランから途轍もないオーラが吹き上がる。


『いや絶対私の事ではないと思うの』


「お前だけは絶対に許さない!!!イモウトの怒りは私の怒りだ!!!」


『だから私の事じゃないと思うの!』


「オラは怒ったぞー!!!」


『怒るのはわかるけど私の事では絶対ないの!!!』


「ぶっ殺してやるー!!!」


『うん、もうどうでもいいの』


「みんな力を貸して!!!」


『じゃあとりあえず燃やすわ』


呆れたようにトリが空から降りてきて辺り一面を焼き尽くす。というかベルトルト軍の兵を焼き払う。


「なんだと!?」


『燃えた連中を今度は凍らせるぜ』


トリの炎で十分燃えた兵たちを今度はアニとイモウトが凍らせる。


燃えるだけなら耐えられるレベルの兵もいた。だが燃えて凍らされた。これによってどうなるのか。この氷は炎から救ってくれるものではない。あり得ないほどの温度変化。それがもたらすのは人体の完全なる崩壊だ。


兵たちは塵と化していった。


「やってくれたね」


明智、いやベルトルトは崩れ落ちていく配下たちを見てただそう呟いた。


「ええ!?やってくれたとかじゃなくてもう負けじゃない!?お前も今から死ぬよ!?瞬殺だよ!?」


ランは驚いたかのように明智を見る。


「でしょうね。私はずっと負けてばっかりだ」


「うん、ちょっと何言ってるのかよくわからない。とりあえず殺すね」


本当に意味がよくわからないといった感じでランはベルトルト(明智光秀)の心臓を護身用に持っていた刀で突き刺す。


「ごはっ!」


「あんたって何がしたいのかよくわからない。ゲームの中だけじゃなく戦国の頃から。一言で言うとすごいキモいよ。トリ燃やして」


『御意』


ベルトルト(明智光秀)はトリの炎で焼かれていく。



「ノブナガの奥方。あなたは絶対に後悔する。あの第六天魔王に付いて行ったことを!」


「最後の言葉それでいいの?私がノブナガの傍にいて後悔することなんてないよ。私はノブナガが地球を、もしくは宇宙までも滅ぼそうとしたとしても隣にいる。それが私にとっては地球とか宇宙なんかより大事なことだから」


「なぜ自ら破滅を望むのだ!」


「決まってるでしょ。愛よ。私はノブナガを愛している」


「そんなもののために世界の破滅を望むのか!」


「はぁ!?この世に愛に勝るものなんてない。そんな当たり前なこともわからないの?」


ランは本気で信じられないといった顔で明智(現ベルトルト)を見る。


「、、、さすがノブナガの伴侶。お前もしっかりイカレてる」


「ん?よくわかんないけど、死んで。あんたノブナガの邪魔だから。というか私とノブナガの邪魔だから」


「邪魔は貴様だ!」



―怨恨―



ベルトルトはその場でスキルを発動する。


スキル『怨恨』は対象者へ一方的なルールを押しつける。無条件で発動できる代わりに制限時間は短い。それは200秒。


でもその間、対象者はベルトルトに押し付けられたルールを順守しなくてはいけない。というか遵守せざるを得なくなるのだ。


そして今回ベルトルトが押し付けたルールは単純。



―動いてはいけない―



動けない相手を殺すことに200秒は充分な時間だ。


というか十分すぎる。


なんなら200人殺せる。


もちろん策とかそういうのは全くないランは普通に動けなくなる。


そして身動きの取れないランの首を落とそうとベルトルトは飛び掛かる。


身動きが取れないランはこのままなら死ぬだろう。


だが身動きが取れないのはランだけだった。


「なに!?」


式神たちの動きは止まっていなかった。


「召喚主が動けなければ式神たちも動けなくなるはずだろ!」


こればっかりはベルトルト(元明智)にとっても想定外だった。


「いや、うちの式神たちは割と自由だから。そんなガチガチの契約は結んでないんだよね」


「じゃあなぜ式神たちがお前の言うことを聞く!」


「え?まあお願いしたらやってくれるけど?」


「陰陽師と式神にそんな関係性があるわけない!!!」


「まあよくわかんないけど、ウチはそんな感じなんで」


『燃えろ』


『凍れ』


『凍るんだよ』


『キィィィー―――!!!』



―呪い―



死にゆく明智は最後にもう一つのスキルを使う。


最後に呪いを放ったのだ。


明智ももうどうしたらいいのか、自分がどうしたいのかもわからなくなっていた。


むしろそれは本能寺に火をつけた時からずっとだ。


自分の一番大切なものを自分の手で壊した。


明智は壊す前にもう壊れていた。


そんな明智が最後の最後にかける呪い。


それは途轍もなく幼稚なものだった。



―サルが嫌い。サルが好きな殿も嫌い。殿もっと私を見て―



明智はそのまま息絶えたが、呪いは残った。


それは織田信長に自分を一番見て欲しいというだけの歪んだ呪い。


その願いは、その呪いは、秀吉でもノブナガでもなく、ノブナガの最愛の女性へと向かった。



―永劫の眠り―



「え!?あれ?なんだ?こ、れ」


バタッ!


ランはその場に倒れ込み覚めない眠りにつくこととなった。

お読みいただきありがとうございます。


『面白そう!』


『続きが気になる!』


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