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ダンジョン・イン・アナザーワールド  作者: 風ビンくん
第2章  〈白なる葬願者〉
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第2章47 血垢

とりあえずこっちを先に更新します


 

「ざっと30匹、余裕だな。――開放」


 叫んだり或いはドラミングをして威嚇する猿達に囲まれたミナトは、冷静に頭数を数えて魔装具を引き摺り出す。


 瞬間、前から飛んできたのを屈んで避けると、その腹に深く刺した。

 そしてそのまま右に振り抜いて炎を吹き出させる。


 炎に包まれる猿達。

 後ろからのタックルをバック宙で回避すると、深く突き刺した脳天から背中にかけて裂いていく。


「おっと」


「ガッ」


 視界の端から飛び出してきた腕。それを上体を反らして避けると、その右脇に突き刺す。

 そして呻き声をあげさせる間もなく右拳で殴り飛ばした。


 巻き込まれて吹っ飛ぶ猿達。

 同時に跳んできた猿の脇腹を刺し、後ろの奴の顔面をノールックで蹴り飛ばした。


「眉間命中だ」


 逆手に持った魔装具を全力で投げると、遠くの猿の額に突き刺さった。


 ――相手は丸腰。そう判断した猿達は一斉に襲い掛かる。

 だがミナトは冷静に相手の両拳を受け止めると、その場で勢いよく回転して周りを蹴散らしていく。


「ギャーギャー……うっせぇんだよ!!」


 猿特有の威嚇声が響き渡る中。

 掴んだままでミナトが跳び上がると、空中でお互い逆さまになる。

 その状態で足の甲を相手の顎に蹴り入れると首が山形に折れ、そのまま地面にめり込んだ。


「また汚れちまった、よ!」


 ――散り上がる脳汁。

 ビチャビチャと自身の顔にかかるのも気にせず、勢いをつけて前方に飛んだミナト。

 その頭突きが真っ直ぐ鳩尾に抉り込んだ猿は吹き飛び、周りを巻き込んで一つの団子になった。


 予想外の力に怖気ついた猿、痛みで蹲る猿。様々な感情が入り乱れ、現場は荒れに荒れている。

 追撃を仕掛けるなら今しかない。そう即座に判断したミナトが走ったその時――、


「――ぁ」


 足元で転がっている猿の死骸が目に映った。腹を横に裂かれ、傷口が赤焦げた猿の死骸。

 

 瞳孔が開く。その無残な肉身にどこか愛しみすら感じてしまう。鼓動が速まる鼓動が速まる。

 どうしようか。運が悪ければクリスに見られてしまうかもしれない。そうなればきっと周りから軽蔑をされてしまうかもしれない。


 ――だが、この誘惑に耐えられそうにもない。


 よたよたと歩み寄るミナトは、唾液を垂らしながら耐えれずソレに右手で触れた。その瞬間――、


「――ガ、ァアァァアッ!!」


 全身の血管に溶けた鉄が流し込まれた様な感覚が押し寄せ、胃袋が痙攣する程の満足感で魂の形すら認知してしまう。


 満ちる、満ちる、満ちる。この敏感な体に宇宙が宿る。


「ぐぅ、あ」


 猿達の目には奇妙に映ったであろう。

 突如、優勢に立っていたミナトが狂気的に叫んだ後、涎を垂らして動きを止めたのだから。


 ――当然その隙を見逃す訳がない。

 全身が爛れた猿は足を引き摺りながらも近付き、全力で両握り拳を振り下ろそうとする。


「――――」


「――ッ」


 ミナトはただ殺意を込めて見上げた。ただ、それだけ。

 それだけで相手の野生本能を呼び起こさせ、全細胞の動きを封じた。ここ暫く感じた事がない恐怖で身を凍らせたのだ。


 静寂流れる空間の中。

 隙だらけの土手っ腹に右手をゆっくり突き刺すと――、


「ァギャアァアッ!!」


「――昔ウインナー嫌いだった事を思い出させんじゃねぇこの猿ッ!!」


 ――遠慮なしに腸を引き摺り出した。


 激痛と内臓の喪失感に声を裏返して叫ぶ猿。

 それが崩れ落ちる前に別の頭にかぶりついて噛み千切ると素早く咀嚼する。


 そして脳みそと頭蓋骨でパンパンの口の中に、更に鷲掴んでいる腸を捩じ込むと狂気的に啜った。


「ウインナーじゃなくてうどんだったかァ? 随分とクソみてぇな味だッ!!」


 途中で噛み切ったミナトは、口からぐちょぐちょと音を立てながら叫ぶ。


 鮮血が腹から流れ出て崩れ落ちる猿。

 そして適当な別個体の左手指を2本ずつ掴むと一気に裂き切った。

 中指と薬指の間の裂かれ目から飛び散った血潮がミナトの顔面をビタビタと覆っていく。


 ――ずんと一気に蒸し返す熱乱。

 しかしミナトは一切その雰囲気に飲まれる事なく、同じ奴の右肘を蹴り折った。

 続け様に首を掴むと、100kgを超える体重の猿を軽々と持ち上げる。


「俺は昔から世界一の力持ちだテメェはどうだカス」


 吐き捨てる様に言ったミナトの手の中に細かく振動が伝わってくる。

 痛みと出血量が限界を超えたのかもしれない。だが、容赦をするつもりはハナからない。


 その時、なんとか仲間をミナトから引き剥がそうと、猿が3匹ミナトにしがみついてきた。

 背後から首に腕を巻き付けたり、脚を引っ張ったり肩に噛み付いたりするが全く動じず。


「腹が、減るなぁ」


 しかしミナトは噛み砕いた内容物を相手の顔面に吹きかけると、何度も何度も顔を殴りつける。

 最後に歪んだ顎を掴んで勢いよく横に振り切り、その首をへし折った。


「――開放 閉塞ッ!!」


 右腕を伸ばして魔装具を引き寄せると、噛み付いていた猿を縦に真っ二つで殺し、背後の奴の頭を刺し殺す。

 そして適当に足を振った後に飛び上がると、突然天井に向かって蹴り上げた。すると――、


「勘ってモンは何かをブチ殺す為に有るんだよなぁ」


 左の壁がガコンと音を立てて開いた穴。

 そこから猛スピードで尖った鉄柱が一本突き出すと、重い金属音と共に何匹も貫いた。


 これはいわゆる罠というものであり、全ての迷宮内に最低一つ以上は存在する。

 そしてこの罠こそが魔装具回収で一番の障害となるのだが、今の殺し合いには関係ない。


 ――ミナトの常軌を逸した勘。それがここでも発揮したのだ。


「ラァアッ!!」


 全身に力を入れてズンと落ちるミナト。

 突然の出来事に狼狽える猿の頭を踵落としでカチ割ると、素早く集団の中心に移動した。


 それから魔装具を逆手に持ち、ギュンと回転して周囲の首を連続で掻っ切っていき、最後はこめかみに突き刺す。


「やるよ生ゴミ捨ててこいッ!!」


 死骸の厚い首皮を左手で鷲掴みにし、集団に投げ飛ばしながら魔装具を抜き取る。

 また、背後から勢いよく伸ばしてきた腕を叩き逸らすと脇を裂き、そしてガラ空きになった背中を袈裟斬りにした。


 ――圧倒的な実力差。

 それにも関わらず、突っ込んできた愚か者の眼前に剣を突きつける。

 そのままミナトはにじり寄り、相手は後退りし始めた。


「アハハハハッ!」


 突然、魔装具を下ろすと相手の頭上スレスレを跳び上がる。

 そしてすれ違い様に眼球奥深くまで指を突き刺すと、笑いながら更に捩じ込んだ。


 あまりの激痛に全身をビンと硬直させる猿。

 故に固い瞼ヒダに指を引っ掛け、それを軸に方向転換をかけたミナトはグンと下がる。

 最後に右膝を立てて着地し、その勢いのまま頸椎を当てぶつけ折った。


「何、ウキウキはどうしたウキウキは!? 猿ならテンション上げろよほら早くブチ殺すぞッ!!」


「――ッ」


 一匹一匹、確実に屠っていく。

 あれ程に盛り騒がしかった現場はいやに静かになり、食欲と闘志でメラついていた目には濃い恐怖がぬめりと張り付いている。

 それはそうだろう、2分も経たずに僅か7匹まで自分達が減らされていたのだから。


 膝上の死骸を投げどかし、イカレた情緒のまま剣先をこちらに向けるミナト。


「あー。ぁー。アハハッ! ハハッ……言わねぇのなら殺す」


 急に無表情になったミナトは氷の様な声色で言葉を発し、生き残り達を震え上がらせる。

 野生的とも機械的とも言えぬ独特な雰囲気を纏う目には、最早ただの "餌" しか映っていなかった。


 ――殺す。

 ミナトは欲望のままに突っ走る。


「猿肉マジぃけど喰わせろッ!!」


 もし獣が言語を取得すればこの様な生物が生まれるのだろう。

 ただ只管に血を求め、肉を貪り、脳をつんざく快楽に身を捩らせるのだ。


 人の形をした怪物が手を伸ばして魔装具を振るうと、ある1匹の猿が左腕を犠牲に盾とした。

 そしてその猿を含め、7匹の内でも屈強な3匹だけその場に残り殿を務める。

 本能で個よりも集を選ぶ決断をしたのだ。


「邪ァ魔だどけェエェェエッ!!」


 自然の摂理など微塵も興味もないミナトは更に力を込める。


 食い込む肉。軋みを上げる骨。ド太い腕からミチミチと音が鳴るにつれて溢れる鮮血。

 この痛みに耐えて作った隙に仲間が相手の背後に回る。だが、逆手に持った剣で腹を突き刺された。

 が――、


「……あ? なんだテメェ」


 突き進もうとした途端にぐっと後ろから引っ張られ、睨みと共に振り返るミナト。

 するとそこには、ミナトがこれ以上動けないように両手でガッシリと魔装具を掴んでいた猿が居たのだ。

 

 ――命を犠牲に奪い取った一瞬の隙。


 待っていたとばかりにミナトの横っ面を全力でブン殴るが、現実はあまりにも無情。

 ギロリと睨んだミナトは冷静に後ろを蹴り飛ばすと強引に引き抜く。

 そしてすぐに魔装具を持ち直すと左へと振り抜き、赤炎を放出した。


 瞬きする間も無く炎に包まれ、鋭い痛みと絶望感の中で暴れ回る猿。

 続け様に残りの1匹の首に刺すと、そこから円を描く様に掻っ捌いていく。


「ァガ ァ」


「死ね。そのまま」


 今死にかけている猿の頭を踏みつけると、そのまま力を入れて潰す。


 ――そうして最後の殿は生き絶えた。


 だが、それでも仲間達が逃亡する時間は稼ぐ事が出来た。既にミナトとの距離は随分と離れている。

 例えミナトが全力で走っても時間がかかるだろう。故に生き残り達は少し心に余裕を持てたが――、


「――召喚。爆灯鼠4」


 上げた左手の間に黒鼠が濃い影の中からボコボコと誕生する。

 そして魔装具で導火線の尻尾に火をつけると、大きく振りかぶって投げた。

 それらは丁度逃げていた猿達の間で爆発し、短い絶叫を轟音が覆い隠す。

 

 飛び散ってきた目玉のカスがミナトの頬を掠り、風に乗って漂う異臭と黒煙。


 ――3分27秒。ミナトが制圧を完了した時間である。



© 2022 風ビン小僧

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