81話:ヴァイス
部屋に戻ると、3人は食事を済ませていた。
「グレイとマロンは、もう寝ましょう。部屋まで案内するわね。ラーンもいるわよ。
ヴァイスは、まだここで待っててね。」
「じゃーん、ここよ。」
「うわあ、すっげえ。大きい布団。」
「掛け布団はここよ。・・もう、ラーンは寝ちゃったわね。」
(大きいっちゅうか、部屋、ほぼベッドやんか!)
「ヴァイスお待たせ。何飲む?酒?お茶?」
「・・・酒を、もらえるか。」
「これ、どうかしら?限りなく水に近く飲みやすいわよ。」
「!こんな酒があるのか・・・。果物のような、花のような香りがする。」
「米から作ったお酒よ。つまみも一緒にどうぞ。」
「オーリ姉弟、グレイとマロンは、もしかして・・路上で暮らしているの?」
「ああ、そうだ。」
「どうして、赤子のヴィオも?」
「・・オーリたちの母親は、そのヴィオを産んで亡くなったんだ。
日頃から、もしもの時は、と子供達のことを託されたやつがいたんだが逃げやがった。
そいつは、亡くなったオーリたちの父親にさんざん世話になったやつで、いつも恩を返したいと言ってやがったくせに。」
「そう・・・。ヴィオに名前がなかった理由は?」
「オーリたちの母親には名の候補があり、生まれたら顔を見て決める、それまで内緒と言っていたらしい。」
「なるほど。・・ヴァイスはあの子たちのことを気にかけているのね。」
「と言っても大したことは何も。時々食べさせることくらいしかできていない。」
「それでもあの子たちが飢えずに生きてこられたのは、あなたのおかげだと思うわ。」
「・・・俺も路上で暮らす孤児だったんだ。そして俺も助けてもらった。」
(これは、よい連鎖の話ね。)
「風呂と食事をありがとう。飯はとてもうまかった。」
「それは、よかったわ。ところで今のヴァイスの拠点は?冒険者仲間と共同生活してるとか?」
「いや、安宿に泊まっている。仲間は、いない・・・。今は、・・フリーだ。」
「そうなの。ならこの依頼受けてみない?もうギルドで見た?」
『期間:5日後から1ヶ月の間で3日、 1日5人まで(個人・パーティー混合可)
依頼内容:フィリア邸敷地内にて獣人の子供と遊ぶ・見守り/朝8時から3泊
報酬:一人に付き、金貨1枚/三食+翌朝飯・風呂・ベッド付
条件:差別しない人・秘密厳守(違反者には、男:捥げる、女:禿げる、の罰)』
「いや、まだ見てない。」
「私が急ぎすぎて、直近は決まっていないの。だから明日から、依頼を受けた人が来るまで。
報酬は安いけれども、どうかしら?」
「依頼を受ける。」
「ありがとう!ならギルマスに話を通しておくから。ギルドに行く必要はないわよ。」
「?依頼主に渡す書類をもらわないと。」
「ギルマスから送ってもらうから、問題ないわ。あ、エース兄弟の公開裁判見てなかったのね。」
「なぜわかる?・・後から話だけは聞いたけれど。」
「ふふ、内緒。ここで数日過ごして、あなたさえよければここを拠点にしてくれないかしら?
もちろん家賃は取らないわよ、必然的に子供達の世話をすることになると思うし。」
「ああ・・・。」
(断るという選択肢はないな、あの風呂・・毎日でも入りたい。)
「それにしても、目のやり場に困るな。・・今更だけれど。」と言って目線はジンフィーリアの胸元に。
「12歳の娘になに言うのよ。」(なんてね、この体はすでに大人・・・。)
「!・・その胸で!12歳!!はああ?嘘だろ・・。」
(ほんまやで。俺らは発育がええんやで〜。)
「本当よ。それに年齢は関係ないでしょう?30歳になったら女性は皆巨乳?ホルスタイン?違うでしょう?
「う、まあ、違うな。」
「では、部屋に案内するわね。」
(・・・というわけなの。だから書類を送って。依頼完了後、サインしてヴァイスに渡すから。)
(わかった。それと、エース兄弟の救助・未踏の崖下の情報に対する報酬を払いたいのだが。)
(それは、エース兄弟への見舞い金として渡してほしいわ。)
(・・そちらがそれでよいなら、そうしよう。奴らの処罰だがA〜Dは、犯罪奴隷落ちの予定だ。C・Dに関しては、無期限だ。)
(ふーん、依頼主たちのことは放置?)
(上位貴族が絡んでいる。C・Dの証言だけでは罪に問うのは難しい。悔しいが・・・。)
(機会があったら、こっちで潰しておくわ。あ、蒲焼きパーティー来てね、友人を誘ってもいいわよ。
じゃあね。)
(あ、おい!・・・。)
パーティーには絶対に行こうと思ったギルマスだった。
(他ギルドの友人を誘うか、姫さんたちを見て驚くあいつを想像すると、とても楽しみだ。)
別邸に初めて入った2人
桜「なんなん?この部屋。
京「巨大なベッド・・だけ・・っちゅうのは?
瑠璃「ふふふ、多種多様な獣人の子供たちが眠る姿を一度に見るためのものです。
ある程度の年齢になれば、ここではなく個室で寝ることになりますけれどね。
男の子は、ねえ?色々と・・。
京「・・・せやな。




