94話:冒険者たち
尻尾収納の件は、ギルマスから了承の返事をもらえた。
価格も決まった。
あ、ギルマスにこの種を見たことがあるか聞いてみよう。
「サブロー!」
「・・・なんですか、なんか嫌な予感が。」
「変身してみて。」
「いやです。」と言って去ってしまった。
「(だったら、)・・・。タロー、ジローちょっと来て。」
(蒲焼きを手で食べ・・このタレ、かなりべたつくのよ。潔癖君に頼んでおこう。)
「話せるようになった?」
頷く二人。
「元の姿になってみて。」
「!!!な、んだ、この生き物・・蜥蜴?・・鳥?」
「もういいわ、ありがとう。人間体になって、しっかり食べてね。」
コクっと頷き、美女に見える♂になって蒲焼きのテーブルへ戻っていった。
「つまり、見たことないのね。」
「あ、あ・・・どこにいたんだ?」
「え・・・さあ・・?」
「おい!」
クックとフィン、ベン邸の料理人に捕まった。
秘伝のタレが気になるらしい。
「主に醤油、みりん、酒ね。」
「獣人が好む、調味料ですか、ふむ。」
「あのタレは、継ぎ足して継ぎ足して何十年も使っていくものなの。
でも、衛生面には配慮が必要と思うわ。」
「なるほどな。・・他にも応用がききそうだ。」
料理人たちで盛り上がりそうだったので、そっと席を外した。
俺たち冒険者5人は依頼を受けて今日ここへ来た。
朝食は、美味しかった。聞いていた通りだ。
撫子さんという女性が、俺たちを子供たちに紹介した。
午前中は、庭で、算術の勉強だった。
青空教室というらしい。長いテーブルと椅子が用意してある。
俺たちにも計算してみろと言うのでやってみたのだが、答え合わせをしたら子供たちに負けていた。
撫子さんの俺らを見る目が・・・。いたたまれない。
俺が間違えた部分を指し「ここ、見りん!こんなとこで間違えとったらわややん。」
「?」
何処からか、「ごはんよ〜。」と聞こえた。
あ、昼飯!なにが出てくるんだろう・・・。
「ちょい、ちょい!聞いとる?」
「あ、はい、すみません。」
「はよ、机つって。」
「?」
「机と椅子を片付けたら、飯だ。」とヴァイスにぽんと肩を叩かれた。
昼ごはんも美味い。
「お前たちは運がいい。数時間後に、蒲焼きパーティーがはじまる。美味いらしい。」
と聞き、仲間たちと喜んでいた。
子供たちが
「姉さまが殺した蛇を食べるんだよ。」「エースが食べられた蛇だよ。」などと言う。
俺たちは顔を見合わせ、ああ、あ・の・・・と理解した。
子供達が大なわとびをするというので、俺たちは撫子さんの指示のもと、縄を回し始めた。
子供達が一人、また一人と入ってきて、仲良くジャンプしている。
俺たちは、この遊びを知らなかった。
一緒にやってみたら、楽しい。本気で楽しんでしまった。
そうこうして童心にかえっていると、芳しいにおいが漂ってきた。
これが蒲焼きを焼いているにおいらしい。
例の蛇とわかっていても期待してしまう。
結果、ものすごく美味かった。俺たちは、ガツガツ食った。
冷えたエールはこんなにうまいんだと感心した。そして蒲焼きとよく合う。
蒲焼きを食うとエールが飲みたくなるのだ。
周りの子供たちの食いっぷりもいい。
「あ、姉さま!」「ジン姉、すっごく美味しい。」
「ふふふ、でしょう?」
!!!
この美少女が子供達の言う、姉さま、お姫さまか。そして、あの映像の。
人間なのか?きれい過ぎる。実際に見ると・・すごいとしか・・。
仲間たちも固まっている。
「弟妹たちがお世話になります。3日間よろしくお願いしますね。」にっこり
!!!!!
俺たちは、とっさに言葉が出ず、コクコクと頭を振った。
そして、お姫さまの後ろで茶色のものが動いていた。
「ラースだよ。」とマロンが教えてくれた。
お姫さまのペットか、と思っていると、そのペットがひょいと顔を向けた。
「「「「!!!」」」」「うわっ、ば、ばけも」
お姫さまが、そいつをキッと睨んだ。
そいつは、口を噤んだ。
「あ〜あ、知ーらないっと。」「バカだな~。」子供達が小声でなんか言っている。
「蛇の蒲焼きはお口にあったかしら?」
「は、はい。」
「こ、こんなに美味いもの食べたの初めてです。」
「こ、この冷えたエールも最高です。」
な、何だろう?微笑んでる美少女から、なんか、、、
蛇に睨まれたカエル状態?俺ら・・・
「あなた達は、運がいい。」
「・・?」「・・・。」
な、なんか怖い・・・この場から逃げたくなって、誤魔化すようにエールをあおった。
余計なことを言ったやつも同じようにエールを・・
お姫さまは、俺たちが食べかけの蒲焼きを指し、
「そこ、ちょうどエースが溶かされていた部位。」
「「ブーーーーッ。」」
「では、おさらばえ~。」




