ノブナガと忠臣伊達政宗
今まさに徳川軍との戦が始まった。
先行するのは伊達政宗軍。幸村は遊軍として動いている。私はノブナガと本陣にいた。
「向こうは本多忠勝が先陣を切ってるわね」
「お前の予想通りだな、謙信」
「いや誰が考えてもわかるでしょ。でも本多忠勝自身の力は未知数よ」
「そこは政宗に頑張ってもらうしかないな」
「そのためには幸村が出来るだけ早く榊原康政率いる回復部隊を壊滅させないとね。回復なんてされたらいつまで経っても終わらない。ねぇ、ノブナガはこの作戦、正直成功すると思ってる?」
「分は悪い。だが俺たちはそもそも囮だ。時間を稼げればいい。徳川を滅ぼすのは背後から奇襲を仕掛ける式神たちだ」
「そうね。私たちの役目は徳川軍の目をこちらに釘付けにすることだったわね」
「、、、まあそんなところだな」
「何か含みのある言い方ね」
「いいから今はただ戦え。セイレーンが上空に上がればウヌカルから連絡が来る。それまではただ戦うだけだ」
「確かにそれしかできないか」
今ランは海から三河に入ろうとしているからセイレーンによるモールス信号は使えない。それでも奇襲をしかけるには少数で大きな力を発揮できる式神が最も適任だった。
大軍で海から上陸しようものならすぐに気付かれ、沈められる。
だから今は式神軍を信じてここで戦うしかないのだ。
*
「ノブナガ軍など我らだけで退けて見せるわ!!!」
本多忠勝は長槍を振り回し物凄い勢いでノブナガ軍を屠っていく。まさに一騎当千。
だがノブナガ軍にも一騎当千の男がいる。
「ノブナガ様に任された一番槍だ。俺が出鼻をくじくわけにはいかない」
伊達政宗もまた三河兵を次々と斬っていく。
この一騎当千2人がぶつかり合うまでにそこまでの時間はかからなかった。
「貴様が本多忠勝だな」
「お前がノブナガに寝返った田舎大名、伊達政宗か」
互いにわかっていたからだ。
この戦に勝つためには目の前の男を倒さなくてはいけない。
そして互いの王はそれをさせるために自分たちを一番槍としたと。
だから退く気は互いにない。
〝伊達政宗VS本多忠勝〟
伊達政宗
レベル 372
職業 武王(中位職)
本多忠勝
レベル 378
職業 武王(中位職)
偶然にも同じ職業のぶつかり合いとなる。
上位職はその人物の個性が反映され同じ職業は生まれない。だが中位職はざっくりと分けられるので。同じ職業も存在する。
「俺たちの力はほぼ互角って感じだな。まあ何となくだが」
忠勝の強さをシステム的に感じ取った政宗は刀を抜いて構える。
「こちらも何となくだが、思ってることは大体一緒だろう。だがお前が強かろうが弱かろうが俺には関係ない。俺の選択肢は一つだけ。お前を殺す」
「つくづく気が合うな。俺もお前の事なんてどうでもいい。ただお前を殺すだけだ」
「来い!ノブナガの犬!」
「犬?違うな。俺はノブナガ様の竜だ」
政宗は誇らしげに笑みを浮かべる。
静寂
一瞬の静寂を合図に二人の強者たちの剣と槍がぶつかり合った。
ガンガンガン!!!
そのまま何度もぶつかり合う。
「なるほど、強いな」
「貴様もな」
二人は睨み合い、一呼吸おいて再び剣と槍をを振りかぶる。
「うおおおおお!!!」
「おあああああ!!!」
凄まじい攻撃の応酬が始まる。
その辺の兵であれば一振りで数十の兵が吹き飛ぶような威力。
それが何度も何度もぶつかり続けている。
その余波で二人の周りの兵たちは吹き飛ばされ、そこには二人きりの決闘場が自然と出来上がっていた。
*
「始まったみたいだな」
激しい戦闘音は本陣に構えるノブナガの耳にも届いていた。
「ここがまずは初戦ね。勝てれば一気に優位に立てるわ」
「ああ」
「でも私が見たところ、本多忠勝のほうが若干優勢よ」
「まあそうだろうな」
「そうだろうなって!大丈夫なの?」
「信じるしかないだろ。この戦に勝つためには本多忠勝はどうしても潰しておかなきゃいけない。そしてそれができるとしたらうちでは政宗だけだ」
「確かにそうだけど、、、」
「政宗にはもう頼んである」
「え?何を?」
「死んでくれと」
*
徳川と戦うことを決めた時、ノブナガが最初に訪れたのは伊達政宗の元だった。
「殿、二人で話したいとは一体何用ですか?」
自ら尋ねて来たノブナガに対してその真意を政宗は聞くが、なかなかノブナガは口を開かなかった。
「そんな顔しないでください。わかっています。あなた様は命令をすればいいだけですよ」
政宗はにこやかに話しかける。政宗はノブナガが自分に求めようとしていることが分かっていた。
「、、、徳川にはお前と同じ一騎当千の男がいる」
「本多忠勝ですね」
「ああ」
「本多忠勝は確実に討ち取らないといけませんね」
「ああ」
「ですがおそらく私では勝てませんね」
「ああ」
ノブナガはずっと俯いたまま返事をしていた。
「ただ勝てなくても殺すことはできます」
「、、、ああ」
「ならばご命じ下さい」
「、、、」
「死ねと」
「くっ!」
ノブナガは顔を歪める。
「第六天魔王であられるノブナガ様が何をためらわれるのですか。勝利のために私の命をお使いください」
真っすぐな目で伊達政宗はノブナガを見る。
「昔の俺なら平気で家臣に死ねと言えた。それが勝利の、天下のためなら。だが何でだろうな。言葉が出ない」
その通りだ。ノブナガは勝利のためならいくらでも殺してきた。生身の配下たちを。そしてそれに何も思ったことはなかった。なのに今は伊達政宗に対して「死ね」という一言が出てこない。死んでほしくないと思ってしまっている。ただのAIである伊達政宗にだ。そんな自分にノブナガ自身が最も困惑していた。
「もしかしたらノブナガ様は武将として弱くなったのかもしれません。ですが天下人には近づいたと私は思いますよ。でも今はご命じ下さい」
「、、、」
「部下を犠牲にすることに対して何も思わないのは暗君です。ただ部下の覚悟を蔑ろにするのもまた愚かですよ?死ねと言ってください。そして天下をお取りください」
「、、、必ず、必ず天下を取る。だから、だから、、、政宗、、俺のために、、死んでくれ」
「承知いたしました」
絞り出すように発せられたノブナガの命令を伊達政宗は了承した。
「すま―
「そんな言葉はいりません。天下を」
「誓おう」
「その言葉が何よりもの誉れです」
「、、、頼んだ」
「お任せください」
伊達政宗は嬉しそうに笑みを浮かべた。
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