82話:ジンフィーリアの弟妹たち
別邸にて初めてのお泊まりをした翌朝の朝食後、子供たちとジンフィーリア。
ジン「あなたたちの姉になりたいのだけれど。」
子供達「「えっ? 」」「「っ!」」
ジン「衣食住の保証は当然のこと、学問と礼儀作法を学ぶのは絶対やってもらうわ。
オーリ「礼儀作法?」
ジン「そう、将来役に立つわ。学んでおいて損はない。
私は、あなたたちに『生きる力』を身につけてほしいの。
もし、私がいなくなったとしても、あなた達が生計を立てられるように。
私がこれからやろうとしていることには、危険が伴う。
だから、私とは生活せず王都の孤児院で暮らすという選択肢もある。
獣人の子が入れる孤児院を帝都に作るわ。
それから、私は、好きなようにやりたいように生きているの。
人の話は聞かず、言いたいことだけ言って去る、というのが日常茶飯事。
この私といると、毎日飽きない生活が送れるけれども、振り回されるわよ〜。
以上のことを納得し私を姉として受け入れてほしいの。」
グレイ「えーと、まとめると。学問と礼儀作法を勉強すること。
ここでの暮らしには、危険がつきまとう。
お姉さんは、わがまま・人の話を聞かない・突っ走る(?)性格。」
ジン「グレイは賢いわね。グレイの言うことで合っているわ。
どうかしら?私を姉と呼んでくれる? 」
オーリ(お姉さんに抱かれたヴィオは、安心しきって眠っている・・。)
ラーン(ごはん美味しかった。)
マロン(ふかふかの布団で寝たのはじめて。)
グレイ「俺は、勉強したい。姉様は興味深いし一緒にいたい。」
「姉様。私も。」「ジン姉僕も。一緒にいたい!」「姉さま、俺も!」
ジンフィーリアは、一人一人をぎゅっと抱きしめた。
「姫さまの一族の楓です。指輪の使い方を教えます。
ヴァイスを含め5人の指輪は他者に渡すものより機能の良いものです。内緒ですよ。優越感に浸ってください。」
「「「「「???」」」」」
聞き終えると、早速子供達は通信機能を試し、はしゃいでいる。ヴァイスも同様に。
「はーい、注目。百合っす。基本中の基本の!勉強をはじめるっすよ。」
(文字を教えてもらえるんだ。嬉しい。)(注 : グレイ)
(それにしてもジンの一族というのは、美男美女揃いだ。しかも極上の。もちろんその頂上はジンだが。)
そして、広げた百合の手のひら、指の間には玉が4つ。
「これは、映像を記録する、まんま記録玉っというっす。これを、指でこう上に向けて弾くと・・このように、スクリーンが現れて視ることができるっす。」
「「「「「!!!」」」」」
「翡翠館に住む子たちを紹介するっす。
この子がニーナ、双子のマミとミミっす。今日から一緒に勉強するっす。」
「「「はーい。」」」
「では、まずヴァイスから、記録玉を実際に使ってみるっす。」
午前中は、鑑賞会となった。
子供達は、驚きもあるが興味の方が優って、目をキラキラさせ見続けた。
ところどころ、双子達の解説が入る。
フィリア語の質問には、ニーナが答えていた。
健康体となったニーナは、ジーンばりにフィリア語辞書を日々更新していた。
ヴァイスは、伝説級のものを見せられ続け、いっぱいいっぱいになり、最後、思考を放棄した。
昼食では、お互いの境遇を話し合った子供たちだった。
後半は、質問攻めにあう翡翠館の子供たちの姿が見られた。
もっと聞いて?と嬉しそうに答えていた。
「うちは、桜。これから1ヵ月、冒険者の兄ちゃん姉ちゃんが一緒に遊んでくれます。
本日からは、ヴァイス兄ちゃんやで。」
「いちゃらぶが落ち着いたら、ステラ・セーラ母ちゃ・・姉ちゃんたちも参加します。」
「これは、姫ちゃまがみんなのために作った魔導遊具。アスレチックワールド!」
実際に、やってみせる百合。
手を滑らせ、高い所から地面に叩きつけられそうに・・
皆が息を飲む、ヴァイスが駆け寄ろうとし・・
ぽよ〜〜んっ!
百合が落ちた場には、透明なものが。桜が説明する。
「これは、クリアスライム。普段は、珍界に住んでます。そっから連れてきて、今はこの敷地内の至る所におります。
昨日は隠れてたんやけど、トイレや風呂に多く集まります。ばっちいものを好むからです。通称潔癖君。
風呂でこの子たちに肌を磨いてもらうと、スベスベつるっつるになります。
知能が高く、汎用性の高い子たちです。
さっきのように、緩衝材となって助けてくれたり、防御壁になってくれたりします。
あとは、こんなこともしてくれます。」
ヴィオを抱いた、瑠璃が現れる。
瑠璃がヴィオの下半身の生地を捲ると、スラオムツが現れる。
「「「「「!!!」」」」」
(なんてことさせられてるんだっ!)(注 : ヴァイス心の声)
(大事なとこが透け見え!)(注 : 双子心の声、息ぴったり。)
皆が興奮して遊具で遊んでいる。
3時のおやつを渡された桜。
(初日やでしゃあないな、特別サービスしたるわ。)
「みな、口、あけーな。」
それぞれの口の中に団子を放り込んでいく。
「ほい、次いくで、ジューシー果物な。」
子どもと同じ扱いだったヴァイスだったが、本人は幸せだった。
ごはんよ〜と呼ばれるまで皆、夢中で遊び続けた。大好評の遊具だった。
因みに、ヴァイスも童心にかえり、傍目には大きい子供状態だった。
ナーナたちがスライム風呂に入りたいと言う。
翡翠が拗ねるから、たまにならよいと許可をもらった。
早速今日入ることにした3人。
はじめてのスラ風呂にはしゃぐ双子。
わーいと湯船に向かって走り、2人仲良くツルッと足を滑らせ背中から転んだ。
当然、気を利かせたスライムが2人の下に。
(風呂でのビッターン転びは、めっちゃ痛いんやで。よかったな二人。)
ジンフィーリアは、帝都の一角に孤児院をつくった。
危険回避を徹底し、さる貴族の娘が後ろ盾と噂を流した。
スラムにも、獣人を受け入れる孤児院だと伝わった。
護衛と料理人も雇った。
こっそり獣人の孤児の面倒を見ていたシスターを院長とした。勿論、給料は支払われる。
のちにザクセン国の王都にも同様の孤児院がつくられることとなる。




