85話:付属界にて(その2)
ここに来て、もう3ヵ月が経とうとしていた。
ジン「もう飽きた!!帰りたい!ここには獣人族の集落もないし。
でもここでは、たぶん『変化』しない、とわかったことは収穫だわ、直感のようなものだけれど。
だからと言ってどうというわけでもないけれど。その事実の生かし方が浮かばない。
アラタ「俺は、まだまだ居られるけれど。
蓮「俺も平気。
ジン「2人ともいい顔つきになったわね。百戦錬磨よね〜。
蓮なんてはじめは一方的に食われてたけれど、今は師匠以外にも手を出しているわよね〜。
愛らしかった蓮がね〜獣系とはね〜。
蓮「おい、誤解されるような言い方はするな。師匠ごとに、『突き抜けて得意』なものが違うんだよ。
だから!
ジン「羨ましい。
蓮「はあ??
ジン「何があるかわからないから、変身も分身体も封印しているけれど、男になれれば・・。
アラタ・蓮「・・・・・。
ジン「闘う妖精猫の王子様に、鬼神と見紛うばかりの闘気を纏う美麗な鬼人。2人も色気付き。
見る人が見たら、堪らないでしょうね。冗談はさておき、頼もしいわ、二人とも。イロイロ、と。
そうねえ、女性用の娼館も用意しようかしら。
アラタ「・・・それより、ジン、ヴィオが死に戻りしたと聞いたけれど?
ジン「っ・・・守りきれなくて情けないわ。
蓮「赤子の時の記憶はなくすものだろう?ならトラウマにならなくてよいじゃないか。
アラタ「確かに。俺ら、時々魘されているよ。
ずっとインドア派だったのに、今では戦える鬼人。兄者が驚くだろうな。
蓮「俺も元の世界に帰ったら驚かれるだろうな。
俺たち種族は個々の戦闘力は低い。だから、精霊体に戦ってもらうんだ。
でも、今の俺は戦える、大切なものを守ることができる。
(蓮は、実体があるってことか。)
アラタ「蓮の戦闘力は高い。闘う姿を見たけど最高にイケてたよ。
蓮「フン、俺を誰と心得る!
(ブハッ、時代劇調に聞こえるのは俺だけか?)
アラタ「で、ジン?ヴィオのこと詳しく聞きたいんだけれど。
ジン「(いつに間にか姫からジン呼びになったわね。まあいいけれど。)
ああ、ヴィオのことね、我の懺悔を聞け!やろうども!!
蓮「聞いてやろうじゃないか。
アラタ「右に同じ。
ジン「柊が鍛錬中、ヴィオの下半身は、あっぱあぱあ(*)なわけよ。背中におぶってると、
まあ、チョロチョロかけられたり・・。で、首が座ってから、飛行魔具装着して飛んでもらうってのがここ最近の日常で。ヴィオは、私にべったりだからと自惚れていたら、
蓮「いなくなっていたと?
ジン「そう。私も召喚魔法陣に熱中していて、気配察知できてなかったみたいで。
(きっと、自分を見てくれないジンの注意を引きたかったんじゃないか。)
(だな、あの赤子、なかなかにあざといぞ。)
ジン「即見つけたんだけれど、消滅する瞬間だったの。で、今この通り。
俺たちのそばに、自力でふよふよ浮いている赤子がいる。飛行魔具なし。
ジン「ヴィオを消滅させた相手が、珍界にはいないもので、前傾二足歩行の蜥蜴、鳥羽付き。
ヴィオが消えると、ケケケケケと笑いやがったの!
蹴り殺してやると、殺気を出したら、逃げられた。
驚くほど、足が速い!呆気にとられた、この私が。
アラタ「駿足なのかな。
ジン「なんとなく外見からその言葉は、不適切なような・・。逃げ足の早い泥棒?
「「ええぇ・・」」
ジン「でもあの姿、何かに似ているような・・。
蓮「怪獣?」
アラタ「恐竜?」
ジン「ああ、そう、そういう系よね。サイズは人族より少し大きいくらいだけれど。
今日まで見たこともなかったから、夜行性かも。
ケケケ怪獣と呼ぶことにするわ。珍界に連れて帰ろうかしら。」
「「え!・・。」」
ジン「まあ、明日からあいつら、実験に使うわ。
それから、ここでの防御魔法はタブーと決めたのは私だけれど、ヴィオには許可しようかしら。
(ヴィオはジンにとって本当に特別なんだ。)
(赤子でもあるしな。)
(それにしても、あまりに退屈だから明日からなりきりコスプレで悦に入ろう。)
(*)丸出しのこと
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翌日、いつもの反省会中。
蓮「ジン、それがコスプレか。
頷くジンフィーリア。そして、どこかへ。
梢「我らが忍者装束姿なので、姫も同時代のお姫様になると仰せられ・・・。
柊「髪も自分で器用に結っておられ、あのように簪も沢山創ってさし、その、良い出来なのですが・・
(花魁・・。)
アラタ「そ、それにしても梢も柊も再現力高いね。その服も自前でしょ?
梢「左様にございます。我らは服も含めて変形時に構築します。
柊「魔法使用時、印を結び発動させるのですが、姫様に褒めていただきました。なりきり度が素晴らしいと。
梢「ですが『ござる』言葉を我らが使わないことが、殊の外ご不満のようです。
アラタ「使ってやればいいじゃないか。
「「いやです!」」
蓮「・・い、印を結んで発動とは、詠唱の代わりか?
柊「いえ、ちゃんと忍法〇〇と言ってから発動させますよ。
それに無詠唱で魔法は使えます、当然印を結ぶ必要もありませんが、我らの拘りです。
アラタ「・・なりきり、なんだ・・・。
梢「ただ、水遁の術をやる気はないです。
柊「そう、我らには、意味のないものです。地味すぎます。
「「・・・。」」
梢「姫様に我らの歌を作詞作曲していただいたのです。曲名は『スラ忍参る!!』です。
柊「邸へ帰還したら、披露するつもりです。
梢「蒲焼きパーティーで歌えと言われました。振り付けも姫様が考えてくださったのです。
アラタ「そ、そう・・。」
蓮「そうか。楽しみだな。」
柊「はい、乞うご期待あれ!!では私は任務に戻ります。
(任務・・オムツの任務か・・伝説級のスラ忍がもったいない。)
(アラタ、大切なお役目だ。)
(蓮は、頭から被ったからな。しかも、おっきい方。)
(黙れ!!)
梢「拙者は、お師匠様方に奉仕してまいります。柊の分も。
(触手ぷれい?)
ジンフィーリアが戻ってきた。
ジン「蓮、わっちの父上のこと思い出したかえ?
蓮「・・ク、クッキーの青年だったな?会えばわかると思う。ここから帰ったらすぐに会いにこう。
ジン「ありがとでありんす。
(くっ、それ合ってるの?やっぱりお姫様じゃあないよ。)
ジン「では、おさらばえ〜




