ゲーマーという生き方
「殿!戦況報告です!」
A・H軍の武将前田慶次の元へ伝令が届く。
「ふわぁあ。もういいよ。どうせ圧倒的にこっちが勝ってるんだろ?」
「はい!小田原城が落ちるのも時間の問題かと!」
「はぁ~あ、なんてつまらない戦なんだ。圧倒的な数でただ潰すだけなんてよ」
「ですがそれこそが戦なのでは?」
「現実の、いや現代の戦争は確かにそうだ。より強力な兵器を多く持っていた方が勝つ。だが戦国は違うだろ。圧倒的戦力差だってとんでもないカリスマ性を持った王、天才軍師、化物じみた強さを誇る武将。そういった人間が一人いるだけで戦況が変わる。それが面白いんだ。俺はそういうのを戦国に求めてるんだよ!」
「ですが、、、」
「わかってるよ。つまらねぇってだけだ。ちゃんとこのまま滅ぼしてやるよ、ノブナガ軍」
前田慶次が言う通りこの戦はA・H軍が圧倒していた。
「他の連中は?」
前田が聞くのは同じく小田原城を攻めている他の武将たちの状況だ。
「全隊優勢とのことです」
「まあそりゃそうか。ノブナガ軍の武将は強いと有名だが、そもそもの数が違う。それに大将のノブナガ不在、ノブナガ軍が抱える特殊戦力『蝦夷の式神たち』も召喚主と一緒に幽閉中。一発逆転も起こらねーわな」
「この戦で武功をたてた武将はA・H様の新政権でより高い地位に登用されると言われています。殿ならA・H軍の将の中でも一番の戦果を上げれるのではないですか!?」
「何が言いたい?」
「一気に攻め込み、どの武将よりも早く小田原城を落としてしまえば―
「ああ、そういうのいいわ。地位とかに興味ねーんだわ。俺が興味があるのは命がけの戦いだ。こんなつまらない戦いに興味はない」
「ではどうしますか?」
「いや動かなくていんじゃね?まあ向かってくる相手は殺すとしてもあとはここでダラダラしてようぜ。どうせ小田原城なんてすぐ落ちるんだし。俺は寝る。お前らに任せた」
そう言って前田慶次はマジで寝た。
馬を降りて、鎧を脱いで、なんなら持参したマイ枕まで用いて。
ガチ寝である。
「前田様!?」
配下が駆け寄るが、全人全霊で寝に入った前田慶次にそんな言葉は届かない。
圧倒的睡眠。
うん、まあしばらく起きないだろう。
前田慶次は勝ちの決まった戦いに興味はない。
本気で寝に入るほど。
*
前田慶次が寝ているころ他のA・H軍は寝ないで攻めていた。
まあ当たり前だが。
A・H軍の勢いはすさまじく上杉軍もABCD軍も完全に押されていた。
まずA・H軍の武将のほとんどが上杉軍へと向かった。
その圧倒的な戦力差にさすがの謙信もどうすることも出来なかった。
上杉軍が壊滅するのは時間の問題。
ただそれでは上杉軍に匹敵するほどの力を持つABCD軍をどうするのか。
そこにはプレイヤーたちが送られていた。
たった3人のプレーヤーだが、自らの力も率いている兵たちの力も規格外。
そもそも自らの力だけでこの実力主義のA・H軍の幹部にまで成り上がった連中だ。
織田軍の頃から幹部にいてそのまま現在の地位についた武将たちとは地力が違う。
「はぁはぁはぁ」
そんなプレイヤーたちとぶつかり合ったABCD軍もほぼ壊滅状態。
「はぁはぁはぁ」
そこには血塗れのABCDがかろうじて立っていた。
「何なんだ!お前はぁ!!!」
だが激昂してるのはA・H軍の幹部プレイヤー『ハーケンデイル』である。
A・H軍の幹部はNPCとプレイヤーに分けられる。
幹部ということでは同格だが、ヒトラーが戦力として本当に信頼してるのはプレイヤー側の幹部『ライプシュタンダルテ』。
たった4人の選ばれたプレイヤーだ。
彼らこそが本当のA・H軍最高戦力。
「お前と同じプレイヤーだよ。言わなきゃわからねーのか?ちゃんと画面見よーぜ」
「クソが!そういうことを言ってんじゃねーよ」
ハーケンデイル率いるA・H軍はABCD軍をほぼ殲滅し勝利は目前というところ。いや、もうすでに勝利していると言っていい。ならばなぜハーケンデイルはこんなに取り乱しているのか。
思い出してほしい。ここには3人の幹部プレイヤーが赴いていたことを。リーダーはハーケンデイルだったが各々の実力にそこまでの差はなかった。ではなぜ他の二人は話に出てこないのか。名前さえもだ。
答えは簡単。死人の名前など知ったところで虚しくなるだけだから。
「はぁはぁはぁ」
そう、ABCDは圧倒的不利な状況、間違いなく負けるとわかった時点で標的を絞った。自軍の兵には出来るだけ耐えろと指示して自分は敵将の首を獲る為だけに動いたのだ。
ABCDはすぐに分かった。自分たちを攻めてきている軍はプレイヤーたちのものだと。なぜわかったのか、言語化しようと思えばできるかもしれないが、そんなことをしてる暇はないのでABCDはあっさりという。勘だと。
そしてA・H軍で兵を率いるまでに至っているプレイヤーならばNPCの武将たちよりも厄介だ。
だからABCDはこのプレイヤーたちを殺すことが最も有効だと考えたのだ。ノブナガ軍が逆転するためには。
「俺は最後まで見れないのかもな。でもこれぐらいやっておけば、お前なら簡単に天下ぐらい取り返して見せるんだろ?ノブナガさん」
ABCDは自分の命はもうとっくに諦めていてた、だがノブナガ軍の勝利は一切諦めていなかった。
そんなABCDとは違い、圧倒的勝利で終わると思っていた戦いが辛勝で終わろうとしているハーケンデイルの心境は穏やかではなかった。
「な、なにマジになってやがるんだ!所詮ゲームだぞ!どう考えてもお前らに勝ち目なんかないんだからすぐに諦めろよ!悪あがきしてなんの意味がある!」
その言葉を聞いてABCDはハーケンデイルを睨みつける。
「舐めるなよ、クソ野郎。確かにこれはゲームだ。というかゲームだろーが、最初から。だから始めたんだ」
「はぁ?」
「俺はこのゲームの中で夢を見つけた」
「夢?ゲームで夢ってなんだよ!ははは!!!」
ハーケンデイルは大声を出して笑うが、ABCDに一切の動揺はない。
「夢なんてどこで見てもいいだろ。俺からしたらゲームごときに一歩引いて予防線張っているお前の方が惨めに見えるぜ」
それどころか鼻で笑って見せた。
「なに!?」
「現実でも仮想現実でもなんでもいい。本気でやってるものに言い訳を作るなよ。だせーぞ」
ボロボロの身体で、かろうじて立っていられる状況で、それでもABCDは不敵に笑う。
「たかがゲームで何マジになってんだ!!!意味なんてねーだろーが!!!」
「そうやって自分を守るのか?臆病者」
「なんだと!?」
「意味がない?本物じゃない?ふざけるな!本気でやったなら全て本物なんだよ。本気になれないお前は戦う前から負け犬だ。プライドだけ着てる惨めな飼い犬。ほら来いよ、その意味ねぇプライドひっぺがしてやる!」
―従魔剣―
ABCDがそう言った瞬間、彼の元へとおびただしい数の従魔たちが次々集まってくる。
そして押しつぶし合い、肉塊が生まれる。そして全ての従魔を飲み込んんだ巨大な肉塊が今度は剣のような形へと無理やり変化していく。
「ぐぎゃあああおおおお!!!!」
獣たちの断末魔と共に生み出されたそれこそが従魔剣。
切れ味などない。
使いやすくもない。
重い。
臭い。
2日も経てば腐って消える。
ただ内包する妖力は見た目通り化け物級だ。
「さあ、あとはお前の首貰って死のうかな」
従魔剣を構えるABCD。だがもう従魔剣を構える力もないABCDは剣に身体が持っていかれふらついている。だがそれでもその目は全く死んでない。ぜーんぜん。
「バカじゃないのか?お前。ただのゲームに本気になって恥ずかしいと思わねーの?」
そんなABCDを見てハーケンデイルは蔑んだように笑う。
「はぁ!?ゲームだからこそ本気でやってるんだろうが!本気でやらないゲームの何が楽しいんだ?」
だがそんなハーケンデイルをABCDは笑い返す。
「楽しい!?」
「さっきから何言ってんだ、お前。楽しむためにやるのがゲームだろ。そして本気でやらない物の何が楽しいんだ。ん?お前ゲーム初心者?」
ABCDは逆にを見下す。そしてさらに捲し立てる。
「ゲームをゲームだとバカにしてる奴らにこの世界は攻略できない。野球だってサッカーだってバスケットだって、全部ゲームだ。本気でやるからゲームは輝く。それが何のためになるか?そんなことに興味はない。お前は最後まで『ゲームなんだから』と言い訳がましいことを言いながら死ねばいい」
「まるでもう勝ったみたいな言い方じゃねーか!精神論なんてどうでもいい!ゲームの勝敗なんて数字で決まるんだよ!」
「はぁ!?数字でも圧勝なんだけど?」
「はぁ!?」
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